設計思想
1. 一体型ブレスレット復権の波と、自社アーカイブという答え
2010年代後半から、ジェラルド・ジェンタが定義した一体型ブレスレットのスポーツウォッチが再び脚光を浴びた。ロイヤルオークやノーチラスの系譜に連なる意匠を、各社が競って手がけた。ニヴァダ・グレンヘンの答えは、流行への追随ではなく、自社の過去にあった。2010年代後半に同社を復活させたギヨーム・レデは、1977年のF77を発掘し、SNSで反応を確かめた。好評を受け、復刻は2023年の製品計画の中心に据えられた。他社のオマージュと異なり、F77には自前の原型が存在する。69001A77は、その復刻の一形態である。
2. 1977年の原型と、復刻が選んだもの・選ばなかったもの
原型のF77は、車名に由来する一群(GLX、F77、F2、SP)の一つだったと伝わる。八角ベゼル、一体型ブレスレット、織り目状の文字盤を備え、一部にデイデイト仕様も存在した。復刻は、原型に忠実な37mm径と八角ベゼル、一体型ブレスレット、網代模様の文字盤を受け継いだ。一方で、デイデイトは廃され、日付あり・なしの二択へ整理された。風防はサファイアとなり、100m防水とソプロP024自動巻が与えられた。寸法と輪郭、文字盤の質感は継ぎ、機構と防水性能は現代へ置き換えた構図である。
3. このRefの位置と、MKIIへの世代交代
69001A77は、2023年の発売を飾った4本の一つで、青文字盤・日付ありに当たる。青はサンレイ仕上げが網代の凹凸を引き立て、黒よりも表情が動く。日付窓は実用を加える一方、左右対称を崩すため、対称を好む層には日付なしの68001A77が選ばれた。このRefは、コレクションがチタンや天然石文字盤へ広がる中でも、鋼製の基幹として残った。2025年から2026年にかけ、38mm径でラグに穴を開けた後継世代MKIIが導入される。これに伴い37mmの初代群はMKIと位置づけられ、69001A77は原型に最も近い世代の青・日付として記憶される。兄弟Refの68001A77、41mm径の69041A77B、後継のMKIIが、隣接する参照点となる。
意匠分析
69001A77の外装は、八角ベゼルという一体型ブレスレットの時計の定石を踏みつつ、角を丸めて独自の表情を作る。ベゼル頂面は縦ヘアライン、面取りは鏡面で、頂点には小ぶりのねじが並ぶ。ロイヤルオークと比べ、面取りは控えめで丸みが残り、威圧感は薄い。ケース本体はF77独自の造形で、三角形の側面取りと角張った統合ラグが70年代の鋭さを与える。径は37mm、厚さは約12.6mm。背の高いダブルドーム・サファイアが、角ばった構成に温かみを添える。竜頭はねじ込み式で、側面に細かな溝が刻まれる。
青文字盤は、網代(公式呼称はエンボス・カーボン)の織り目をサンレイ仕上げの上に重ねる。光の角度で青の濃淡が動き、平坦な黒文字盤とは異なる立体感が生まれる。植字された太いバトン・インデックスは鏡面シルバーで、面取りが施される。バトン針と、丸い指標を持つロリポップ秒針にはスーパールミノヴァが入り、インデックス脇にも夜光の点が置かれる。このRef固有の日付窓は3時位置で、網代の地に馴染ませて配される。
一体型ブレスレットは3列の「モラスク」型で、ケース寄りで素早く手首へ落ちる。幅は約22mmから約16mmへ絞られ、頂面はヘアライン、側面は鏡面と仕上げを切り分ける。削り出しの折り畳みクラスプは2点式リリースで、7穴・約19mmの微調整を備える。37mm径ながら統合構造ゆえに手首での存在感は数値以上で、小径を好む層に向く。裏蓋はニヴァダの紋章を刻んだソリッド仕様で、機械にはソプロP024を収める。
系譜と歴史
Ref. 69001A77は、F77復刻群の最初期リファレンスの一つである。ニヴァダ・グレンヘンは2023年春、1977年の同名モデルを下敷きとしたF77の復刻を発表した。同年4月には77時間限定の先行予約が組まれ、予約分には固有番号が付された。発売時のラインは黒と青の2色で、各々に日付あり・なしを用意した計4本。69001A77は、このうち青文字盤・日付ありに当たり、日付なしの青は68001A77として区別される。発売直後の在庫は早期に尽き、2023年9月に追加供給が告知された。F77はこの年、同社を代表する売れ筋となり、復刻ブランドの主力へと押し上げられた。2024年には、チタンケースや天然石文字盤(ラピスラズリ、メテオライト等)を加えた派生が登場するが、鋼製の青はカタログの基幹として残った。2025年には41mm径の派生(青・日付ありは69041A77B)も加わっている。2025年から2026年にかけて、ケース径を38mmへ広げ、ラグに穴あけ加工を施した後継世代F77 MKIIが順次導入された。これに伴い、37mmの初代群はMKIと位置づけられ、69001A77もその一員として世代交代の対象となった。
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 専門メディア Soprod Caliber P024 Watch Movement
- 02 専門メディア Soprod caliber P024