本文へ
ORIS · SERIES

Aquis

アクイス

2011年に確立したオリスの現代型ダイバー。自社キャリバー400と海洋保護を背負う実用機の系譜

01 — 概要 / SUMMARY

アクイスは、2011年にオリスが確立した現代型のダイバーズウォッチである。ヴィンテージ復刻ではなく、機能と視認性を主軸に据えた実用機として設計された。一方向回転ベゼル、ねじ込み式リューズ、300m防水を基本に、現行はAquis Date(43.5/41.5/36.5mm)を中心とする。そこから自社キャリバーを積むAquis Date Calibre 400、機械式深度計を備えるAquis Depth Gaugeへと枝分かれする。海洋保護プログラムの担い手という顔も併せ持つ。

02 — STORY · 物語

Aquis(アクイス)、これまでの軌跡

The story of this series
01

機械式ダイバーの系譜から

オリスが最初の本格的なダイバーズウォッチを世に出したのは1965年とされる。回転ベゼルと高い視認性を備えた潜水時計は、当時の潜水需要に応える道具であった。1982年、同社は機械式時計への専念を決断する。多くのメーカーがクオーツへ移行した時代に、機械式に軸足を残した判断は、後のアクイスの性格を方向づけた。

現代アクイスの直接の祖は、1998年のフルスチールである。回転ベゼルこそ持たないが、ケースとブレスレットを一体に見せる骨格、堅牢さを優先した造形は、そのままアクイスへ受け継がれた。海と機械式という二つの軸が、ここで交差する。

02

2011年、現代型ダイバーの確立

アクイスがコレクションとして確立したのは2011年である。一方向回転ベゼル、ねじ込み式リューズ、リューズガード、視認性を高めたロリポップ型の秒針、そして300m防水。広い潜水コミュニティへ向けた、過不足のない実用機としてまとめられた。

同社にはのちにヴィンテージ志向のダイバーズ65が加わるが、アクイスはそれと対照的に、復刻ではない同時代の道具を志向した。装飾を抑え、機能で語る。この立ち位置が、以後のアクイスの全世代を貫くことになる。

03

「穴のある時計」— 深度計という発想

2013年、オリスはアクイス デプスゲージを発表する。通常の潜水時計が避ける「水の侵入」をあえて利用した、特異な一本である。

機構はボイル・マリオットの法則に基づく。通常より50%厚いサファイアクリスタルの側面に溝を刻み、12時位置の小さな穴から水を導く。潜降に伴う水圧で溝内の空気が圧縮され、水と空気の境界が文字盤外周の黄色い目盛りを指す。機械式のまま深度を読む仕組みであり、特許も取得した。500m防水のこの時計は「穴のある時計」と呼ばれた。2021年には溝の加工精度を高めた第2世代へ更新されている。

04

洗練という判断

2017年、アクイスは大きな意匠刷新を受ける。ケースとブレスレットを整理し、ベゼルにセラミックインレイ、裏蓋にサファイアを採用した。潜水道具でありながら、日常使いに耐える洗練が与えられた世代である。

以後は径の展開が進む。2018年に39.5mm、2020年に41.5mm、2024年には36.5mmが加わり、着用層を広げた。2024年の世代は、細部のほぼ全要素を見直しながらも、見た目を大きく変えない方向を選んだ。盾形のインデックス、専用書体の針、文字盤色に合わせた日付窓。刷新ではなく洗練を重ねる姿勢が、ここでも一貫する。

05

自社キャリバー400という転機

長らくオリスはETAやセリタの汎用機を調達し、自社の赤いローターを載せて仕上げてきた。その構図を変えたのが2020年のキャリバー400である。

最初にこの自社ムーブメントを担ったのが、アクイス デイト キャリバー400であった。二つの香箱で120時間(5日間)を駆動する。シリコン製のアンクルとガンギ車など30以上の非磁性部品を採り、2,250ガウスに耐える。ローターは玉軸受をやめ、摩擦の少ない滑り軸受とした。日差は-3/+5秒に収まり、10年保証を備える。コストと性能の両立というオリスの思想を、自社機で示した一本である。

06

海と向き合う時計として

アクイスにはもう一つの顔がある。海洋保護プログラム「チェンジ・フォー・ザ・ベター」の担い手としての役割である。

始まりは2010年、オーストラリア海洋保護協会と組んだグレートバリアリーフ限定版とされる。以後、各地の水域保護を題材にした限定版が、アクイスを土台に次々と作られた。海洋プラスチック回収と組んだクリーンオーシャン、サンゴ礁再生財団との諸作、ソウルの漢江に取材したハンガンなどである。近年は回収PETを文字盤に用いるアップサイクルも展開する。映画でも軍でも王室でもなく、海そのものと結びついた現代の実用機。それがアクイスの現在地である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

アクイスの設計思想は、「機能で語り、不要に変えない」という一点に収斂する。

第一の軸は視認性である。太い針、立体的なアプライドインデックス、コントラストの高い夜光、そして秒針先端のロリポップ。これらは潜水中の即読性のために選ばれた要素であり、世代を越えて維持されてきた。文字盤は情報量を抑え、読み取りを最優先する。

第二の軸は、一方向回転ベゼルの扱い方にある。潜水時間の計測という機能を担うと同時に、セラミックインレイの色面が文字盤を縁取り、視覚的な核となる。ベゼルはアクイスの「顔」を決める要素であり、色とインレイ素材の選択が各モデルの性格を分ける。

意匠面では、ケースとブレスレットを連続して見せる骨格が一貫する。フルスチールから受け継いだこの造形は、リューズガードの張り出しと相まって、道具らしい塊感を生む。径は36.5mmから45.5mmまで幅を持つが、ラグの形状とブレスの一体感という基本文法は変わらない。だからこそ、サイズが違っても一目でアクイスと分かる。

同時代の競合との対比も、アクイスの輪郭を際立たせる。オメガ シーマスターやブランパン フィフティ ファゾムスが歴史的な意匠を継ぐのに対し、アクイスは復刻に依らない。同じオリス内でもダイバーズ65がヴィンテージを担うため、アクイスは現代の道具という役割に徹する。

そして、変化は刷新ではなく洗練として現れる。2017年と2024年の世代交代は、いずれも大胆な作り替えではなく、細部の最適化であった。素材面では、回収PETを用いたアップサイクル文字盤も、特別な意匠ではなく色違いの一種として体系に組み込まれた。認識可能な輪郭を保ちながら、毎回わずかに良くする。この自制こそが、アクイスを短期間で同社の主力へ押し上げた設計上の判断である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2011-現在
Cal. 733(Sellita SW 200-1ベース)
毎時28,800振動(4Hz)、38時間。日付付き主力機。
2013-現在
Cal. 774 / 749 系(調達)
クロノグラフやスモールセコンド用の派生機。並行採用。
2020-現在
Cal. 400(自社)
120時間・耐磁の自社機。上位機の新たな基準。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2011-2016

現代アクイスの原型世代

Aquis Date(初代)
セラミックベゼル・300m防水。現行に続くアクイスの原型を確立。
2013-現在

穴のある時計、深度計世代

Aquis Depth Gauge
サファイアに溝を刻む機械式深度計、500m防水の特異な一本。
2017-2023

意匠を洗練した第2世代

Aquis Date(第2世代)
ケースとブレスを整理し裏蓋にサファイア。日常使いへ間口拡大。
2020-現在

自社キャリバー搭載世代

Aquis Date Calibre 400
自社Cal.400搭載、120時間・耐磁を備える上位機が登場。
2024-現在

細部を再設計した第3世代

Aquis Date(第3世代)
全要素を微調整し36.5mmを追加、着用層をさらに広げた。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Movements - Oris 公式 · Oris · 2026.08.15 閲覧 Oris · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Sellita Caliber SW220-1 専門メディア · Caliber Corner · 2026.08.15 閲覧 Caliber Corner · 2026.08.15
  3. 03 ブログ Oris ブログ · Wikipedia · 2026.08.15 閲覧 Wikipedia · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive