設計思想
Cal.B02と5代目コスモノートの誕生
2012年、Breitlingは Scott Carpenter 搭乗による1962年5月24日の Mercury-Atlas 7 飛行から50年の節目を迎えた。これを記念して投入されたのが、自社製手巻きクロノグラフ Cal.B02 を初めて搭載した5代目コスモノート Ref. AB021012/BB59 である。1,962本限定で、4代目までの41.5mmから43mmへとケース径が拡大された世代刷新となった。
Cal.B02 は、2009年に発表された自社初の自動巻きクロノグラフ B01 を母体とする手巻き派生で、コラムホイールとバーティカルクラッチを採用し、70時間のパワーリザーブ、毎時28,800振動 (4Hz)、COSCクロノメーター認定を備える。コスモノート固有の24時間表示は、時針が通常の半分の速度で文字盤を1周する独自のギア比で実現される。
標準生産仕様への展開とオーロラブルー文字盤
50周年記念限定モデルおよび2013年のブラックスチール限定版(Ref. MB0210B6)の後、Breitlingは同じCal.B02プラットフォームを非限定の標準生産モデルとして継続した。本機 AB0210B4 はその系譜に位置し、文字盤色によって2系統に分化する。サフィックス BC36 がブラック、C917 が本機の採用するオーロラブルーである。
「オーロラブルー」という色名は、カーペンターの搭乗船 Aurora 7 を直接想起させる命名であり、宇宙飛行由来のモデル史を文字盤色で受け継ぐ意図が読み取れる。50周年記念限定モデルがブラック文字盤にシルバーサブダイヤルというコントラストの強い構成を採ったのに対し、本機 C917 系のオーロラブルー文字盤は同色のサブダイヤルを組み合わせており、より均質で穏当な視覚印象に振った構成となっている。
41mm世代への移行と43mm期の終焉
2022年、コスモノート初宇宙到達60周年の節目に、Breitlingは6代目となる41mm版コスモノート(PB02301系)を発表した。プラチナベゼルを備えた362本限定で、AOPAウィングスロゴ、6時位置デート窓、サファイアシースルーバックといった原典回帰の要素を盛り込んでいる。これにより5代目の43mm系は事実上の役目を終え、AB0210B4 を含む43mm期の生産は2023年頃に終焉を迎えたと伝わる。
意匠分析
ケースとプロポーション
43mmステンレススチールケースは、4代目ETA時代(Ref. A22322系)の41.5mmから1.5mm拡大された寸法を採る。一方で厚さは13.85mmと、4代目の14.4mmから薄型化されている。これは自動巻きローターを持たない手巻きCal.B02への移行による恩恵である。ラグ幅は22mmで、本仕様 433X はカーフレザーストラップとタングバックルの組み合わせを採る。
文字盤とハンド
オーロラブルー文字盤は、同系色の3つのサブダイヤルを配する。3時にクロノグラフ30分積算計、6時に12時間積算計、9時にスモールセコンドを配置し、デート窓は4時30分位置に開く。デートのフォントはセリフ体で、サンセリフ体を採用する4代目ETA時代との世代の見分けポイントとなる。アラビア数字インデックスはルミノヴァ塗布、針はポリッシュ仕上げのスチール製で同じく夜光を備える。12時位置にはBreitlingの「Winged-B」ロゴが立体的に貼り付けられる。現行6代目が原典準拠のAOPAウィングスロゴへ回帰したのとは対照的に、本機は1990年代以降のBreitlingアイデンティティを引き継いだ意匠である。
ベゼル、ケースバック、ムーブメント
ベゼルは双方向回転式のスライドルール(計算尺)で、エッジに鋸歯状のローレットが施される。ソリッドケースバックには、カーペンターが搭乗した Aurora 7 カプセルの紋章が刻印される。Cal.B02 はコラムホイール式・バーティカルクラッチ式のクロノグラフ機構を有し、39石、4Hz、70時間パワーリザーブを備える。手巻きという選択は、無重力下での自動巻きローターの挙動を回避するという1962年オリジナル機の設計思想を踏襲したものである。
系譜と歴史
5代目コスモノート系列の出発点となったのは、2012年5月、Scott Carpenter の Mercury-Atlas 7 飛行から50年の節目に発表された Ref. AB021012/BB59 である。1,962本限定で、自社製手巻き Cal.B02 を初搭載した世代刷新モデルとなった。続く2013年には、PVDコート仕様の Ref. MB0210B6 が1,000本限定のブラックスチール版として加わり、43mm期コスモノートで唯一のブラックスチール仕様として位置づけられる。
これら限定モデルに続き、Breitlingは同プラットフォームを用いた非限定の標準生産モデル AB0210B4 系を展開する。本機 AB0210B4.C917.433X はオーロラブルー文字盤・カーフレザーストラップの構成で、米国向け流通記録では2014年8月から確認されている。ブラック文字盤の BC36 系および各種ストラップ・ブレス違いも並行して供給された。
2022年5月、コスモノート初宇宙到達60周年に合わせて Breitling は6代目となる41mm版 PB02301系 を発表し、43mm期の役割は終焉へ向かう。AB0210B4 系を含む5代目の生産は2023年頃に終了したと伝わる。