本文へ
ROLEX · SERIES

Oyster Perpetual 36

オイスター パーペチュアル36

日付もベゼルの装飾も持たず、オイスターとパーペチュアルの名だけで成り立つ36mmの原型

01 — 概要 / SUMMARY

オイスター パーペチュアル36は、ロレックスの基礎技術である防水ケース「オイスター」と自動巻機構「パーペチュアル」の名だけを冠する、最も簡潔な三針モデルである。1931年に始まる無印オイスター パーペチュアルの系譜に連なり、日付もベゼルの装飾も持たない。36mmという寸法は1960年代のRef. 1018に源を持ち、現行はCal. 3230を積むRef. 126000である。2020年の鮮烈なラッカー文字盤、2025年のつや消しパステルと、形を変えず色で時代を映してきた、すべてのロレックスの原型ともいえる一本である。

02 — STORY · 物語

Oyster Perpetual 36(オイスター パーペチュアル36)、これまでの軌跡

The story of this series
01

オイスターとパーペチュアル、二つの原点

ロレックスの腕時計の大半は、文字盤に「OYSTER PERPETUAL」と記す。1926年に登場した防水ケース「オイスター」と、1931年に実用化された自動巻機構「パーペチュアル」。この二語は、ブランドが備えた二つの基礎技術そのものである。オイスター パーペチュアルというシリーズは、その二語だけを名に持つ。日付もクロノグラフも回転ベゼルも加えない、ロレックスの最も素のかたちだといえる。

初期のパーペチュアル機構は、既存のムーブメントにローター機構を組み込む構造で、機械が厚くなった。その厚みを収めるために裏蓋が大きく膨らみ、1933年頃から1950年代半ばまでの個体は後に「バブルバック」と呼ばれる。ここで確立した「防水ケース + 自動巻 + 三針」という組み合わせが、現在のオイスター パーペチュアルまで一貫して受け継がれている。

1953年の英国エベレスト遠征隊にオイスター パーペチュアルが供給され、高所での実用に耐えたと伝わる。この経験はやがて専用モデルのエクスプローラーへと分かれていくが、無印の三針モデルはその後も「すべてのロレックスの源流」として残った。

02

36mmという寸法 — Ref. 6614 と 1018

無印のオイスター パーペチュアルは、長く34mm前後を標準としてきた。その中で、ひと回り大きい36mmケースを与えられたのが、1950年代末から登場するRef. 6614と、その後継Ref. 1018である。Ref. 1018はケース径36mm、ラグ間43mmで、同時代のエクスプローラー Ref. 1016とほぼ同型のケースを用いる。両者は外観が近く、混同されることもあったと伝わる。

機械は自動巻のCal. 1560、後にCal. 1570を載せる。Cal. 1570は毎時19,800振動 (2.75Hz) で、ハック秒(秒針停止)機能を備えた。同系のキャリバーはサブマリーナーやエクスプローラーにも使われ、当時のロレックス自動巻の中核をなした。Ref. 1018自体は大量生産されず、現存数は多くない。36mmが後年の標準寸法になることを思えば、時代を先取りした作だったといえる。

一方で1970年代以降、無印オイスター パーペチュアルの主軸は再び34mm前後に移り、36mmの系譜はしばらく目立たなくなる。

03

現代の基準形 — Ref. 116000

36mmが現行ラインの一員として明確に位置づけられるのは、2008年のバーゼルで発表されたRef. 116000である(2007年からとする資料もある)。ケースには耐食性の高い904L鋼(現在ロレックスがオイスタースチールと呼ぶ鋼種)を用い、自動巻Cal. 3130を搭載する。Cal. 3130は毎時28,800振動 (4Hz)、パワーリザーブ約48時間で、衝撃吸収機構Paraflexを備え、スイス公式クロノメーター検定 (COSC) に適合した。

Ref. 116000は日付を持たない。風防にサイクロップスレンズもなく、滑らかなドーム型ベゼルと相まって、極めて簡潔な顔をつくる。文字盤には複数の色とインデックス構成が用意され、中でも3・6・9にアラビア数字を配する「エクスプローラー文字盤」は、Ref. 1016以来の意匠を想起させるとして人気を集めた。2018年にはインデックスを刷新し、3・6・9に縦二本のバーを置く構成が加わっている。

