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NIVADA GRENCHEN · SERIES

F77

1977年に生まれた一体型ブレスレットのスポーツウォッチを、手の届くスイス製として現代に蘇らせた復刻シリーズ

01 — 概要 / SUMMARY

ニヴァダ・グレンヘン F77は、1977年に登場した一体型ブレスレットのスポーツウォッチを起点とするシリーズである。八角形ベゼルと角張ったケース、籠目状の文字盤を特徴とし、1970年代の鋼製スポーツの意匠を受け継ぐ。2023年、ギヨーム・レデを中心に再始動したブランドが37mmで復刻し、ブランドの主力へと育った。現在は初代を踏襲したMK1、ケースを見直したMKII、ストーン文字盤やオープンハートなどの派生で構成される。高価格化が進む同ジャンルにあって、手の届く価格を保つ点に独自の位置を占める。

02 — STORY · 物語

F77、これまでの軌跡

The story of this series
01

鋼の高級スポーツという1970年代の潮流

1972年、オーデマ ピゲがロイヤルオークを発表する。鋼でありながら高級時計として売り出す発想は、当時としては異例であった。続いてパテック フィリップのノーチラス、IWCのインヂュニアSLが現れ、一体型ブレスレットのスポーツウォッチという新しいジャンルが形づくられる。いずれもデザイナーのジェラルド・ジェンタが関与し、角の立ったケースと一体化したブレスレットを共通言語とした。

ニヴァダ・グレンヘンがこの潮流に応えたのが、1977年のF77である。八角形ベゼル、角張ったケース、鋼の一体型ブレスレット。先行する高級機の語彙を備えつつ、F77は工具時計の系譜にあるブランドらしく、実用品としての性格を残した。高嶺の花であった鋼製スポーツを、より身近にする狙いがあったとされる。

02

オリジナルF77という設計

初代F77のケース径は約38mmとされる。丸いダイヤルを八角形のベゼルが囲み、その外周を円形の縁が受ける。直線と曲線が交錯する構成が、このシリーズの出発点となった。文字盤には籠目状の型打ち模様が施され、太いバーインデックスが視認性を支える。デイデイト表示を備えた仕様も存在し、日常使いの時計として設計されていた。

しかしF77が世に出た時期は、クォーツショックがスイス機械式時計を直撃した局面と重なる。手の届く価格帯の機械式は特に打撃を受けやすく、F77も長く生産されることなく姿を消した。現存する個体は少なく、後年には入手の難しいヴィンテージとなる。

03

2023年、インスタグラムからの復活

2018年前後、フランス出身のギヨーム・レデらがニヴァダ・グレンヘンを再始動させ、2020年から復刻モデルを世に問うた。アンタークティックやクロノマスターが先行するなか、レデはコレクターが投稿した初代F77の写真に着目する。インスタグラム上で反応を確かめ、復刻の手応えを得たと伝わる。

F77は2023年4月に正式発表された。ケース径は初代より1mm小さい37mmへと改められ、現代の手首になじむ寸法を選んだ。籠目模様の文字盤はブルー、ブラック、そして燻したようなブラウンが用意され、日付の有無も選べた。ムーブメントはスイス製のソプロード P024。高価格化が進む同ジャンルのなかで手の届く価格を保ち、F77はブランドの主力へと育っていく。

04

素材への拡張 — [チタン](/glossary/titanium)と石の文字盤

2024年、F77は素材の面で枠を広げる。アントラサイト、アベンチュリン、ラピスラズリ、そして隕石を用いた4種のストーン文字盤が加わった。一部はグレード5チタンのケースをまとい、軽さと質感を両立させた。なかでも天然の隕石を切り出した文字盤は予約期間限定で提供され、注目を集めた。

復刻時の意匠を保ちながら、素材で個性を描き分ける。この拡張は、単なる色違いの追加とは異なる方向性を示した。

05

MKIIという成熟

2025年、ケースそのものを見直したMKIIが登場する。径は38mmへ戻り、ラグはわずかに湾曲して手首への当たりを和らげた。厚みは12.65mmから12.20mmへ薄くなり、ラグには穴が開けられてブレスレットの交換が容易になった。針は従来のバー型からドーフィン型へと改められている。オニキス文字盤の鋼製と、18K金メッキ仕様が口火を切った。

2026年、ブランドは創業100周年を迎え、MKIIを軸とした拡充を行う。籠目模様のクラシック、複数のストーン文字盤に加え、テンプを露出させたオープンハートが並んだ。オープンハート版には、テンプの見えるソプロード M100BVが用いられるとされる。1977年の一本から始まったシリーズは、復刻から数年で多彩な表情を備えるに至っている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

F77の設計言語は、相反する幾何の対比に集約される。丸いダイヤルを八角形のベゼルが囲み、その外周を円形の縁が受け止める。円と多角形、直線と曲線が一つのケース上で同居する構図が、初代から一貫してシリーズの核を成す。ベゼルに並ぶ8本のビスは視覚的な要であり、同時に1970年代の鋼製スポーツが共有した記号でもある。

意匠の中心にあるのは、籠目状に編まれた型打ち文字盤である。光の角度で表情を変えるこの面は、無地の文字盤とは異なる奥行きを生む。同時代の競合と並べると、その輪郭は明確になる。ロイヤルオークがタペストリー模様と八角形ベゼルで知られ、ノーチラスが舷窓を思わせる横溝で語られるのに対し、F77は籠目の織り目を自らの顔とした。

ケースの仕上げにも思想が表れる。面ごとにヘアラインと鏡面を打ち分け、角の立った造形に陰影を与える。ブレスレットはケースと一体に流れ、手首の上で連続した面を描く。100m防水とねじ込み式リューズが、日常使いの堅牢性を支える。夜光は控えめで、針とインデックスに最小限のスーパールミノバを置くにとどまる。装飾を足すよりも、視認性と日常性を優先する判断が一貫している。

寸法の抑制も特徴である。初代は約38mm、復刻のMK1は37mm、MKIIは38mmと、いずれも誇張を避けた径にとどまる。大型化が進んだ時代にあって、この自制はシリーズの一貫した判断であった。MK1からMKIIへの更新も、設計言語を保ったまま使い勝手を磨く方向で行われた。ラグの湾曲、穴あきラグ、薄型化。針はバー型からドーフィン型へ移り、文字盤の表情はわずかに引き締まった。変えたのは装着感であり、変えなかったのは八角形ベゼルと籠目の文字盤という、F77を一目で識別させる要素である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1977
ETA系自動巻き(詳細不詳)
初代はETAベースの自動巻きとされる。
2023-現在
Soprod P024
ETA 2824系ベース。4Hz・約38時間の主力機。
2026-
Soprod M100BV
A10系派生。テンプ開口のオープンハート版に採用。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1977

初代F77

F77 (オリジナル)
八角形ベゼルと籠目文字盤の統合ブレス。約38mm。
2023

復刻MK1

F77 MK1 (37mm)
37mm鋼製で復刻。籠目文字盤、ソプロードP024搭載。
2024

チタンと石の文字盤

F77 Titanium Stone Dials
隕石やラピス等のストーン文字盤、チタン仕様を追加。
2025-現在

MKII刷新

F77 MKII (38mm)
38mmへ拡大しケース再設計。穴あきラグとドーフィン針。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 F77 - Nivada Grenchen 公式 · Nivada Grenchen · 2026.08.15 閲覧 Nivada Grenchen · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Introducing: The Nivada Grenchen F77 MKII 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.08.15 閲覧 Monochrome Watches · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive