設計思想
1. 2022年、機械を入れ替えるという選択
IW328801は、2022年8月にIWCが発表したアクアタイマー オートマティック新世代3本のうち、青文字盤モデルとして登場したリファレンスである。同時発表は黒文字盤・黒ラバーストラップのIW328802と、黒文字盤・ステンレスブレスのIW328803。3本は同じケースと機構を共有しつつ、文字盤色と装着部材でラインを構成する。
新世代の意義は、外観ではなく内部にある。前世代のCal.30120は、ETA 2892-A2またはSellita SW300-1を基にした調達ムーブメントだった。4Hz・42時間パワーリザーブの仕様で、2014年から本機を駆動してきた。IW328801以降は、Richemontグループ傘下のValFleurier工房で製造されるCal.32111に置き換わる。164パーツ、21石、毎時28,800振動 (4Hz)で稼働し、パワーリザーブは120時間=5日間に達する。
2. 前任IW329001からの継承と非継承
直接の前任にあたるのはIW329001で、2014年から2021年まで生産された。42×14.1mmのケース寸法、SafeDive内外ベゼル機構、凸面サファイアクリスタル、クイックチェンジ式ストラップシステム、300m防水。これらはすべてIW328801へそのまま引き継がれている。文字盤と針の構成も基本的には継承で、意匠面の更新は最小限にとどめられた。
非継承で最も顕著な変更点はCal.32111への置換である。これに連動して、ねじ込み式裏蓋内側の刻印も新ムーブメント仕様に改められた。
3. 青文字盤という追加
IW328801固有の特徴は、サンレイ仕上げの青文字盤と、テクスチャー入りブルーラバーストラップの組み合わせである。2014年世代の標準ラインナップは黒文字盤と銀文字盤のみだった。青文字盤はガラパゴスやチャールズ・ダーウィンといった特別エディションの領域に限られていた。本Refの登場により、青はアクアタイマーの永久コレクションが扱う基本色のひとつとなった。
意匠分析
ケース径は42mm、厚みは14.1mm、ラグ間距離はおよそ50mm。ステンレススチール製で、面ごとに仕上げを切り分けた構成をとる。ベゼル外周とラグ上面はサテン、ケースサイド上下とリューズ周辺はポリッシュ。マットとグロスの対比により、ダイバーズの工具的な印象とドレス寄りの艶感が同居する。
最大の意匠的・機構的特徴はSafeDiveシステムによる内外ベゼル機構である。外側ベゼルを回すと、ケース9時側に配置されたスライディングクラッチを介して、ガラス下の内側ベゼルが連動する。安全のため内側ベゼルは反時計回りにしか進まず、誤って外側に触れても残り潜水時間が短く誤読される方向にしか動かない。グローブを装着したままでも操作できる外ベゼルの利便性と、内ベゼルを覆うクリスタルがもたらす耐汚染性を両立した設計である。IWCの特許機構として、2014年世代から実装されてきた。ベゼル外周には、Porsche Designによる1982年のOcean 2000を意識した、面取りの効いた滑らかな起伏が刻まれている。
文字盤はサンレイ仕上げの青。中心からの放射状ヘアラインが光を受けて色相を変える。インデックスは大ぶりなバトン型で、針は太い棒型のハンド。蓄光は白色のSuper-LumiNova。3時位置に日付窓を備える。文字盤外周を取り囲む内側回転ベゼルには、潜水時間計測のための15分単位の主要マーカーと、分単位の細目盛りが組み合わせて刻まれる。この15分単位の構成は、1967年の初代アクアタイマー(Ref. 812)の意匠を引き継いだものとされる。
クリスタルは両面に反射防止コーティングを施した凸面サファイア。リューズはねじ込み式で、IWCロゴのレリーフが入る。ストラップはIWC独自のクイックチェンジシステムに対応し、工具を使わずブレスやNATOへ換装できる。バックルはスチール製のタング(ピン)バックル。
系譜と歴史
IW328801は、2022年8月にIWCが発表したアクアタイマー オートマティック新世代3本のうちの1本である。同時発表は黒文字盤・黒ラバーのIW328802と、黒文字盤・ステンレスブレスのIW328803。3本ともケース、機構、ムーブメントを共有し、文字盤色とストラップで識別される。
直接の前任は2014年から2021年まで生産されたIW329001。本Refはこれをほぼ完全に引き継いだ。ただしムーブメントだけは置き換わり、ETA 2892-A2/Sellita SW300-1を基にしたCal.30120から、ValFleurier製の新世代Cal.32111へと刷新された。シリーズ全体で青文字盤が永久コレクションに加わったのは本Refからである。
発表は2022年春のWatches and Wondersではなく、同年夏のIWC独自のプレスリリースを通じて行われた。Aquatimerコレクション全体としては2014年世代の長期延命に位置づけられ、ムーブメント世代交代を主軸とする静かな刷新だった。
2026年現在まで生産は継続している。本Refの文字盤・針・ベゼルの意匠変更や、追加派生(色違い、限定版)の公式発表は、これまでに確認されていない。