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ROLEX · SERIES

Cellini

チェリーニ

オイスターを纏わぬロレックス唯一の系譜。貴金属とドレスの美学を55年綴った装飾の時計史。

01 — 概要 / SUMMARY

チェリーニは、ロレックスが1968年に確立したドレスウォッチの系譜である。防水のオイスターケースを用いず、素材を金とプラチナに限った点で、同社の道具としての時計とは一線を画す。名は16世紀フィレンツェの金細工師ベンヴェヌート・チェリーニに由来する。ジェラルド・ジェンタが手がけたキング・ミダス、長方形のプリンス、2014年に円形へ統一されたタイム/デイト/デュアルタイム、2017年のムーンフェイズへと展開した。2023年に生産を終え、パーペチュアル1908がその役割を継いでいる。

02 — STORY · 物語

Cellini(チェリーニ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

オイスターの外側で

ロレックスの名を広めたのは、防水ケース「オイスター」と、それを支える実用思想であった。サブマリーナー、GMTマスター、デイトナ。いずれも特定の用途のために設計された道具としての時計である。チェリーニは、その対極に置かれた系譜である。

チェリーニは防水ケースを用いず、素材を貴金属に限り、装飾性を主題とした。名は16世紀フィレンツェの金細工師ベンヴェヌート・チェリーニに由来する。彫刻家でもあった人物の名を冠することで、ロレックスは時計を道具ではなく装飾の対象として位置づけた。

ドレスウォッチの系譜としての正式な発足は、1968年とされる。ただし名称そのものは1960年代を通じて用いられており、起点には幅がある。

02

キング・ミダスという異物

チェリーニの歴史で最も特異な存在が、キング・ミダスである。原型のRef. 9630は1960年代前半に登場した。登場年は1962年とも1964年ともされる。設計したのはジェラルド・ジェンタ。後にロイヤルオークやノーチラスを手がける人物が、若き日に描いた作品である。

非対称の五角形ケースは、ギリシャのパルテノン神殿に着想を得たと伝わる。リューズは左側に位置し、ケースとブレスレットは一体の金塊のように連続する。すべてに触れたものを黄金に変えたミダス王の神話が、その名の由来である。

当初は独立した限定シリーズとして売られ、生産数は800本に満たなかったとされる。販売が伸び悩むなか、1970年代初頭にチェリーニ系列へ統合された。Ref. 3580、Ref. 4315と展開し、文字盤の刻印は「Midas」から「Cellini」へと移った。エルヴィス・プレスリーらが所有したとも伝わる。

03

多様化する装飾の時代

1980年代から2000年代にかけて、チェリーニは形を一つに定めなかった。八角形ケースのオクタゴン、クッション型のダナオス、極薄のチェステロ。女性向けのチェリッシマも加わった。

2001年には、プラチナ製のチェリニウムが登場したとされる。38mmケースを採用し、素材の格を一段引き上げた。これらに共通するのは、オイスターケースを用いないことと、貴金属に徹することのみである。形は自由で、装飾が主役であった。

04

プリンスの復活

2005年、チェリーニは過去の名作を呼び戻した。長方形のプリンスである。原型は1928年の角型時計に遡る。秒を独立した小秒で示す構成が医師の脈拍計測に適したことから、「ドクターズウォッチ」の通称が生まれたと伝わる。

復活したプリンスには、手巻のCal. 7040が搭載された。72時間のパワーリザーブを備え、COSCの公認を受けた。サファイアクリスタルの透明な裏蓋を初めて採用したロレックスとされ、自社開発の耐衝撃装置パラフレックスも、この機械で初めて投入されたと伝わる。Ref. 5440から5443まで展開したが、2015年に生産を終えた。

05

円形への統一

2014年、チェリーニは大きく姿を変えた。多様だった形を、円形の39mmケースへと統一したのである。発表されたのはチェリーニ・タイム、チェリーニ・デイト、チェリーニ・デュアルタイムの3型。いずれも18Kホワイトゴールドかエバーローズゴールドで作られた。

文字盤にはギヨシェ彫りを施し、ローマ数字または細いインデックスを配した。二段構成のベゼルが輪郭を整える。タイムはRef. 50509と50505、デイトはRef. 50519と50515、デュアルタイムはRef. 50529と50525。デイトは日付を3時位置の小針で、デュアルタイムは6時位置に第二時間帯を示した。機械はいずれも自動巻で、Cal. 3135系を基礎とする。

06

ムーンフェイズと終幕

2017年、チェリーニ・ムーンフェイズ(Ref. 50535)が加わった。ロレックスがムーンフェイズを採用するのは1950年代以来、60年以上を経てのことである。エバーローズゴールドの39mmケースに、白いラッカー文字盤。6時位置の青いエナメルディスクには、隕石で表現した満月が浮かぶ。

このムーンフェイズ機構は、122年間調整が不要とされる精度を公称した。機械は自動巻のCal. 3195である。

だが、これがチェリーニ最後の新作となった。2022年、ロレックスはタイム、デイト、デュアルタイムを生産終了とし、ムーンフェイズのみを残した。そして2023年、そのムーンフェイズも姿を消す。同年に発表されたパーペチュアル1908が、ドレスウォッチの系譜を引き継いだ。1968年からの55年が、ここで一区切りを迎えた。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

チェリーニの設計言語は、他のロレックスとは逆の論理で成り立っている。サブマリーナーやデイトナが、変えないことで一貫性を示してきたのに対し、チェリーニは形を変え続けること自体が性格であった。

55年の歴史で、ケースは五角形、八角形、長方形、円形と変遷した。一見すると統一感を欠く。しかし全期間を貫く原則が二つある。一つはオイスターケースを用いないこと。もう一つは、素材を金かプラチナに限ったことである。

この二点が、チェリーニの輪郭を決める。防水と堅牢を旨とする道具の対極に、装飾と素材の価値を置く。名の由来である金細工師ベンヴェヌート・チェリーニは、その方向性を象徴する。時計を実用品ではなく、金工の作品として扱う構えである。

意匠の主役は装飾そのものにある。ギヨシェ彫りの文字盤、手仕事による仕上げ、刻印を抑えた構成。2014年以降の現代型では、その自由さがいったん整理された。円形ケースに二段ベゼルを重ね、裏蓋にはフルーティング(溝彫り)を施す。この溝は往時のドレスウォッチを思わせる意匠であり、過去との連続性を示す手がかりとなった。

同時代のドレスウォッチと比べると、輪郭はより明確になる。パテック・フィリップのカラトラバが薄さと簡潔さを徹底するのに対し、チェリーニは装飾の密度で語る。針はランセット型やアルファ型を用い、視認性よりも均整を優先した。これはダイバーズウォッチの太い針とは対照的な選択である。

チェリーニが守ったのは、特定の形ではなかった。貴金属で作る、オイスターを用いない、装飾を主題とする。この三つの原則だけが、形を超えて受け継がれた。だからこそ、五角形のキング・ミダスと円形のムーンフェイズが、同じ系譜として並びうるのである。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1960s-1970s
Cal. 650 系
キング・ミダスに用いた手巻の薄型機。
1968-2000s
手巻ドレス系 各種
薄型手巻を中心に多様。世代を一本化せず。
2005-2015
Cal. 7040
プリンスの手巻。初のパラフレックス、72時間。
2014-2022
Cal. 3132 / 3165 / 3180
3135系を基礎とする自動巻の3型。
2017-2023
Cal. 3195
ムーンフェイズ機構。122年精度を公称。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1960s-1970s

キング・ミダス

9630 3580
ジェンタ設計の非対称金ケース。後にチェリーニへ統合。
1968-2000s

クラシック期

各種(Danaos Cellinium 等)
幾何形・薄型の貴金属ドレス。2001年にチェリニウム。
2005-2015

プリンス復活

5440-5443
長方形・手巻Cal.7040、初の透明裏蓋を採用。
2014-2022

円形へ統一

50505-50529
39mm自動巻のタイム/デイト/デュアルタイム。
2017-2023

ムーンフェイズ

50535
隕石の満月と青エナメルディスク。系譜の最終作。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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  2. 02 専門メディア Review: Rolex Cellini Moonphase 専門メディア · Deployant · 2026.10.11 閲覧 Deployant · 2026.10.11
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  4. 04 専門メディア Dispatch: Rolex Cellini Moonphase 専門メディア · Professional Watches · 2026.10.11 閲覧 Professional Watches · 2026.10.11
  5. 05 ブログ Gerald Genta Rolex King Midas Guide ブログ · Bob's Watches · 2026.10.11 閲覧 Bob's Watches · 2026.10.11
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

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