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OMEGA · SERIES

Speedmaster Chronoscope

スピードマスター クロノスコープ

三つの計測尺を備えた1940年代のクロノグラフを、現代のSpeedmasterに結んだ手巻き

01 — 概要 / SUMMARY

Speedmaster Chronoscopeは、Omegaが2021年に発表したSpeedmasterの一系統である。1940年代の多目的クロノグラフに由来する三つの計測尺(タキメーター、テレメーター、パルスメーター)を、1960年代のSpeedmasterケースと現代の手巻きCo-Axial Master Chronometerで結んだ。発表時のステンレススチールとBronze Goldに加え、2024年にはオリンピック公式計時を記念するParis 2024エディションが18Kゴールドで加わった。月へ向かったMoonwatchとは異なる、実用クロノグラフの系譜を引く読み物的なシリーズである。

02 — STORY · 物語

Speedmaster Chronoscope(スピードマスター クロノスコープ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1940年代の多目的クロノグラフ

Omegaがこのシリーズの設計言語を借りた先祖は、1930年代から1940年代の多目的クロノグラフである。代表が、Cal. 33.3を積んだRef. CK 2393。Lemania設計のこのキャリバーはコラムホイールを備え、後のCal. 321やSpeedmasterの源流の一つとされる。当時の文字盤は、中心から渦を巻くように三つの計測尺を重ねる「スネイル(かたつむり)」式が一般的だった。タキメーター、テレメーター、パルスメーター。速度、距離、脈拍を一本の針で読み分ける道具であり、軍人、技師、医師の実務に応えた。こうした多尺文字盤は当時のクロノグラフに広く見られたが、Omega製の現存個体は今日の収集家に高く評価される。Cal. 33.3の生産はおよそ20年で約14,000個と伝わり、現存数は多くない。

02

2021年、二つの時代を接ぐ

Chronoscopeが現行シリーズとして登場したのは2021年9月である。狙いは明快で、二つの時代の意匠を一本に接ぐことにある。文字盤は1940年代のスネイル式、ケースは1960年代のSpeedmaster。すなわち非対称ケースとライアー(竪琴)型のラグである。そして中身は、当時はなかった21世紀の手巻きCal. 9908である。「Chronoscope」という名も、Omegaがかつて用いた古い呼称を甦らせたものとされる。ギリシャ語のchronos(時)とscope(観る)に由来する語で、時間を「観る」道具という原義をそのまま冠する。発表当初はスチールの複数仕様と、Bronze Goldの1型で構成された。

03

三つのスケールという思想

このシリーズの核は、中心に集約された三つの計測尺にある。タキメーターは、既知の距離を走る時間から平均速度を割り出す。テレメーターは、光と音の時間差から、雷や砲撃など見えて聞こえる事象までの距離を測る。パルスメーターは、規定拍数を計って一分間の脈拍数を読む。ヴィンテージでは尺ごとに色を変える例が多いが、Chronoscopeは三尺を同色で抑え、現代的な可読性を優先した。針はリーフ(木の葉)型、数字の下には渦巻きトラックが走る。9時に小秒、3時に60分・12時間の合算計、中央にクロノ秒という二つ目(ツーカウンター)構成である。風防はヴィンテージのアクリルを思わせるボックス型サファイアを採る。

04

スチールとBronze Gold、素材の物語

初発はステンレススチールとBronze Goldの二系統で構成された。スチールは銀・青・黒の3文字盤を用意し、ベゼルはアルミニウム製。ブレスレットと革ストラップから選べた。BronzeGoldはOmega独自の金合金で、金の含有率は37.5%。茶色のセラミックベゼルと、酸化により色づくパティナ風の文字盤を組み合わせた。ケース径はいずれも43mm、50m防水。裏蓋はサファイアの透視式で、手巻きキャリバーを見せる。動力源は自動巻Cal. 9900を手巻化したCal. 9908。コラムホイールと二つの香箱、Master Chronometer認定を備える。振動数は毎時28,800振動 (4Hz)、パワーリザーブは60時間である。

05

Paris 2024と現在地

Omegaは1932年以来、オリンピックの公式計時を担ってきた。2024年、開幕100日前にParis 2024エディションが加わる。銀白のオパール文字盤に黒の小文字盤を据えたパンダ調で、数字と針はゴールド。スチール版に加え、シリーズで初めて18Kの無垢金(Moonshine Gold)を採用した。数量限定ではないが、五輪に合わせた仕様で、スチール版はアルミ、ゴールド版はセラミックのベゼルを持つ。裏蓋はParis 2024のメダリオンを刻んだ密閉式で、記念碑性を優先している。三スケールの読み物的な性格はそのままに、Chronoscopeは月へ向かったMoonwatchとは別の極を担う。1940年代の実用クロノグラフを、現代の精度で読み解くシリーズとして、現行カタログに残る。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

設計思想

Chronoscopeの設計が解こうとした課題は、約20年を隔てた二つの意匠を一本に同居させることにある。1940年代の多目的文字盤と、1960年代のSpeedmasterケース。両者は本来、世代も用途も異なる。これを破綻なく結ぶために、シリーズは「中心の情報密度」と「外周の静けさ」を役割分担させている。

文字盤中央には、タキメーター、テレメーター、パルスメーターの三尺が渦状に重なる。情報量は多いが、三尺を同一色で刷ることで視覚的な混乱を抑えた。ヴィンテージの多色刷りを再現せず、あえて単色にとどめた判断が、現代の可読性を支えている。外周のベゼルにはタキメーターを置き、計測の主役を中央の文字盤と分担させる。盤面とベゼルで同じ機能を二重に持つのは、文字盤上の尺とベゼル上の尺という二つの伝統を併せ持つためである。

意匠の語彙は一貫してヴィンテージから引く。リーフ型の針、立体的なアラビア数字、数字の下を走る渦巻きトラック、そしてアクリル風防を思わせるボックス型サファイア。これらが1940年代の温度感を与える。一方でケースは紛れもなくSpeedmasterで、非対称の構造とライアー型ラグが現代の像を保つ。43mmという径も、内部の手巻きキャリバーの寸法に従った結果である。

変えなかったのは、この文字盤構成とケースの輪郭である。変えたのは素材と色だけといってよい。スチール、Bronze Gold、18Kゴールドと展開が広がっても、二つ目の盤面構成は動かない。ベゼルにタキメーターのみを置くMoonwatchや、三色刷りだった往年のCal. 33.3とは、この一点で明確に分かれる。Chronoscopeの設計は、機能の網羅よりも、二つの時代をいかに矛盾なく見せるかに重心を置いている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2021-現在
Cal. 9908
自動巻9900系を手巻化。鋼とBronze Gold用。
2024-現在
Cal. 9909
18Kゴールド版の貴金属仕様。Paris 2024で投入。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2021-現在

初代ステンレススチール

329.30 329.32 329.33 系
銀・青・黒の3文字盤、アルミベゼル。三スケール文字盤を復活。
2021-現在

Bronze Goldモデル

329.92.43.51.10.001
37.5%金合金、茶色セラミックベゼルとパティナ文字盤。
2024

Paris 2024 エディション

522.60 522.62 系(18K)
鋼と18K無垢金で展開。パンダ文字盤、密閉裏蓋。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 専門メディア Omega Speedmaster Chronoscope Collection - Hands-on Review, Price 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.10.15 閲覧 Monochrome Watches · 2026.10.15
  2. 02 専門メディア An Omega Speedmaster Chronoscope for the Paris 2024 Olympics 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.15 閲覧 SJX Watches · 2026.10.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive