磁気という見えない敵
1950年代、腕時計にとって磁気は深刻な脅威であった。発電機や変圧器、電車の架線。産業の現場には強い磁場があふれ、てんぷやひげぜんまいが帯磁すると時計は精度を失った。スイスの各社はこの課題に競って取り組む。ロレックスはミルガウス、IWCはインヂュニアをすでに送り出していた。オメガがレイルマスターを発表したのは1957年、競合よりむしろ遅い登場である。同じ年、オメガはスピードマスターとシーマスター300も発表し、三本をプロフェッショナル・トリロジーとして世に問うた。レイルマスターはそのなかで、磁場の脅威に応える一本として位置づけられた。その名は、鉄道で働く人々に向けた時計という出自に由来するとされる。ブロードアロー針に代表される意匠は、1953年に英空軍へ納めた軍用時計の系譜を引くと伝わる。