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IWC · SERIES

GST Aquatimer

GSTアクアタイマー

ポルシェ・デザインの後を受け、2000m防水と一体化ブレスで90年代IWCを象徴したダイバーズ世代。

01 — 概要 / SUMMARY

GSTアクアタイマーは、1998年に発表されたIWCのダイバーズウォッチ世代である。約20年にわたって続いたポルシェ・デザインとの協業を終え、自社設計に回帰した最初の本格ダイバーズという性格を持つ。中核となるリファレンス3536は2000m防水を達成し、オーシャン2000の遺伝子を継承しつつ、より民生的な仕様へと再構築された。シリーズの設計言語は、角を立てたケースと一体化ブレスレットを特徴とする。後年には機械式水深計を備えたGSTディープ・ワン、アクアタイマー・クロノグラフ、内回転ベゼルへ回帰したアクアタイマー・オートマティックへと展開した。

02 — STORY · 物語

GST Aquatimer(GSTアクアタイマー)、これまでの軌跡

The story of this series
01

ポルシェ・デザイン時代の終焉

1980年代から1990年代にかけてのIWCは、スポーツウォッチの設計領域においてフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ率いるポルシェ・デザインとの協業に大きく依存していた。1982年に登場したオーシャン2000は、チタン製で初めて2000m防水を達成した量産ダイバーズとして、ブランドを象徴する一本となっていた。

しかし1997年から1998年にかけて、両社のパートナーシップは20年近い歴史を経て終わりを迎える。ポルシェ・デザインの時計は末期にIWCの売上の2割近くを占めていたとされ、その穴を埋める必要があった。IWCは1997年9月、ヴィチェンツァで新シリーズ「GST」を発表する。GSTは「Gold(金)・Steel(鋼)・Titanium(チタン)」の頭文字に由来し、同一のケース言語を三つの素材で並列展開する構想を示すものであった。

02

リファレンス3536 — シリーズの中核

新生GSTコレクションの中核としてダイバーズ部門を担ったのが、1998年に発表されたGSTアクアタイマー2000(Ref. 3536)である。「アクアタイマー」の名は、1967年(1966年とする資料もある)の初代Ref. 812に始まる。

42mm径、厚さ14.5mmのケースは、オーシャン2000の堅牢な構成を継承しつつ、より角を立てた直線的なシルエットへと再構築された。仕様の中心となるのは、当時の民生用機械式ダイバーズとしては最深部類となる2000m防水である。ヘリウムエスケープバルブを持たないまま2000mを達成した点も特筆される。ベゼルは60クリックの単方向回転式で、4本のねじで固定され、押し下げてから回す。

Ref. 3536には、チタンに黒文字盤(Ref. 3536-001)、ステンレススチールに黒文字盤(Ref. 3536-002)、ステンレススチールに銀文字盤+金張り針インデックス(Ref. 3536-003)の三仕様が存在した。最後の銀+金仕様は特に希少とされる。ムーブメントはETA 2892-A2を基にしたCal. 37524である。

03

1999年、GSTディープ・ワン — 機械式水深計の挑戦

Ref. 3536が定着した翌年、IWCは技術的な野心作として、GSTディープ・ワン(Ref. 3527)を発表した。チタンケース内部に組み込まれたブルドン管式の機械式水深計が、現在水深と最大水深の双方を二本の針で示すという構成である。電池や電子機器に頼らない純機械式の水深計を腕時計に組み込んだ事例は、当時としても、また今日においても極めて稀である。

ケースは42.8mm径・厚さ14.75mmで、潜水時間は不意の操作を防ぐ内側の回転ベゼルで計る。ベースとなるムーブメントはジャガー・ルクルトのCal. 891を改修したCal. 8914である。生産はわずか2年ほどで、本数は1,000本に遠く及ばないと推定される。商業的に大きく拡張されることはなかったが、後の2009年ディープ・ツー、2014年ディープ・スリーへと続く系譜の起点となっている。

04

2004年、シリーズの拡張

2004年、コレクション名は「アクアタイマー」に改められ、シリーズは大きな拡張を迎える。一方では、GSTの外で初めての本格的なアクアタイマー・クロノグラフ群が登場した。Ref. 3719は41.2mm・厚さ14.2mm、120m防水のチタンケースを持ち、内回転ベゼルを下側クロノグラフプッシャーで回す独自機構を備えていた。Ref. 3719は2006年公開の映画『ラッキーナンバー7(Lucky Number Slevin)』の作中で使用され、コレクター間で「Slevin」の通称を得たと伝わる。ムーブメントはValjoux 7750をベースにIWCが調整・仕上げを加えたCal. 79320である。同年にはCal. 79470を搭載するスプリットミニッツ・クロノグラフ(Ref. 3723)も追加された。

他方、シンプルな三針ダイバーとしては、内回転ベゼルへ回帰したアクアタイマー・オートマティックが用意された。Ref. 3538がチタン2000m、Ref. 3548がスチール1000mで、2時と4時のツインクラウンを持ち、ETA 2892-A2を基にしたCal. 30110を積む。これは1967年の初代Ref. 812で採用されたツインクラウン+内回転ベゼル構成への意識的な回帰であった。

Ref. 3548にはクストー協会(The Cousteau Society)との協業による「Cousteau Divers」エディションも存在し、ジャック=イヴ・クストーの調査船「カリプソ号」に因む限定数が設定されたとされる。

05

GST世代の終焉と、その意味

GSTのデザイン言語にもとづくアクアタイマー群は、結果として12年近くにわたってカタログに残った。2009年、IWCはアクアタイマー・コレクションを全面的に刷新し、三針も外回転ベゼルのRef. 3568などへ移る。のちにSafeDiveと呼ばれる機構は、外回転ベゼルを単方向に回しつつ、ケース内部の密閉されたギア機構を介して内ベゼル側で実際の計時を行うという二重リング構造である。これによって、GST時代の代名詞であった「Push and Turn」式の外ベゼルと、強い角を持つ一体化ケースは、より丸みを帯びた新世代の設計へと置き換えられた。

GSTアクアタイマーは、ポルシェ・デザイン時代の遺産と、現代の自社設計コレクションをつなぐ過渡期に位置する。生産終了から十数年を経た現在、ネオヴィンテージとしての評価が定着しつつあり、特にチタン製Ref. 3536は、IWCが2000m級ダイバーズで到達した一つの完成形として、収集対象に位置づけられている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

GSTアクアタイマーの設計思想は、二つの軸で読み解くことができる。一つは「強さの可視化」、もう一つは「素材横断的なケース設計」である。

ポルシェ・デザイン時代のオーシャン2000が、滑らかで一体感のあるモノコック的なフォルムを志向していたのに対し、GSTのケースは、より角を立てた、明示的に堅牢さを訴える造形へと舵を切った。明確に面取りされたエッジ、視認できるリューズガード、太いローレットを刻んだベゼル。視覚的にも触覚的にも「道具としての時計」であることを強調する語彙で構成されている。

中核となるRef. 3536のベゼルは、押し下げて回転させる「Push and Turn」式である。これは不注意な操作による潜水時間の誤認を防ぐ機構で、触れた瞬間にその意図が伝わる。同時代のロレックスやオメガが採用した、外周ラチェットを軽く押し回す方式とは明確に異なる、独自のユーザーインターフェースとして記憶される。

シリーズ名の「GST」が示すのは、ゴールド・スチール・チタンの三素材を、同一のケース言語で並列展開するという意思である。チタンを軽量ダイバーの素材として民生領域に持ち込んだのはオーシャン2000で蓄積された技術であるが、GSTではそれを「特殊素材」ではなく、ラインの選択肢の一つとして当然のものとして扱った。

文字盤側の設計は視認性を最優先とする姿勢で一貫している。マットブラックを基調に、大型の夜光バトン・インデックス(2000年頃まではトリチウムを併用し、のちにSuper-LumiNovaへ移行)と太い指針が、深部での即時可読性を担保する。3時位置の日付窓は枠付きで小さくまとめられ、ダイヤルの構成を乱さない。バウハウス的とも評される抑制の効いたグラフィズムが、シリーズ全体を貫く視覚言語である。

これらの選択の積み重ねが、2009年以降のSafeDive世代の柔らかい造形と区別される、GSTアクアタイマー固有のキャラクターを形作っている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1998-2004頃
Cal. 37524
ETA 2892-A2ベース、GSTアクアタイマー2000用。
1999-2001頃
Cal. 8914
JLC Cal. 891を改修、機械式水深計を搭載。
2004-2009頃
Cal. 30110
ETA 2892-A2系、2004年の三針ダイバー用。
2004-2009頃
Cal. 79320 / 79470
Valjoux 7750系、IWC社内で調整・仕上げ。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1998-2004頃

GSTアクアタイマー2000

3536
42mm・2000m防水。GST世代の中核を担う三針ダイバー。
1999-2001頃

GSTディープ・ワン

3527
ブルドン管式の機械式水深計を組み込んだ実験作。
2004-2009頃

アクアタイマー・オートマティック

3538 3548
内回転ベゼルへ回帰、初代Ref. 812の構成を継承。
2004-2009頃

アクアタイマー・クロノグラフ系

3719 3723
7750系を搭載、シリーズ初の本格ダイバークロノ。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive