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GRAND SEIKO · SERIES

Quartz

クオーツ

年差±10秒という精度を、機械式と同じ手仕事で支えるグランドセイコーのもうひとつの本流

39 mm – 40 mm
01 — 概要 / SUMMARY

グランドセイコー クオーツは、1988年の95GS(Cal. 9581 / 9587)に始まり、1993年のCaliber 9Fで自社設計の頂点を見たコレクションである。年差±10秒の精度に、機械式と同じ太い針、多面インデックス、ザラツ研磨のケースを共存させた。現行は3針日付のHeritage 9F Quartz(SBGPシリーズ、Cal. 9F85)、GMTのSport 9F Quartz GMT(SBGNシリーズ、Cal. 9F86)、コンパクトケースのSBGXシリーズ(Cal. 9F61 / 9F62)の3系統に整理される。

02 — STORY · 物語

Quartz(クオーツ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1988年、グランドセイコーの再起動

グランドセイコーは1975年にいったん途絶えている。クオーツショックの波のなかで、機械式の手作業を前提とした「最高峰の腕時計」というブランド像が、時代の論理と噛み合わなくなった。代わりに諏訪精工舎が立ち上げたのが Seiko Grand Quartz(Cal. 48GQ)であり、月差±5秒という当時としては破格の精度を背負って、1970年代後半の日本の高級クオーツ市場を牽引した。

そして1988年9月22日、セイコーは販売店向け会報誌「セイコーニュース」を通じて、13年ぶりのグランドセイコー復活を告げる。最初の4本は95GS(Ref. SBGS001〜004)。Cal. 9581(時分秒)と Cal. 9587(日付付き)の2基を搭載し、いずれも年差±10秒という、当時の量産クオーツが束で並んでもかなわない精度を掲げた。記憶を引き継ぐ機械式ではなく、クオーツによる再出発。それは「最も正確な腕時計とは何か」という、グランドセイコー創業時の問いを、新しい技術で言い直す試みでもあった。

02

1993年、Caliber 9F の登場

しかし95GS には残された宿題があった。Cal. 9581 / 9587 は当時の量産クオーツの上位版という性格が強く、機械式グランドセイコーが纏ってきた太い針や厚みのある多面インデックスを、十分なトルクで駆動するには設計が足りなかった。

5年後の1993年、信州ウォッチ工房(長野県塩尻市)の開発チームが投入したのが Caliber 9F83 である。9F は4つの仕掛けでこの宿題を解いた。第一に Twin Pulse Control Motor、ふたつのパルスで一度に大きなトルクを発生させ、文字盤の縁まで届く太い針を動かす。第二に Backlash Auto-Adjust Mechanism、秒針が止まる瞬間の微振動を吸収し、針先がインデックスにぴたりと止まる。第三に Instant Date Change Mechanism、深夜0時に日付板を瞬時に切り替える。第四に Protective Shield Construction、電池交換時に塵が機構に入らない密閉構造である。年差±10秒の精度はそのままに、機械式と同じ顔つきの腕時計をクオーツで作る——9F はその出発点となった。

03

9F6シリーズと展開期

1997年、Cal. 9F61(時分秒)と Cal. 9F62(日付付き)が発表される。9F83 系より一回り小さい設計で、より洗練されたケースに収まる SBGXシリーズが立ち上がった。Cal. 9F62 は2025年現在も生産が続く息の長いキャリバーで、SBGX355 や SBGX357「Skyflake」のような近作にも採用されている。同時期にやや厚みを抑えた Cal. 9F82 も登場し、40mmクラスの SBGV シリーズを支えた。

2000年代から2010年代にかけては、限定モデルでの精度規定の引き上げ(年差±5秒)や、80,000A/m対応の耐磁モデル SBGX089 など、9F の応用域も広がった。グランドセイコーの意匠言語は、機械式と並んでクオーツでも完全に表現できるという主張が、この時期に静かに固まっていく。

04

GMTへの長い宿題と Cal. 9F86

Cal. 9F の開発当初、設計チームはすでに GMT 機能の搭載を構想していた。だが、独立して動く時針の機構と、Instant Date Change の堅牢性を両立させる微小部品の量産技術が、当時の手元にはなかった。

25年の歳月を経て、信州ウォッチ工房の部品生産技術チームがこの問題を解く。2018年、9F の25周年に合わせて発表された Caliber 9F86 は、グランドセイコー初のクオーツGMTとなった。Sport コレクションの3本(SBGN001、SBGN003、SBGN005)でデビューし、限定の SBGN001 は年差±5秒、800本限定で文字盤6時位置に金色の星を配した。39mm径、12.1mm厚、100m防水。GMT機能を加えながら、ベースキャリバーの基本姿勢を崩さないという9F の流儀がここでも貫かれた。

05

Cal. 9F85 と現在地

2020年、Cal. 9F85 が登場する。9F86 の独立時針機構を、GMT針なしの3針+日付モデルに展開した世代である。秒針を止めずに時針だけを動かせるため、年差±10秒の精度を維持したまま時差調整やサマータイム対応ができる。SBGP003 / 005 / 007(44GSケース)と SBGP009 / 011 / 013(40mmヘリテージケース)で展開され、Cal. 9F82 を搭載していた SBGV 系から世代交代した。

2025年11月にはチタンケースの SBGX357「Skyflake」とステンレスの SBGX265 が Heritage Collection に追加され、9F62 系も現役のまま新作の文脈に組み込まれている。グランドセイコーが2017年に独立ブランド化して以降、機械式とスプリングドライブの陰に置かれがちな印象もあるが、クオーツは依然として「日々の道具としての正確さ」を任される正規の選択肢であり続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

グランドセイコー クオーツの設計思想は、ひとつの問いから始まる。「機械式グランドセイコーの顔つきと使い心地を、クオーツの精度のなかにそのまま再現できるか」という問いである。

そのため Cal. 9F は、量産クオーツの一般的な解とは逆方向に設計されている。量産クオーツは精度をICとモーターの効率に頼り、針も文字盤も軽量化することで小さな電力で動かす。9F は逆に、機械式のような大きなトルクをまず確保し、太く重い針と存在感のあるインデックスを駆動できる土台を作った。Twin Pulse Control Motor が一度に大きな力を生み出し、Backlash Auto-Adjust Mechanism が秒針の到着を引き締め、インデックスとの位置関係に妥協を残さない。文字盤の縁まで届く秒針の長さは、この設計のもとで初めて可能になる。

意匠の継承も明確である。1967年の44GSで確立された「Grammar of Design」——平面で構成された多面ケース、ザラツ研磨による歪みのない鏡面、文字盤に対する針とインデックスの厳密な幾何学——は、SBGX、SBGP、SBGN を通じてそのまま生きている。日付窓の大きさ、針の幅、ロゴの位置に至るまで、機械式ラインと共通の設計言語が用いられる。文字盤を見ただけでクオーツか機械式かが即座に判別できない場面が多いのは、この一貫性の結果である。

工程の哲学も特徴的だ。9F は信州ウォッチ工房(長野県塩尻市)でふたりの熟練技術者により手組みされる。一方が日付機構を、他方がそれ以外を担当する。水晶振動子もセイコーが自社内で生育・選別し、約90日間にわたるエージングを経て、個体差を把握したうえで個別ICとペアリングされる。修理可能性も意識されており、金属パーツと厚いブリッジで構成された9F は、不具合があれば交換ではなく分解修理に回せる。「電池が切れたら捨てる消耗品」という量産クオーツの常識に、明確な距離を置いた工業哲学である。

派手さに頼らない自制も、このコレクションの一貫した態度である。ケース径は概ね37〜40mm、文字盤は読みやすさが最優先され、装飾は針とインデックスの稜線に集約される。クオーツであることを装飾的に主張せず、ただ「最も正確で、最もグランドセイコーらしい腕時計のひとつ」として静かに置かれる。これがグランドセイコー クオーツの設計言語である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1988-1997
Cal. 9581 / 9587
95GSの基幹、年差±10秒、3年電池寿命。
1993-現在
Cal. 9F61 / 9F62 / 9F82 / 9F83
9F系の基本、年差±10秒、ツインパルス制御モーター搭載。
2018-現在
Cal. 9F86
初のクォーツGMT、独立時針ジャンパー機構を新規開発。
2020-現在
Cal. 9F85
Cal.9F82後継、3針モデルに独立時針機構を移植。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1988-1997

初代GSクォーツ

95GS
Cal.9581搭載、年差±10秒の高精度機。復活Grand Seikoの起点。
1993-現在

9F系誕生・定着

SBGT SBGX SBGV系
「クォーツを超えるクォーツ」を標榜、年差±10秒の機械式同等トルク。
2018-現在

クォーツGMT誕生

SBGN系
Cal.9F86投入、独立時針機構で精度を保ったままGMT機能を実現。
2020-現在

9F85への刷新

SBGP系
Cal.9F82後継のCal.9F85、独立時針機構を3針モデルに展開。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 4 モデル

4 references in archive