設計思想
1. ブランド独立とともに登場した40mmチタン
2017年3月、バーゼルワールドでセイコー社はグランドセイコーをセイコーから切り離し、独立ブランドとして展開すると発表した。以後のグランドセイコーは、文字盤の12時位置にブランド名とロゴを置く。SBGV231はこの転換期に投入された9Fクォーツ40mm世代の一本である。
ムーブメントのCal.9F82は、標準機の9F62と同じ機能を持ちながら、大きなケースに合わせて一回り大きく作られたキャリバーである。40mmのケースは、ステンレス製のSBGV221・SBGV223・SBGV225などと同じケースコード(9F82-0AF0)を共有するとされる。SBGV231はこの40mm世代に、ブライトチタンという素材を組み合わせた派生として位置付けられる。
2. SBGV229・SBGV233との三本構成
SBGV231は単独で企画されたものではなく、銀文字盤のSBGV229、青文字盤のSBGV233と一括して発表された三本構成のうちの黒文字盤である。3本はケース・ブレスレット・ムーブメント・寸法をすべて共有し、文字盤色のみが異なる。同じ40mmのケースを持つステンレス製のSBGV221・SBGV223・SBGV225も並存しており、両系列は素材で住み分けられた。
ブライトチタンは、ステンレススチールより約30%軽く、傷や腐食に強い素材とされる。精度で完結していた9Fクォーツに、軽さという別の実用価値を重ねたのがこの3色であり、40mmへ広げた文字盤に合わせて針を長くし、インデックスの面取りを細かく改めて視認性も高めている。
3. 文字盤を支える9F82
太い針を確実に動かすのは、年差±10秒のCal.9F82である。毎秒2回のパルスで重い針を駆動するツインパルス制御モーター、ヒゲゼンマイのばね力で秒針のぶれを抑えるバックラッシュ・オートアジャスト機構、深夜0時に日付を瞬時に切り替える瞬間日送りを備え、信州時計工房で職人が手作業で組み上げる。
意匠分析
SBGV231のケース径は40mm、厚みは10mmで、ブレスレットを含む総重量は約85gという軽量に収まっている。同じ寸法をステンレス鋼で構成した姉妹系列のSBGV207などと比較すると、装着感は明確に変わる。グランドセイコーが「ブライトチタン」と呼ぶ独自素材は、ステンレスに近い光沢を持ちながらも、耐食性と耐傷性を高めた純チタンに近い合金とされ、金属アレルギーへの配慮もうたわれる。
ケースの基本形状は、1967年に田中太郎が設計した44GSに端を発するグランドセイコー・スタイルの系譜上にある。平面と平面の境界を直線的に立ち上げ、面ごとにザラツ研磨で歪みのない鏡面を作る手法は、軟質で研磨難度の高いチタンでも踏襲されている。
文字盤は黒のサンレイ仕上げで、中心から放射状に伸びる細い筋目が光の角度によって表情を変える。インデックスはバー型と短いドットの組合せ、針はダウフィーヌ型で、いずれも面取りされた切削仕上げが施される。インデックスと針の構成は、銀のSBGV229、青系のSBGV233と共通である。風防は内面無反射コーティングを施したデュアルカーブサファイアで、防水は日常生活用強化防水(10気圧)、耐磁性能も備える。
ブレスレットもブライトチタン製で、バックルにはワンプッシュ式の三つ折れクラスプを採用し、ラグ幅は20mm、ラグ先端間は46.8mmに設定される。ケース裏蓋は獅子の紋章をあしらったスクリューバックで、内部のCal.9F82を密閉する。
系譜と歴史
2017年、グランドセイコーはセイコーから独立したブランドとして再出発し、SBGV231はその年に発表された。銀文字盤のSBGV229、青系文字盤のSBGV233とともに、ブライトチタンのケースとブレスレットを持つ3色として展開された。3本はケース径40mm・厚さ10mm・100m防水という寸法と、9F82のムーブメントを共有し、文字盤の色だけが異なる。
生産期間中に文字盤やブレスレットの仕様変更が公表された記録は確認できない。ムーブメントのCal.9F82は、2018年に9F誕生25周年を記念した限定機SBGV238にも搭載された。
その後、時差修正機能を備えたCal.9F85を積むSBGPシリーズが登場し、9Fクォーツの選択肢は広がった。チタン製のSBGV229・SBGV231・SBGV233には直接の後継モデルが投入されないまま、生産を終えたとされる。具体的な終了年月は公式には公表されていない。同じ9F82を積むステンレス製の40mmモデル(SBGV221など)は、その後も公式サイトの9Fクォーツの一覧に掲載されている。
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。