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BREITLING · SERIES

Navitimer

ナビタイマー

回転計算尺をベゼルに組み込み、操縦席の航法計算をそのまま手首に載せたパイロット用クロノグラフ

43 mm
01 — 概要 / SUMMARY

ナビタイマーは、1952年にウィリー・ブライトリングが世に問うたパイロット用クロノグラフである。回転計算尺をベゼルに組み込み、燃料消費や対地速度、上昇率といった飛行計算を手首の上で完結させる「腕の上の計算機」として生まれた。1954年には世界最大の操縦士団体AOPAの公式時計に採用され、1962年には24時間表示のコスモノートがスコット・カーペンターとともに宇宙へ渡っている。現行はNavitimer B01 Chronograph、三針のNavitimer Automatic、そしてコスモノートの系譜へと枝分かれする。

02 — STORY · 物語

Navitimer(ナビタイマー)、これまでの軌跡

The story of this series
01

操縦席のための計算機

第二次大戦が終わり、民間航空が黄金期へ向かおうとしていた時代。操縦士は飛行計画や燃料消費、対地速度を、E6Bと呼ばれる円形計算尺を手にして算出していた。ブライトリングは1884年の創業以来、クロノグラフの独立プッシュボタンを段階的に確立し、1934年にはウィリー・ブライトリングが二つのボタンによる始動・停止と復針の分離を実現していた。その技術の延長線上で、1942年のクロノマットは数学者マルセル・ロベールの設計による回転計算尺ベゼルを備える。ウィリーはこの計算尺を航空計算へ特化させ、海里・キロメートル・法定マイルの換算を盤上で行えるよう仕立てた。こうして1952年、航法 (navigation) と計時 (timer) を組み合わせた名を持つナビタイマーが生まれた。

02

AOPAと初期のRef. 806

1954年、世界最大の操縦士団体である航空機所有者・操縦士協会 (AOPA) が、この時計を会員向けの公式時計として採用する。初期の文字盤にはAOPAの双翼エンブレムが置かれ、会員へ直接販売された。心臓部は、コラムホイールを備えた手巻クロノグラフのヴィーナス178。握りのためのビーズ状ベゼルと、視認性を最優先した黒文字盤が、最初期の姿であった。1956年頃からは一般市場へと販路を広げ、リファレンスはRef. 806として定着していく。1960年代半ばには、コントラストのサブダイヤル、鋸歯状ベゼル、そしてジェット時代を映すツインジェットのロゴが順に採用され、ナビタイマーの視覚言語がこの時期にほぼ固まった。

03

宇宙へ — コスモノートRef. 809

1962年、マーキュリー計画の宇宙飛行士スコット・カーペンターが、ウィリー・ブライトリングに一通の依頼を送る。軌道上で昼夜を見分けるため、文字盤を24時間表示にしたナビタイマーが欲しい、というものであった。同年5月24日、カーペンターはこの特注機を腕に、オーロラ7号 (マーキュリー・アトラス7号) で地球を3周する。これにより、ナビタイマーはスイス製腕時計として初めて宇宙を回ったとされる。なお、人類初の宇宙での腕時計使用は前年のソ連のシュトゥルマンスキーであり、ナビタイマーの記録はあくまでスイス製として初という位置づけである。帰還時、海水に浸かった個体は損傷し、ブライトリングが交換した。のちに市販されたコスモノートはRef. 809として知られ、航空に続く第二の物語を、宇宙という主題でこのシリーズに与えた。

04

自動巻クロノグラフ競争とクロノマチック

1969年は、自動巻クロノグラフの実現を巡って各陣営が競い合った年として記憶される。ブライトリングは、ホイヤー、ハミルトン・ビューレン、デュボア・デプラと組んだ連合の一員として、モジュール式のキャリバー11「クロノマチック」を世に出した。ビューレンのマイクロローター自動巻を土台に、デュボア・デプラのクロノグラフ機構を重ねたこの機械は、左側にリューズを置く独特の構成で知られる。これを積んだのが、48mmの大型ケース、いわゆる「ピザケース」をまとったNavitimer Chrono-Matic Ref. 1806である。手巻のみで歩んできたナビタイマーが、自動巻の時代へ足を踏み入れた転機であった。

05

消滅と再生 — シュナイダーの時代

安価で正確なクオーツが市場を覆い、機械式時計が時代遅れと見なされた1970年代。ブライトリングも例外ではなく、1978年には生産を停止する。翌1979年4月、健康を損なっていたウィリー・ブライトリングは、ブライトリングとナビタイマーの名称の権利を、シクラを率いていたエルネスト・シュナイダーへ譲渡した。ウィリーはその数週間後に世を去る。本拠をグレンヘンへ移したシュナイダーは、まずクオーツと新型モデルに注力し、1984年のクロノマットで機械式時計の復権に道を開いた。ナビタイマーが現役へ戻るのは1980年代半ばで、Ref. 81600や、初代の意匠を引き継ぎヴァルジュー7750を積んだ「オールド・ナビタイマー」がその役を担ったと伝わる。機械式時計が一度は姿を消しかけた時代を、このシリーズは生き延びた。

06

自社ムーブメントと現代

2009年、ブライトリングは自社初の自動巻クロノグラフ、キャリバー01 (B01) を発表する。コラムホイールと垂直クラッチを備え、約70時間のパワーリザーブを持つこの機械の開発は、外部からのムーブメント供給が細る環境への備えでもあった。2017年に最高経営責任者へ就いたジョルジュ・ケルンのもと、2022年にはシリーズ70周年の刷新が行われる。Navitimer B01 Chronograph 41・43・46の三つのサイズへ整理され、計算尺は薄く、ケースは磨き分けの仕上げをまとい、文字盤12時位置にはAOPAの双翼が戻った。現行のナビタイマーは、クロノグラフのB01系、三針のNavitimer Automatic、そして24時間表示を受け継ぐコスモノートの限定群へと枝分かれしている。操縦席の計算機として生まれた道具は、70年を経てなお、その顔を保ったまま現役にある。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

ナビタイマーの設計を貫くのは、文字盤の外周を一周する回転計算尺という一点である。対数目盛を刻んだ内外二重のリングは、クロノグラフの秒針と組み合わせることで、対地速度・飛行時間・燃料消費・距離換算を機械式の計算機として処理する。潜水時計が極限の単純化へ向かったのとは反対に、ナビタイマーは情報量の最大化を選んだ。三つのカウンター、計算尺の細かな数字、そのすべてを文字盤の上に並べ、道具であることを隠さない。これが設計思想の核にある。

その密度の中で視認性を保つための工夫が、世代を超えて受け継がれてきた。初期のビーズ状ベゼルは、革手袋をはめたまま計算尺を回すための握りであり、のちに鋸歯状へと姿を変えても、操作のための凹凸という役割は変わらない。黒い文字盤にコントラストのサブダイヤルを置く構成は、密集した盤面で各表示を読み分けるための判断であった。外周の計算尺リングは、視覚的にもこのシリーズの錨となり、ひと目でナビタイマーと知れる輪郭を作っている。文字盤上のロゴも、AOPAの双翼、ブライトリングの翼付きB、ジェット機を象ったツインジェットへと推移しながら、空との結びつきを示す記号であり続けた。

オメガのシーマスターやブランパンのフィフティ・ファゾムスが、潜水という用途のために要素を削ぎ落として輪郭を整えたのに対し、ナビタイマーは計算という用途のために要素を足し、計器そのものの顔を保った。ケース径やムーブメントが世代ごとに変わっても、外周を取り巻く計算尺と三つ目のレイアウトがある限り、それはナビタイマーと知れる。2022年の刷新が、計算尺を薄く整えケースを磨き分けながらも、この基本構成にはほとんど手を入れなかったのは、変えてはならない一点がどこにあるかを示している。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1952-1970頃
Cal. ヴィーナス178 系
手巻・コラムホイール。一部にヴァルジュー72併用。
1969-1970s
Cal. 11 / 12「クロノマチック」
モジュール式の自動巻。左リューズが特徴。
1985-2009
ヴァルジュー / ETA 7750 系
復活後に採用した調達自動巻クロノ。
2009-現在
自社製 Cal. 01 (B01)
コラムホイールと垂直クラッチ。約70時間。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1952-1955

AOPA向け初代モデル

806 (AOPA)
回転計算尺と手巻ヴィーナス178を備えたAOPA向け初代。
1956-1968

Ref. 806確立期

806
一般販売へ移行し、ツインジェットとコントラスト盤が定着。
1969-1970s

自動巻クロノマチック

1806
自動巻キャリバー11と48mmの大型ケースを採用した世代。
1986-2000s

オールド・ナビタイマー

81600 ほか
クオーツ危機後に復活、自動巻ヴァルジュー7750を搭載。
2009-2021

自社製キャリバー01世代

Navitimer 01
自社初の自動巻クロノ、キャリバー01を初めて搭載。
2022-現在

70周年記念の刷新世代

Navitimer B01 41 43 46
三サイズへ整理し、計算尺とAOPA双翼を再構成した現行。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive