設計思想
1. 2012年限定版が示した方向性
Cosmonauteは1962年5月24日、Scott CarpenterがMercury-Atlas 7でAurora 7カプセルに乗り地球を3周した際、彼の手首にあった特注Navitimerに起源を持つ。Carpenterは12時間表示では宇宙の昼夜サイクルが区別できないとして、Willy Breitlingに24時間表示・幅広ベゼル・伸縮ブレスレットというカスタム仕様を発注した。これがCosmonauteの始まりであり、以後数世代にわたり同シリーズはBreitlingのカタログに残り続けてきた。
2012年5月、Mercury-Atlas 7から50周年を迎えるにあたり、Breitlingは大幅な刷新を行う。Navitimer Cosmonaute 02 Limited Edition (Ref. AB021012/BB59) を1,962本限定で発表し、ケース径を43mmへ拡大、ムーブメントをBreitling自社製の手巻きクロノグラフCal. B02へ置き換えた。Cal. B02はB01自動巻きクロノグラフのアーキテクチャを継承しつつローターを取り除き、時針の回転比を24時間化したマニュファクチュール・キャリバーである。1960年代のVenus 178以来、Cosmonauteが再び手巻きへ戻った瞬間でもあった。
2. 通常カタログへの展開とAurora Blueの登場
限定版が完売したのち、Breitlingは43mmケースとCal. B02という基本構成をそのままに、通常カタログモデルとしてAB0210B4ファミリーを2014年頃に展開した。本Ref AB0210B4/C917/447Aはその中の一仕様であり、Aurora 7にちなむ「Aurora Blue」ダイヤル(C917)と、専用ステンレススチールブレス(447A)を組み合わせる。
限定版が黒文字盤一色だったのに対し、通常カタログ展開ではAurora Blueをはじめとする色違いの導入によって、Cosmonauteの宇宙ミッション継承を視覚言語として再定義した。同C917ダイヤルには青クロコレザー(731P)・青レザー(105X、732P)などのストラップ違いも並ぶが、447Aのスチールブレス仕様は中でもっとも道具的な印象を持つ。
3. 43mm世代の終焉
本Refを含む43mm Cosmonaute B02世代は、Cosmonauteの歴史上もっとも長く生産が継続した世代の一つとなった。2022年5月、Carpenter宇宙飛行60周年に合わせてBreitlingはNavitimer B02 Chronograph 41 Cosmonaute Limited Edition (Ref. PB02301A1B1A1) を362本限定で発表する。ケース径を41mmへ縮小し、プラチナ製ベゼルを採用する新世代の登場により、43mmケースのAB0210系は段階的に役目を終えた。本Refもこの過渡期に正規流通から離れていったと伝わる。
意匠分析
ケースは径43mm、厚さ13.85mm、ラグ幅22mmのポリッシュ仕上げステンレススチール。Navitimer全体に通底する細身のラグと幅広ベゼルの比率を保ちつつ、Cosmonaute系の歴代モデルの中ではもっとも大柄な世代に属する。ケース重量は単体で約81gとされ、本Refの専用ステンレススチールブレスを装着した状態では、レザーストラップを纏う兄弟Refとは明確に異なる重量配分を持つ。
ベゼルは両方向回転式で、内側と外側の二系統からなる航空計算尺(スライドルール)を刻む。標準のNavitimerより僅かに幅広に作られているのは、1962年にCarpenterが宇宙服のグローブをはめた状態でも操作できるよう要望した寸法を継承したものであり、現行Cosmonauteの設計言語上顕著な「Carpenter由来」の特徴である。
文字盤の色は「Aurora Blue」(C917)で、Aurora 7へのオマージュとして名付けられたと伝わる。深い青のサンレイ仕上げで、入射角度によって表情が変化する。インデックスはアラビア数字を中心とした24時間表記で、時針は文字盤を24時間で1周する。これは宇宙空間で昼夜の区別が困難な状況に対応するためのCarpenter由来の設計指示を継承したものである。針とインデックスにはSuper-LumiNova夜光が施される。
サブダイヤルはトリコンパクス配置で、9時にスモールセコンド、3時に30分積算計、6時に12時間積算計を配する。1962年の原器がフラットだったのに対し、本世代ではサブダイヤルが文字盤面から一段下げられたテクスチャー仕上げとなり、立体感を持たせている。12時位置にはNavitimer伝統のAOPAの翼ロゴ。日付窓は4時と5時の間に配される。
風防はドーム状サファイアで両面反射防止コーティング処理。リューズは押し込み式で、ねじ込み式ではない。ケースバックはスクリュー式のソリッド仕様。ブレスレットはCosmonaute B02専用設計のステンレススチール製で、ラグ取付幅22mm、ポリッシュ仕上げ。折り畳み式のディプロイマンクラスプを備える。
系譜と歴史
2012年5月24日、BreitlingはMercury-Atlas 7ミッションから50周年を迎えるにあたり、Navitimer Cosmonaute 02 Limited Edition (Ref. AB021012/BB59) を世界1,962本限定で発表した。これがCal. B02の初搭載モデルであり、ケース径も従来世代から43mmへ拡大された。発表イベントはMiami、New York、Houstonの3都市で開催され、Scott Carpenter本人もNew Yorkの式典に出席している。
2013年には派生としてCosmonaute Blacksteel Limited Edition (Ref. MB0210) が1,000本限定でBaselworldにて発表され、黒いカーボンコーティングを施したケースに同じCal. B02を組み合わせた。
2014年頃、Cosmonaute B02は限定版から通常カタログモデルへと展開された。AB0210B4ファミリーがその受け皿となり、Aurora 7にちなむ「Aurora Blue」と名付けられたサンレイ仕上げの青文字盤(C917)が追加された。本Refの「447A」は専用ステンレススチールブレスを示し、同C917ダイヤルには青クロコレザー(731P)、青レザー(732P、105X)、黒カーフ(435X)などのストラップ違いが並行して存在した。
Aurora Blueダイヤルを纏った本Refの仕様はおおよそ2014年から2022年頃まで生産が続いたとされる。2022年5月、Carpenter宇宙飛行60周年に合わせてBreitlingは新世代のNavitimer B02 Chronograph 41 Cosmonaute Limited Edition (Ref. PB02301A1B1A1) を362本限定で発表。ケース径を41mmへ縮小し、プラチナ製ベゼルを採用する新世代の登場により、43mmの旧世代AB0210系は段階的に役目を終えた。