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CARTIER · SERIES

Clé de Cartier

クレ・ドゥ・カルティエ

リューズを鍵の形に変え、巻き上げという所作そのものを腕の上に呼び戻した、2015年生まれの新しいかたち

40 mm
01 — 概要 / SUMMARY

クレ・ドゥ・カルティエは、2015年にカルティエが発表した新しいケース形状の一族である。名の由来は、19世紀の時計を巻いた鍵を思わせる棒状のリューズ。失われた巻き上げの所作を腕時計へ移した点に最大の個性がある。ラウンドとトノーの中間にある柔らかなケースに、ギヨシェ文字盤と剣型針という伝統的な意匠を収めた。自社製のCal.1847 MCを核に、ミステリアスアワー、スケルトン、フライングトゥールビヨンといった高級時計版も派生した。タンクやサントスほどの定番には至らなかったが、その機械は今もカルティエ各シリーズを支えている。

02 — STORY · 物語

Clé de Cartier(クレ・ドゥ・カルティエ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

「かたちの時計師」の新しい一手

カルティエは自らを、機構ではなく「かたち」で語る時計師と任じてきた。1917年のタンク、1904年のサントス、2007年のバロン ブルー、2010年のカリブル。数年ごとに新しいケース形状を世に問い、それを定番へ育てる。この系譜の最新章として2015年のSIHHで発表されたのが、クレ・ドゥ・カルティエである。

「クレ(Clé)」はフランス語で「鍵」を意味する。発表の主役は文字盤でも複雑機構でもなく、鍵の形をしたリューズだった。ラウンドとトノーの中間に位置する柔らかなケースは、1960年代から70年代に流行した湾曲ケースを想起させる輪郭を持ちながら、細部の仕上げは現代のカルティエそのものである。

02

鍵という発想

リューズが時計に備わるのは、それほど古い話ではない。19世紀前半に巻き上げリューズが普及するまで、懐中時計や置き時計は別体の鍵で巻かれていた。クレのリューズは、その失われた所作を腕の上に呼び戻す試みである。

棒状のリューズはケース側面のガードに守られ、頂部にはサファイアのカボションが据えられる(スチール製は合成スピネル)。引き出して回すと縦か横の位置に節度感をもって収まり、時刻と日付を合わせる。古い時計の鍵を回すような触感を、カルティエは「新しい時計の所作」と表現した。一方で文字盤は、ギヨシェのフリンケ装飾、ブルースチールの剣型針、ブルーのローマ数字、そして数字に隠された「Cartier」の秘密の署名と、純然たるカルティエの語彙で構成される。

03

自社の心臓・Cal.1847 MC

クレには新しいムーブメントも与えられた。自社製自動巻のCal.1847 MCである。番号の1847は創業年に由来する。毎時28,800振動(4Hz)、両方向巻き上げ、テンプを両持ちのブリッジで支える安定志向の設計で、日付と中央秒針を備える。

この機械の役割は明快だった。量産モデルで用いてきたETAベースのキャリバーを置き換え、自社一貫生産へ歩を進めること。カルティエにとって最も入手しやすい自社製ムーブメントとして構想され、35mmと40mmのクレに搭載された(31mmは別の小型自動巻を用いる)。

04

ファインウォッチメイキングへの拡張

クレは単なる三針時計にとどまらなかった。発表の年の10月、香港のウォッチズ&ワンダーズで、ミステリー機構を備えたクレ・ドゥ・カルティエ ミステリアスアワー(Cal.9981 MC)が登場する。針が宙に浮くこの仕掛けは、1912年のミステリークロックに遡るカルティエの伝統を腕時計へ移したものとされる。

翌2016年のSIHHへ向けては、ブランド初の自動巻スケルトンを謳うクレ・ドゥ・カルティエ オートマティック スケルトン(Cal.9612 MC、Ref. WHCL0008)が控えていた。ローマ数字をかたどったブリッジが機械の骨格を成す。さらにジュネーブシール認定のフライングトゥールビヨン(Cal.9452 MC、Ref. HPI00933)も加わり、クレはカルティエの高級時計の意匠を映す器となった。

05

短い生涯と、残されたもの

野心的な船出に反し、クレはタンクやサントスのような定番には育たなかった。鋼や2トーンへ価格帯を広げたのち、2018年ごろにはカルティエの現行カタログから姿を消す。直接の後継も置かれていない。控えめな完成度ゆえに、自らをアイコンとして確立しきれなかったとも言われる。

ただし、クレが遺したものはかたちではなく機械にある。Cal.1847 MCはこの一族を超えて生き延び、現在はサントスやバロン ブルー、ロンドなど複数のコレクションを支える基幹キャリバーとなった。鍵のリューズは短い物語を終えたが、その心臓は今も時を刻み続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

クレ・ドゥ・カルティエの設計は、ひとつの大胆な発想と、それを包む徹底した保守性の対比の上に成り立つ。

大胆さは、言うまでもなくリューズにある。多くの時計が文字盤やケース形状に独自性を求めるなか、クレは巻き上げる道具そのものを意匠の中心へ据えた。棒状のリューズはケース右側面へ伸びるガードに抱かれ、外観上はケースと一体の造形をなす。サファイア、あるいは合成スピネルのカボションが頂部を飾り、装飾と操作系を兼ねる。このガードは保護機構であると同時に、視覚的なアンカーとしても働く。

一方、それ以外の要素はことごとくカルティエの伝統に忠実である。銀色のギヨシェ文字盤、ブルースチールの剣型針、ブルーのローマ数字、数字に潜む秘密の署名。これらはタンクやサントスから受け継がれた共通言語であり、クレはそれを新しいケースに移し替えたにすぎない。つまりクレの個性は、文字盤ではなくリューズという一点に賭けられている。

ケースの輪郭にも思想が表れる。ラウンドとトノーの中間に置かれた柔らかな曲線は、鋭い角を持たないことを是とする。その造形は1960年代から70年代の湾曲ケースを連想させるが、特定の旧作を写したものではない。手首に沿って湾曲したケースは装着感を優先し、視覚的にも触覚的にも角を排した。タンクの幾何学的な厳格さ、サントスの露出ビスによる工業性、バロン ブルーの球体的な丸みと並べると、クレはより中性的で、日常に溶ける佇まいを志向していた。男女を問わない3つのサイズ展開も、この性格の延長にある。

防水性能は30mにとどまる。これは道具ではなくドレスウォッチとしての自己規定であり、クレが追ったのは機能の頑強さではなく所作の優雅さだった。派手にしないという抑制が、この一族の設計を一貫して貫いている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2015-
Cal. 1847 MC
創業年に由来する入門級の自社製自動巻。35/40mm用。
2015
Cal. 9981 MC
針が浮くミステリアスアワー用のミステリー機構。
2015-2016
Cal. 9612 MC
ブランド初の自動巻スケルトン、数字型ブリッジ。
2016
Cal. 9452 MC
ジュネーブシール認定の手巻フライングトゥールビヨン。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2015

金無垢の初代モデル群

WGCL0006 ほか金無垢各種
白・赤・黄の金無垢で発表、Cal.1847 MC搭載の3サイズ展開。
2015

ミステリアスアワー版

WHCL0002 WHCL0003
ミステリー機構Cal.9981 MCで針が宙に浮く41mm版。
2015-2016

自動巻きスケルトン版

WHCL0008
Cal.9612 MCはブランド初の自動巻スケルトン機構。
2016

フライングトゥールビヨン

HPI00933
ジュネーブシール認定Cal.9452 MC、6時位置に搭載。
2016-2018

スチールと2トーン展開

WSCL0005 WSCL0007
鋼および鋼×ピンクゴールドへ拡張、終焉までの量産層。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive