設計思想
1. 5色の鮮色と、その中のターコイズ
工場の一時閉鎖を経た2020年9月、ロレックスはオイスター パーペチュアル36をRef. 126000へ切り替えた。技術面の軸は同年発表のCal.3230で、デイト無しのサブマリーナー Ref. 124060と同時にこの36mmにも搭載された。同じ発表で、ロレックスは最も控えめなこのラインに5色の鮮やかなラッカー文字盤を用意した。本機126000-0006は、そのうちターコイズブルーを担う仕様である。
発表直後から、複数の専門メディアが5色を1970年代の「ステラ」文字盤と結びつけて論じた。デイデイトなどに用いられた高光沢の鮮色ラッカー文字盤で、ロレックス自身も当時のカタログでこの呼称を使ったと伝わる。ターコイズについては、ロレックスがプラチナ製モデルに充ててきたアイスブルーに一見近い、とする評も出た。貴金属モデルを思わせる青が、最も簡素なスチールの三針に置かれたことになる。
2. 116000から受け継いだ器
126000は、前任Ref. 116000の36mmオイスターケース、ドーム形ベゼル、100m防水、日付を持たない文字盤構成をそのまま引き継いだ。外形の印象はほとんど変わっていない。変わったのは、Cal.3130からCal.3230へ換装された機械と、文字盤が担う役割である。
器の型は据え置き、文字盤に強い色を載せて性格を変える。この世代交代の方針を、本機はラッカーの鮮色という明快な形で示している。
3. 残り続けた色
2020年の鮮色がすべて定着したわけではない。2022年にはイエローとコーラルレッドが全サイズで外れ、41mmのターコイズブルーも姿を消した。それでもターコイズは36mmと31mmに残り、2025年に文字盤構成が大きく改められた際も、36mmの本機は継続対象となった。鮮色の顔ぶれが数年で入れ替わるなか、ターコイズブルーは126000世代を通じて36mmに置かれ続けている。
市場では、この色を宝飾ブランドのティファニーにちなむ通称で呼ぶことも多い。ただしロレックスの公式名は一貫して「ターコイズブルー」である。
4. 地色としてのターコイズ
本機の色は、同世代の派生にも使われた。2023年のCelebration文字盤(36mmは126000-0009)は、ターコイズブルーのラッカーを地色とする。その上に2020年の5色を泡模様として散らした意匠である。単独の一色だったターコイズが、5色をまとめる背景の役を与えられたことになる。
2025年には、18kイエローゴールドのコスモグラフ デイトナ 126518LNにもターコイズブルーのラッカー文字盤が採用された。入門機の36mmで示された色名が、クロノグラフの上位機種にまで及んだ例である。2026年には多色のジュビリー・モチーフ文字盤が36mmに加わったが、本機はその傍らで単色のターコイズとして並び続けている。
意匠分析
文字盤:6層のラッカー
本機の核は、ターコイズブルーのラッカー文字盤にある。ロレックスによれば、真鍮の地板に埃を避けた管理環境でラッカーを6層重ね、最後にニスを掛けて研磨し、発色の深さを引き出す。文字はパッドプリントで刷られ、アワーマーカーと12時の王冠マークは手作業で固定される。光の筋で表情を変えるサンレイ仕上げとは異なり、均一な色面で見せる仕立てである。
インデックスと針は18kホワイトゴールドで、秒針を除き、暗所で青く光るクロマライト夜光を備える。2020年の新作では、41mmのシルバー文字盤がイエローゴールドの針とインデックスを採った。一方で36mmのラッカー5色は、すべてホワイトゴールドで揃えられている。冷たい金属色で鮮やかな地色を縁取り、色面を主役に保つ判断と読める。
前任Ref. 116000との差は、文字盤の外周に表れる。116000は分目盛りに5分刻みの数字を刷っていたが、126000では5分ごとに四角いマーカーを置く簡潔な目盛りに改められた。夜光も前任の緑色発光から青色発光へ切り替わっている。数字が消えたぶん、地色を遮る要素は少ない。
ケースとブレス
ケースは36mmのオイスタースチール製で、ミドルケースは一塊の鋼材から削り出すモノブロック構造をとる。オイスタースチールは、ロレックスが904L系統に属するとする耐食性の高い鋼種である。ミドルケースはサテン仕上げを基調に側面をポリッシュで仕上げ、ベゼルは溝のない鏡面のドーム形とした。ねじ込み式のツインロック竜頭と、細かなフルーティングを刻んだねじ込み式裏蓋で100m防水を確保する。
ブレスは3列リンクのオイスターで、折り畳み式のオイスタークラスプに約5mm延長できるイージーリンクを備える。前任116000では標準装備でなかったとされる機構で、気温による手首の太さの変化に工具なしで対応できる。
ムーブメント
搭載するCal.3230は、2020年に発表されたデイト無しの自社製自動巻である。ニッケル・リン合金製のクロナジー・エスケープメントは、効率と耐磁性を両立させる。常磁性合金のブルー パラクロム・ヘアスプリングは、温度変化と衝撃に強い。振動数は毎時28,800振動 (4Hz)で、パワーリザーブは約70時間と、前任Cal.3130の約48時間から大きく延びた。
系譜と歴史
2020年9月1日、ロレックスは同年の新作をオンラインで一斉に発表した。例年の春の見本市が開かれなかったこの年、オイスター パーペチュアル36はRef. 126000へ世代交代した。前任Ref. 116000に代わる新世代には、5色のラッカー文字盤が加わった。本機126000-0006はそのターコイズブルー仕様である。同じ色は41mmのRef. 124300と31mmのRef. 277200にも用意された。
2022年3月には、41mmのターコイズブルーが公式ラインアップから外れた。同時期にイエローとコーラルレッドは全サイズで姿を消している。いずれも公式発表ではなく、公式サイトの掲載終了によって確認された変化である。ターコイズブルーは、36mmの本機と31mmには残った。
2023年3月のWatches and Wondersでは、Celebration文字盤が発表された。ターコイズブルーを下地とする多色の泡模様で、36mmでは126000-0009として加わっている。
2025年4月のWatches and Wondersで、オイスター パーペチュアルの文字盤構成は大きく改められた。つや消しのパステル3色が加わり、Celebration文字盤は生産を終えた。41mmは新しいRef. 134300へ移行し、ターコイズブルーはそこに引き継がれていない。一方で36mmの本機は継続となった。
2026年4月のWatches and Wondersは、オイスターケース誕生100周年の節目にあたった。36mmには、10色のラッカーでROLEXの文字を敷き詰めたジュビリー・モチーフ文字盤(126000-0016)が追加された。本機はその後も現行ラインアップに残る。同年、ロレックスはSuperlative Chronometer認定に耐磁性・信頼性・持続可能性の3基準を加えた。ただし本機の公式仕様に記された精度は、日差-2〜+2秒のままである。
発表から現在まで、ケース、ムーブメント、文字盤の仕様に公表された変更は確認できない。2026年9月時点で、本機はロレックス公式サイトに掲載される現行モデルである。
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 公式 Watches - Rolex
- 02 専門メディア Rolex Movements Explained