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BREITLING · SERIES

Chronomat 32

クロノマット32

1984年の操縦士用クロノグラフの顔を、女性のための32mmクォーツへ受け継いだシリーズ

01 — 概要 / SUMMARY

クロノマット32は、ブライトリングが2020年に発表した、女性のための小径クォーツウォッチである。1984年のクロノマットが確立したライダータブとルーローブレスレットの意匠を、直径32mmのケースへ落とし込んだ。心臓部はCOSC認定のスーパークォーツ「キャリバー77」。ステンレス、バイカラー、18Kレッドゴールドに加え、ダイヤモンドを配した装飾性の高い構成も揃う。男性的と見られてきたクロノマットの語彙を、日常使いの一本へと開いた系譜に位置する。

02 — STORY · 物語

Chronomat 32(クロノマット32)、これまでの軌跡

The story of this series
01

クロノマットの名と、1984年の原点

「クロノマット」の名は新しいものではない。1940年代、ブライトリングは計算尺ベゼルを備えたクロノグラフにこの名を与えた。「数学のためのクロノグラフ」を意味する名で、1940年の特許に基づき1941年に広告され、1942年には一般に出回ったとみられる。しかし戦後はナビタイマーの影に隠れ、1970年代の終わりには一度生産が途絶えた。

名が再び表舞台へ戻るのは1980年代である。当時のオーナー、アーネスト・シュナイダーの下で、イタリア空軍のアクロバット飛行隊「フレッチェ・トリコローリ」向けの機械式クロノグラフが開発された。1983年、青い文字盤に、四つの突起「ライダータブ」を持つ回転ベゼルと、筒状リンクを連ねたルーローブレスレットを備えたフレッチェ・トリコローリのモデルが披露される。ライダータブは風防を守り、ベゼルを操作しやすくする役も担った。翌1984年、創業100周年に合わせて一般発売されたクロノマット(Ref. 81950とされる)が、現在まで続くクロノマットの意匠の原点である。クォーツが市場を席巻するさなかに機械式で勝負したこの時計は、ブライトリング再建の足がかりとなったとされる。

02

2020年、初の女性専用クロノマット

ジョルジュ・ケーン体制下のブライトリングは、2020年にクロノマットを刷新する。まず4月に42mmの「B01 42」で1984年版の意匠を呼び戻し、同年10月、初めて女性に向けたクロノマットを投入した。自動巻きの「クロノマット オートマチック36」と、クォーツの「クロノマット32」である。発表に際してブライトリングは、シャーリーズ・セロン、ミスティ・コープランド、ヤオ・チェンからなる「スポットライト・スクワッド」を起用し、目的と行動とスタイルをもつ女性像を前面に置いた。クロノマットという名は長く男性的な道具時計と結びついてきたが、その語彙を女性に向けて開く試みが、ここで初めて公式に行われた。36mmと32mmは単なる大小ではなく、機械式とクォーツという中身の違いで性格を分けている。

03

なぜクォーツだったのか

ここに一つの逆説がある。1984年のクロノマットは、クォーツの時代にあえて機械式を選んだ時計だった。その意匠を継ぐ32mmは、逆にクォーツを選んでいる。搭載するキャリバー77は、温度変化を補正する機構を備えたスーパークォーツであり、COSC(スイス公式クロノメーター検査機関)の認定を受ける。一般的なクォーツの約10倍とされる精度を持ち、電池寿命は3〜4年とされる。日々身につけ、巻き上げを気にせず正確に時を刻むという、実用へ振り切った選択が、このシリーズの性格を決めている。意匠は道具時計から借りながら、中身は手間のかからない日常の道具に徹したのである。

04

32mmという解

ブライトリングは1940年代から女性向けの時計を手がけてきた。近年もナビタイマー35・38やスーパーオーシャン36が女性向けに作られている。クロノマット32は、ブランドの顔であるクロノマットの語彙を小径へ落とし込む役割を担った。直径32mm、厚さ8.54mm、ラグtoラグ39.4mm、100m防水。男性用の42mmと同じ意匠を、女性の手首にも自然に収まる寸法へ再構成している。道具としての装備は引き算され、見た目の記憶が選び取られた。

05

拡張と現在

発表後、クロノマット32はダイヤルの色数と素材を広げていく。白とミッドナイトブルーに始まり、グリーンの文字盤やダイヤモンドを配した構成、バイカラーや18Kレッドゴールドが加わった。一方、2026年5月にはクロノマットの機械式ライン(B01 42、新設のB31 Automatic 40、Automatic 36)が、ラグを隠した完全一体型のケースとブレスレットへと再設計された。32mmはこの刷新には加わらず、クォーツの選択肢として2020年の構成を保ったまま併走している。意匠を共有しながら中身で住み分けるという2020年の発想は、現在もこのシリーズの立ち位置を支えている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

クロノマット32の設計は、機械式の道具時計の顔をいかに小径のクォーツへ翻訳するか、という主題に貫かれている。受け継いだのは形であり、機能ではない。

最も象徴的なのがベゼルのライダータブである。1984年の原型では、15分と45分の突起を入れ替えることでカウントアップとカウントダウンを切り替える、計時のための装置だった。32mmではタブは計時の道具としての役を負わない。残されたのは、風防を保護し、文字盤に視覚的なリズムを与える造形としての役割である。道具の記号を装飾の記号へ読み替えた判断と言える。

ルーローブレスレットも同じ論理で扱われている。筒状のリンクを連ねた独特の手触りはそのままに、32mmのケースへ合わせて寸法が整えられ、バタフライクラスプでまとめられた。玉ねぎ型のリューズ、短く尖ったラグ、ケースとブレスレットの連続感。いずれもクロノマットを一目でそれと分からせる手がかりであり、サイズが変わっても崩されていない。直径32mmという寸法は、手首の上で過度に主張せず、袖口にも収まる。

視認性への姿勢も一貫している。針とインデックスにはスーパールミノヴァが置かれ、両面に無反射コーティングを施したサファイアクリスタルが文字盤を覆う。日付も控えめに収められている。ダイヤモンドを配した華やかな仕様であっても、時刻を読むという基本は手放していない。

同時代の女性向けスポーツウォッチが装飾へ傾きがちななかで、クロノマット32は派手にしすぎないという抑制を保っている。道具時計の記憶を引き受けながら、性別の枠に寄りかからない。その抑制の効いた輪郭こそが、サイズと中身が変わっても残された、このシリーズの設計思想である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2020-現在
Cal. 77 (B77)
温度補正型スーパークォーツ。COSC認定の高精度。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1942

クロノマット、名の起源

Chronomat(1942)
計算尺ベゼルのクロノグラフ。「クロノマット」の名が初めて与えられた。
1983-1984

ライダータブ意匠の確立

81950
1983年のフレッチェ・トリコローリと1984年の創業100周年版。
2020-現在

現代版クロノマットの再起動

Chronomat B01 42
ケーン体制が1984年の意匠を復活させた現行クロノマットの起点。
2020-現在

初代クロノマット32

Chronomat 32
初の女性専用・スーパークォーツ。本シリーズの誕生にあたる。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

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