クロノマットの名と、1984年の原点
「クロノマット」の名は新しいものではない。1940年代、ブライトリングは計算尺ベゼルを備えたクロノグラフにこの名を与えた。当初は数学者のためのクロノグラフを意味する造語だったと伝わる。1942年にはRef. 769として市販されている。しかし戦後はナビタイマーの影に隠れ、1970年代の終わりには一度生産が途絶えた。
名が再び表舞台へ戻るのは1980年代である。当時のオーナー、アーネスト・シュナイダーの下で、イタリア空軍のアクロバット飛行隊「フレッチェ・トリコローリ」向けの機械式クロノグラフが開発された。コクピットのキャノピー開閉で風防が傷つくという操縦士特有の悩みに応えるため、風防をベゼルへ落とし込み、四つの突起「ライダータブ」で守る設計が採られた。1984年、創業100周年に合わせてRef. 81950として一般発売されたこの一本が、現在まで続くクロノマットの意匠の原点である。ケース径は当時として大ぶりの39mm、玉ねぎ型のリューズ、そして筒状リンクを連ねたルーローブレスレット。クォーツが市場を席巻するさなかに機械式で勝負したこの時計は、ブライトリング再建の足がかりとなったとされる。