設計思想
1. 41mmからの揺り戻し
2008年に登場したデイデイト IIは、41mmへの大型化で大きな時計を求める声に応えた。一方で、ケースの大きさに対して曜日と日付の窓が小さく見えるという指摘も専門メディアから出ていた。
2015年のデイデイト 40は、この比率の問題を1mmの縮小と文字盤の再設計で整え直したモデルである。ロレックスは新世代キャリバーCal.3255の初搭載機にもこのモデルを選んだ。外装とムーブメントを同時に一新した点で、単なるサイズ変更を超えた世代交代だった。
2. 218206から受け継いだもの、変えたもの
228206が前任218206から受け継いだのは、プラチナ、アイスブルー、スムースベゼルという三つの記号である。いずれも、プラチナのデイデイトを金無垢のモデルと見分ける目印として長く機能してきた。
変わったのは比率とムーブメント、そして文字盤の語彙である。2015年のデイデイト 40は、放射状の筋目を入れたサンレイ仕上げにレーザーで地模様を刻む新しい文字盤群とともに登場した。ダイアゴナル、ストライプ、クアドラントと名づけられた模様である。レーザー彫刻はロレックスにとって新しい技法とされる。かつてのリネンやタペストリーといった装飾文字盤の系譜を、現代の手法で継ぐ試みだった。
228206-0001は、そのうちクアドラントの地模様と分割型ローマ数字をプラチナに与えた仕様である。ステンシル文字を思わせる数字の造形も含め、ロレックスが意匠上の冒険に踏み込んだ例として当時の論評でも取り上げられた。
3. スムースベゼル最終世代として
2022年、後継の228236がフルーテッドベゼルで登場し、プラチナのデイデイトからスムースベゼルは姿を消した。228206は結果として、プラチナのデイデイトがスムースベゼルをまとった最後の世代となった。
後継への引き継ぎも一様ではない。現行228236にもアイスブルーとローマ数字の組み合わせ(228236-0012)がある。ただしこちらはサンレイ仕上げの地に、ホワイトゴールドの数字を置く構成である。クアドラントの地模様も、濃いブルーの数字も受け継がれていない。スムースベゼル、4分割の地模様、青い数字という三要素の組み合わせは、本機の世代で途切れたことになる。
同じ地模様を共有した兄弟は、ホワイトゴールドケースの228239のシルバー・クアドラント仕様である。同じプラチナケースでは、斜めの地模様にインデックスを組み合わせた228206-0004が本機と対をなす。二つを並べると、2015年のデイデイト 40が試みた文字盤表現の幅が見えてくる。
意匠分析
ケースは直径40mmのオイスターケースで、素材はロレックスが自社で合金を製造する950プラチナである。前任のデイデイト II 218206は41mmで、太いラグを持つ量感の強い造形だった。228206では径が1mm縮んだだけでなく、ラグとミドルケースが細く整えられ、輪郭が引き締まった。
ベゼルはなだらかな丸みを持つ、鏡面仕上げのスムースベゼルである。プラチナのデイデイトはこの形を長く受け継いできたが、そこには加工上の事情もあった。228236の発表時、ロレックスはそれまでプラチナではスムース以外のベゼルでデイデイトを作れなかったと説明している。軟らかく粘るプラチナは、切削や仕上げが難しい素材である。
文字盤はプラチナモデル専用色のアイスブルー。サンレイ仕上げの上にレーザーで細い線を刻み、4つの区画ごとに線の向きを変えている。見る角度が変わると区画ごとの明暗が入れ替わり、単色の文字盤にはない動きが生まれる。
時刻表示は面取りを施した分割型のローマ数字である。一つの数字を複数のブロックに分けて組み、VI、VIII、Xでは山形に磨いたブロックと平らなブロックが隣り合う。数字と針は濃いブルーで統一され、淡い地色との色差で読ませる。12時位置には曜日をフルスペルで示す円弧状の窓、3時位置には拡大レンズ(サイクロップレンズ)付きの日付窓を置く。
ブレスレットは1956年のデイデイト誕生時に生まれたプレジデントブレスのプラチナ版である。半円形の3連リンクの中央をポリッシュ、外側をサテンに仕上げる。2015年の刷新でリンク内部にセラミック製インサートが入った。リンクの隙間が摩耗で広がるのを抑え、プラチナで生じやすかった動きの渋さも解消するとロレックスは説明する。留め具は王冠形のカバーを起こして開く隠しクラスプ、クラウンクラスプである。ブレスとケースの取り付け部も新設計の隠し構造とされ、両者が途切れなく連なって見える。
ムーブメントは自社製のCal.3255。エネルギー効率を高めた特許脱進機クロナジー・エスケープメントと、壁を薄くしてゼンマイの収容量を増やした香箱を備える。パワーリザーブは前任218206のCal.3156から大きく延び、約70時間となった。ケーシング後に日差-2/+2秒で検査される高精度クロノメーター認定を受ける。
系譜と歴史
2015年3月、ロレックスはバーゼルワールド2015でデイデイト 40を発表した。41mmのデイデイト IIを置き換える新世代で、新キャリバーCal.3255もこのモデルで初めて公開された。プラチナケースのリファレンスは228206である。発表時の広報でプラチナ版の顔となったのは、アイスブルーのダイアゴナル・モチーフ仕様(228206-0004)だった。
228206-0001は、同じケースにクアドラント・モチーフの文字盤と分割型ローマ数字を合わせた仕様である。初出は2015年とされ、同年11月のQuill & Padの記事もこの仕様を当時の現行品として取り上げた。記事によれば当時のデイデイト 40は18種で、分割型ローマ数字を持つのはそのうち7種だった。4分割の地模様を持つのは、本機とホワイトゴールドケースの228239(シルバー・クアドラント)の2種に限られていたという。
228206には本機のほか、ダイヤモンドのインデックスやパヴェ、メテオライトなど多くの文字盤仕様が並んだ。
2022年春のWatches & Wonders Geneva 2022で、ロレックスは後継の228236を発表した。プラチナにフルーテッドベゼルを組み合わせた初のデイデイト 40である。36mmの128236も同時に登場している。ロレックスは、プラチナでフルーテッドベゼルを作るための新しい製法を開発したと説明した。専門メディアは、以後プラチナのデイデイトはフルーテッドかジェムセットのベゼルに限られると報じている。
これにより、228206-0001を含む228206系は後継に席を譲り、公式ラインナップから外れた。最終生産の時期は公表されていないが、生産期間は2015年から2022年までとされる。
出典
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