04

色という転回 — Ref. 126000 と2020年

2020年、36mmはRef. 126000へ世代交代する。機械は自動巻Cal. 3230に更新され、最適化された脱進機Chronergyと常磁性のParachromひげぜんまいを採用、パワーリザーブは約70時間に延びた。精度はケーシング後で日差-2〜+2秒、ロレックス独自のSuperlative Chronometer基準に適合する。

ただし、この世代で最も注目されたのは機械ではなく文字盤である。ターコイズブルー、キャンディピンク、コーラルレッド、グリーン、イエローといった鮮烈なラッカー文字盤が一斉に投入された。日付も装飾も持たない最も保守的なラインに、強い色彩が持ち込まれたことになる。2023年には、複数の色の文字を散らしたCelebration文字盤も加わった。形を変えず、色だけで表情を変えるという選択である。

05

2025年、マットへの回帰

2025年のWatches and Wondersで、文字盤は再び見直された。ラベンダー、サンドベージュ、ピスタチオという、つや消しラッカーのパステル3色が現行ラインに加わる。光沢を抑えたマット仕上げは現行コレクションでは初の試みで、2020年以降の高彩度・高光沢の路線とは対照的な、落ち着いた表情を持つ。同時にCelebration文字盤と一部の鮮烈色は整理された。

36mmのRef. 126000自体はこの更新でも据え置かれ、変わったのは文字盤である。日付もベゼルの装飾も持たないという基本骨格は、初期の三針から現在まで動いていない。オイスター パーペチュアル36は、ロレックスの最も簡潔な原型でありながら、文字盤という一点で時代の気分を映し続ける器でもある。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

オイスター パーペチュアル36の設計は、「足し算をしない」という一点に集約される。日付窓もサイクロップスレンズもなく、ベゼルは溝のない滑らかなドーム型。時・分・秒の三針と、植字されたバーインデックスだけが文字盤を構成する。情報を削ることで、視認性と均衡を最優先する思想である。夜光にはChromalightを用い、太い針と植字インデックスにより、暗所でも瞬時に時刻を読み取れるよう配慮されている。

ケースはオイスター。ねじ込み式リューズ(Twinlock)とねじ込み式裏蓋により100m防水を確保し、素材は耐食性の高い904L鋼(オイスタースチール)を用いる。36mmという径は、エクスプローラーやデイトジャストとも共有される、ロレックスの古典的な標準寸法である。ラグからオイスターブレスレットへ続く連続した面の流れは、装飾ではなく構造の均衡として設計されている。

このシリーズの輪郭は、同じ36mmの兄弟と並べると明確になる。デイトジャストは日付とフルーテッドベゼル、ジュビリーブレスで装いを加える。エクスプローラーは3・6・9とメルセデス針で探検の文脈をまとう。オイスター パーペチュアルは、そこから日付も装飾も文脈も剥ぎ取った基本文法にあたる。他のモデルは、この素の三針に何かを足して成り立っているといえる。

変えないものが骨格なら、変えてよいものは文字盤の色である。2020年以降の鮮烈なラッカー、2025年のつや消しパステル。いずれもケース・機械・ベゼルには手を入れず、色という一点だけを動かしている。形式を厳格に保ったまま、表情の自由を文字盤に集約する。つまり文字盤は表現の場であり、ケースや機械は世代を超えて守るべき型として扱われている。70年近くにわたり「オイスター パーペチュアルの顔」と一目で認識され続けるのは、この役割分担と自制の徹底ゆえである。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1959-1974年頃
Cal. 1560 / 1570
毎時19,800振動。1570はハック秒を採用。
2008-2020
Cal. 3130
毎時28,800振動・約48時間。Paraflex搭載。
2020-現在
Cal. 3230
Chronergy脱進機・約70時間に進化。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1950年代末-1970年代

希少な36mm OP

6614 1018
Explorer 1016と同型ケースの36mm。標準寸法を先取りした希少作。
2008-2020

現代の36mm基準形

116000
904L鋼とCal.3130で、日付なし三針の現代的基準を確立した世代。
2020-現在

Cal.3230世代

126000
70時間巻上のCal.3230へ刷新。鮮烈なラッカー文字盤を投入した。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Watches - Rolex 公式 · Rolex · 2026.08.15 閲覧 Rolex · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Rolex Movements Explained 専門メディア · Bob's Watches · 2026.08.15 閲覧 Bob's Watches · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive