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PANERAI · SERIES

Radiomir 1940

ラジオミール 1940

一体削り出しのラグと円筒形リューズ。ラジオミールとルミノールの間に存在した、過渡期のケースを甦らせた現代コレクション

47 mm
01 — 概要 / SUMMARY

「ラジオミール 1940」は、2012年にOfficine Paneraiが発表した、ラジオミール家系の派生コレクションである。1940年代のイタリア海軍向けラジオミールに採用された、ケースと一体に削り出されるラグを意匠の核に据え、ワイヤーラグの初代ラジオミールと、リューズプロテクターを持つルミノールの中間に位置する系譜として整理された。47mm・45mm・42mmを中心に、複雑機構付きの48mmまでの複数サイズで、3 Days、3 Days Automatic、Chrono Monopulsante、GMT等の派生を展開し、2020年前後にラジオミール系列へ統合されている。

02 — STORY · 物語

Radiomir 1940(ラジオミール 1940)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1940年、ケースを「一体削り出し」にする

1930年代後半、Officine Paneraiはイタリア王立海軍(Regia Marina)の特殊潜入隊員に向けて、ラジオミールの最初期プロトタイプを納入していた。直径47mmのクッション型ケース、Rolex製の手巻きムーブメント、ラジウム塗料の文字盤。これらは1936年のRef. 3646として知られる初期構成であり、ストラップ取付部(ラグ)は、線材を曲げてケース側面に溶接した「ワイヤーラグ」が用いられていた。

しかし作戦行動が苛烈さを増すにつれ、この溶接ラグは脆弱性が指摘されるようになる。1940年前後、フィレンツェのパネライ工房は新たなケース構造を完成させる。ラグをケース本体と同じ一つの鋼塊から削り出し、両者を分離できない一体構造として作るというものであった。クッション形状はやや穏やかになり、リューズは円錐型から円筒型へ、ケース厚は約15mmから17mm近くへと増した。これが今日「1940ケース」と呼ばれる原型である。

02

ルミノールへの分岐と、忘れられた中間形

1940年代後半、パネライは防水性をさらに高めるため、リューズに半月形のプロテクター・ブリッジを組み合わせた新ケースの開発に入る。1949年に蛍光塗料「ルミノール」を商標登録し、1950年代半ばにはこのリューズガード機構もイタリアで特許化される。これらが後にコレクション名「ルミノール」となるケース言語の出発点であった。

その陰で、リューズプロテクターを持たない「1940ケース」は、ルミノールへの過渡形として歴史の中に埋もれていく。1993年の民生向けブランド再始動以降も、パネライが復刻したのは主にワイヤーラグの「ラジオミール」と、リューズガード付きの「ルミノール」の二つの顔であり、その中間にあった一体ラグのケースは長らく現行コレクションに姿を現さなかった。

03

2012年、復活した「1940」

SIHH 2012で発表されたPAM00399(ステンレス)とPAM00398(レッドゴールド)は、この空白を埋める存在として登場した。それぞれ100本限定。Minerva 16-17をベースとした手巻きのCal. OP XXVIIをマウントし、ドーム型プレキシガラス、円筒形リューズ、スクリューバックを備えた47mmケースを擁する。Officine Paneraiは公式発表で、これを「1940年代のラジオミールの一部に見られたケース構造に着想を得た特別なケース」と位置づけた。ここに現代の「ラジオミール 1940」コレクションが始まる。

04

拡張期 — サイズと複雑機構

翌2013年のSIHHで、量産ラインの骨格が整う。47mmのPAM00514/515には自社製の手巻きCal. P.3000(3日間パワーリザーブ)、42mmのPAM00512/513には薄型の自社製手巻きCal. P.999(60時間パワーリザーブ)が搭載された。1940ケースが初めて47mm以外のサイズで提示された点は、この系譜にとって重要な転機である。

2014年にはMinerva 13-22をベースとした手巻きクロノグラフOP XXVを搭載するChrono Monopulsante(PAM00518/519/520、それぞれプラチナ・レッドゴールド・ホワイトゴールド)が発表され、同年にはパネライ初のマイクロローター自動巻きCal. P.4000を搭載するPAM00572が続いた。マイクロローター構造によって自動巻きながらムーブメント厚を抑え、45mmケースに収まる薄型の設計を可能にしている。2016年にはGMT機能を組み込んだCal. P.4001搭載のPAM00627も加わった。

05

静かな統合 — ラジオミールへの帰結

2010年代後半以降、パネライは現行コレクションの整理に踏み切る。ラジオミール 1940は徐々に新作の発表を減らし、2020年前後には「Radiomir 1940」という独立コレクションとしての名称が公式サイトから外れた。後継整理によって、現行のラジオミール各モデル(2023年発表の40mmケースRadiomir Quaranta等を含む)は、初代を踏襲するワイヤーラグの系譜に再集約され、一体ラグの「1940ケース」は現行のラジオミールラインからは一旦姿を消すことになる。

「ラジオミール 1940」は、結果として2012年から2020年前後までの約10年間という比較的短いコレクション史を持つ。だがその短さは、この系譜が提示した問題の重要性を弱めるものではない。「ラジオミールとルミノールの間に何があったのか」を、過去の意匠の記述ではなく現行の腕時計として可視化したという意味で、パネライ自身の系譜整理にとって不可欠なピースであった。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

ラジオミール 1940の設計言語は、一つの問題提起から組み立てられている。すなわち「ラジオミールでもルミノールでもないパネライは、どのような顔を持ち得るか」という問いに対する答えである。

意匠の核となるのは、ケース本体と一体に削り出されるラグ構造である。初代ラジオミールが採用していた、線材を曲げて溶接するワイヤーラグは、ヴィンテージの趣を伝える一方で、過酷な使用下では信頼性に課題があった。一方、ルミノールのラグは同じく一体構造だが、特徴的なリューズプロテクター・ブリッジによって視覚の重心がリューズ側に引き寄せられる。1940ケースはこの両者の中間に位置し、ラグの堅牢さを得ながら、リューズ周辺をプレーンに保つ。視覚的アンカーはあくまでクッション形状そのものと、文字盤の大きなアラビア数字と、12時下の控えめなロゴに置かれる。

機能設計の面でも、過剰な装飾を加えない判断が貫かれている。リューズは円筒形へと改められ、初代ラジオミールに見られた大きな円錐型(オニオン型)リューズの存在感を抑制する。クッション形状はやや穏やかになり、ラグと一体になることで側面のラインが連続する。ベゼルはドーム状のカンバードベゼルとして、ケース正面に視覚的な厚みを与えるが、文字や目盛は一切持たない。100m防水という深度は、現代のダイバーズウォッチとして突出したものではないが、これはこのコレクションが「現代のダイバーズ」ではなく「1940年代の意匠と実用」の復元を狙っているからである。

文字盤の言語は他のパネライ系列と共通する。サンドイッチ構造の二層文字盤、12時・3時・6時・9時のアラビア数字、それ以外をバーインデックスで埋める構成、視認性を最優先する大きな夜光塗料の面積。9時位置のスモールセコンドは、初代ラジオミールおよび搭載ムーブメントの設計から自然に導かれる位置であり、複雑機構付きの派生でも基本的に維持されている。

特筆すべきは、何を「加えなかったか」である。リューズプロテクターを付けず、回転ベゼルを付けず、デイト窓を最小限に抑えるという複数の自制が、ラジオミール 1940の顔を成立させている。同時代のダイバーズウォッチが機能の積み上げで差別化を競うなか、このコレクションは「1940年に存在し得た理想形」をそのまま現代の時計として提示するという、引き算の設計を選んだ。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2012-2013
Cal. OP XXVII (Minerva 16-17)
Minerva製ポケット用手巻、復活期の限定編で採用。
2013-2020
Cal. P.999 / P.3000
自社製の手巻、42mmと47mm各サイズに最適化。
2014-2020
Cal. P.4000 / P.4001
パネライ初のマイクロローター自動巻、GMTへも展開。
2014-2020
Cal. P.2002 / OP XXV
8日リザーブ手巻およびMinerva系クロノグラフ。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1940年代

一体ラグの原型

ヴィンテージ1940ケース
イタリア海軍向け、ケースから削り出した一体ラグの初期形。
2012

現代復活

PAM00398 PAM00399
47mmで1940ケースを甦らせた特別限定編、各100本。
2013-2014

量産化と42mm化

PAM00512 PAM00514
Cal. P.999 / P.3000で42mmと47mmのレギュラー化。
2014-2016

複雑機構と自動巻き

PAM00518 PAM00572 PAM00627
クロノ・GMT・マイクロローター自動巻きの本格導入。
2020年頃-

ラジオミールへの統合

独立名称が終了、現行ラジオミールはワイヤーラグへ再集約。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive