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Eterna · Heritage

Vaughan Big Date Black

ETAを生んだ名門が2007年に放った自社開発回帰の第一作。レンズ型Cal.3030を宿す黒文字盤ドレス

ヴォーン ビッグデイト 7630.41.50.1186は、エターナが2007年に発表したドレスウォッチの黒文字盤ステンレス仕様である。42mmケースに、レンズ状の断面を持つ自社製自動巻Cal.3030を収め、3時位置に2枚ディスク式のビッグデイトを備える。ETAの母体でありながら長く外部ムーブメントに依存してきた同社が、自社開発へと回帰した最初の成果を体現する1本だ。サンレイ仕上げの黒文字盤と滑らかに湾曲したケースが、機構の独創性を静かに包み込んでいる。

Ref. 7630.41.50.1186
限定 通常生産
コレクション Heritage
カテゴリ ドレス
キャリバー 3030
ケース径 42 mm
防水 50 m
関連人物 ウルス・シルト
デイト ビッグデート
01 — Specification

仕様

As of WatchBase sync · 2026.06.12
このモデルを比較する
Case · ケース
素材 Stainless Steel
形状 Round
径 42 mm
ガラス Sapphire
裏蓋 Closed
防水 50 m
Movement · ムーブメント
キャリバー 3030
タイプ Automatic
振動数 28,800 bph
石数 24 石
パワーリザーブ 48 時間
Dial · 文字盤 / Hands · 針
文字盤色 Black
インデックス Stick / Dot
針 Dauphine
i — Editorial

設計思想

Design philosophy

ETAを生んだ名門の沈黙と回帰

エターナは1856年創業の老舗であり、1948年にボールベアリング式ローターを実用化した「エテルナマチック」で自動巻時計の歴史を塗り替えた存在である。ムーブメント製造部門が後のETAへと発展したことでも知られるが、20世紀後半の業界再編のなかで製造部門は切り離され、ブランド本体は長く外部調達ムーブメントに頼る時代が続いた。2000年代に入り機械式時計市場が回復すると、自社ムーブメントの有無がブランドの格を測る尺度として強く意識されるようになる。歴史的に「ムーブメントの名門」であったエターナにとって、この潮流は看過できないものだった。

Cal.3030という回答

2007年に登場したヴォーン ビッグデイトは、その回帰宣言として企画されたモデルである。搭載されるCal.3030は、ベストセラーとなった1960年代のCal.1504系統を範に、設計を全面的に見直した自動巻ムーブメントだ。最大の特徴は、両面が膨らんだレンズ状の断面形状にある。ビッグデイトの2枚ディスクも、一般的な平面ディスクの重ね合わせではなく、湾曲面に沿う同心リング構造として再構築された。エターナはこれを、ビッグデイト搭載自動巻として同クラス最薄と謳っている。主要部品の一部にはフォトリソグラフィー技術による高硬度のニッケル系合金が用いられ、耐久性と整備性の向上が図られた。

黒文字盤スチールという基準点

本Ref 7630.41.50.1186は、そのコレクションのなかで最も標準的な構成、すなわちステンレスケースに黒サンレイ文字盤を組み合わせた仕様である。同世代にはシルバー文字盤の7630.41.61.1185、18Kローズゴールドケースの7630.69.10.1185などが並び、本Refはラインの基準点として位置づけられる。派手な意匠を持たないが、レンズ型ムーブメントという機構上の主張をドレスウォッチの文法へ落とし込む役割を、最も純粋な形で担った1本といえる。

自社開発路線への布石として

Cal.3030はヴォーンだけで終わらず、2014年発表の1948 レガシー ビッグデイトにも展開された。さらにエターナはこの後、ボールベアリングを香箱に応用したスフェロドライブ機構や、モジュール設計のCal.39系へと自社開発を拡大していく。ヴォーン ビッグデイトは、その一連の流れの起点に立つモデルであり、ブランド再興の試みを語るうえで欠かせない参照点となっている。


ii — Editorial

意匠分析

Visual analysis

設計の出発点は、ムーブメントの断面形状にある。Cal.3030は両面が凸状に膨らんだレンズ型で、厚みは5mmを下回る。ケースはこの形状に呼応して縁の丸い柔らかな輪郭を持ち、文字盤もまた中央が盛り上がったコンベックス形状を採る。直径42mmという数字から想像されるより、実際の印象が穏やかなのはこのためである。公式発表におけるケース厚は9.3mmで、42mm径のビッグデイト搭載自動巻としては薄い部類に入る。

黒文字盤はサンレイ仕上げで、光の角度により黒から炭色まで表情を変える。インデックスはロジウム仕上げのバトン型、針は断面が矩形のドーフィネ型で、いずれも面の反射だけで視認性を確保する構成だ。3時位置のビッグデイトは外周リングが1の位、内側の小リングが10の位を受け持つ同心構造で、湾曲した文字盤面に窓が自然に収まる。日付はリュウズの回転で送る方式で、1回転につき2日分進む。

風防は両面無反射コーティングのサファイア。裏蓋もサファイアのシースルー仕様で、4本のビスで固定される。開口部からは、ペルラージュとコリマソンで装飾されたロジウム仕上げのブリッジ、コート・ド・ジュネーブを刻んだローターが見える。防水は50m防水で、ドレスウォッチとして必要十分な水準に留めた。本Refの末尾番号1186は黒アリゲーターストラップにフォールディングクラスプを組み合わせた仕様を示し、同じ黒文字盤でもステンレスブレスレット仕様は7630.41.50.1227として別Refが与えられている。


iii — Editorial

系譜と歴史

Lineage

ヴォーン ビッグデイトは2007年に発表された。同年3月末には欧州の時計専門メディアが新作として紹介しており、バーゼルワールドの時期に合わせた発表だったとみられる。当初の構成はステンレスまたは18Kローズゴールドのケースに、黒(アンスラサイト)またはシルバーの文字盤を組み合わせたもので、本Ref 7630.41.50.1186はこの初期ラインアップに属するステンレス×黒文字盤仕様である。

2008年秋には文字盤バリエーションが追加された。ステンレスケースにオフホワイト文字盤、ローズゴールドケースにアンスラサイト文字盤という新たな組み合わせで、ラインの幅が広げられている。また搭載ムーブメントのCal.3030を擁する本作は、ジュネーブ時計グランプリ(GPHG)への出品記録も残る。

2011年、エターナ自体が中国の時計グループ、チャイナ・ハイディアン(現シティチャンプ)の傘下に入るが、ヴォーンはその後もカタログに残り続けた。2014年にはCal.3030が1948 レガシー ビッグデイトへ展開され、本作で確立された機構が別ラインへ受け継がれている。エターナは2010年代後半以降、新作発表の頻度を大きく落としており、ヴォーン ビッグデイトの生産終了時期は公表されていない。公式オンラインショップには現在も製品ページが残るが、市場の流通は限られており、事実上の生産終了状態にあるとみられる。


Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Vaughan Big Date - Eterna 公式 · Eterna · 2026.08.15 閲覧 Eterna · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Eterna Granges 1856 Watch 専門メディア · aBlogtoWatch · 2026.08.15 閲覧 aBlogtoWatch · 2026.08.15