プロフェッショナル以前のスピードマスター
スピードマスターは1957年、シーマスター300、レイルマスターとともに発表された。いずれも特定の用途を想定した実用時計であり、スピードマスターは速度計測を担う計時器として設計された。初代 CK 2915 は、タキメーター目盛りを文字盤ではなくベゼルに移した点で、当時としては新しかった。針はブロードアロー、ベゼルはステンレス製であった。
2年後の1959年、第二世代の CK 2998 が登場する。ベゼルは黒いアルミ製となり、針は細いアルファ針へと改められた。左右対称のケースにねじ込み式裏蓋、リューズガードを持たない簡潔な構成。これは速度を測る道具であって、宇宙を意識した設計ではなかった。搭載されたのは Cal. 321、ルマニア由来のコラムホイール式クロノグラフである。
この時点でスピードマスターは、まだ「月の時計」でも「宇宙の時計」でもない。レーシングドライバーや技術者に向けた、計器盤を思わせる読みやすい文字盤を持つ実用クロノグラフであった。