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BREGUET · SERIES

Tradition

トラディション

18世紀の懐中時計の機構を文字盤側へ反転させ、動力の流れを意匠に変えたブレゲの現代的代表作

40 mm – 41 mm
01 — 概要 / SUMMARY

2005年にブレゲが発表したトラディションは、創業者アブラアン-ルイ・ブレゲが18世紀末に手がけた予約販売(souscription)懐中時計の機構を、文字盤側へ反転させて見せる腕時計の系譜である。中央に据えた香箱から弧を描く輪列と調速機構が、そのまま文字盤の意匠となる。手巻で時分とパワーリザーブを示す原型から、フュゼ&チェーン・トゥールビヨンの7047、二つの輪列を持つ独立クロノグラフの7077、自動巻でレトログラード秒を備える7097や7037へと枝分かれしてきた。歴史的な機構を現代の素材と技術で再構築した、ブレゲ復興期を象徴する一作である。

02 — STORY · 物語

Tradition(トラディション)、これまでの軌跡

The story of this series
01

懐中時計の機構を腕に移す

トラディションの源流は、創業者アブラアン-ルイ・ブレゲが18世紀末に手がけた予約販売(souscription)懐中時計にある。1796年に構想され、翌1797年から売り出されたこの時計は、購入者が代金の四分の一を前払いする「予約(souscription)」方式で販売された。機構は簡素で、中央に大きな香箱を据え、その周囲に輪列と調速機構を左右対称に配する。三角形の段状ブリッジ、温度補正を施したひげぜんまい、回転式ルビーシリンダー脱進機、そして軸を衝撃から守るパラシュート(pare-chute)装置。装飾より構造の合理を優先したこの設計が、二百年後のトラディションの出発点となる。

スウォッチグループのもとで現代の復興を進めていたブレゲは、過去の名作を外装ごと再現するのではなく、その「機構」を主役に据える道を選んだ。souscription時計のムーブメントを上下反転させ、本来は文字盤裏に隠れる動力の経路を、文字盤側に開いて見せる——それがトラディションの着想である。

02

2005年、Ref. 7027という出発点

2005年に発表されたRef. 7027は、ケース径37mm、手巻のCal. 507DRを収める。機能は時分表示とパワーリザーブのみと簡素だが、その配置がすべてを決めた。中央の香箱、4時から8時へ弧を描く輪列と調速機構、そして12時寄りに置かれた小さな文字盤。動く部品を文字盤側に露出させた現代の腕時計は、これが最初とされる。

文字盤裏を透かして見せる従来のスケルトンとは異なり、トラディションは初めから「正面から読む機構」として設計された。ギヨシェを施した銀色のサブダイヤル、青焼きのブレゲ針、5本スポークの歯車、パラシュートを思わせる耐衝撃装置。これらが左右対称の構図にまとまり、ひと目でトラディションとわかる顔を成立させた。のちに同じ意匠を40mmケースへ拡大したRef. 7057が加わる。

03

複雑機構への枝分かれ

7027が確立した設計言語は、複雑機構を載せる器としても機能した。2000年代後半には、フュゼ&チェーン機構とトゥールビヨンを組み合わせたRef. 7047が登場する。手巻のCal. 569は、香箱の力を鎖と円錐で平準化するフュゼ&チェーンで定力を供給し、チタン製テンプとシリコン製ひげぜんまいを備える。毎時18,000振動(2.5Hz)、約50時間のパワーリザーブを、950プラチナの41mmケースに収める。

同時期には、第2時間帯と昼夜表示を加えたGMTのRef. 7067も加わった。手巻のCal. 507DRFが、トラディション特有の対称構図を保ったまま機能を拡張している。シリーズは、簡素な時計から高級複雑時計までを同じ文法で語る一族へと広がっていった。

04

2015年、自動巻とレトログラード秒

転機は2015年のバーゼルワールドに訪れる。Ref. 7097(Tradition Automatique Seconde Rétrograde)は、自動巻のCal. 505SR1を採用し、10時付近にレトログラード(瞬間復帰)秒を備えた。ローターはブレゲが手がけた初期の自動巻「ペルペチュエル」の意匠を借りている。

同年には、二つの独立した輪列を持つRef. 7077(Tradition Chronographe Indépendant)も発表された。時刻表示用の輪列(3Hz)とクロノグラフ用の輪列(5Hz)を分け、計測の起動が時刻精度を乱さない構成とした。クロノグラフの動力は、リセット操作時に板バネへ蓄える独自方式である。のちにレトログラード日付のRef. 7597(Cal. 505Q)も加わり、レトログラード表示はトラディションを象徴する機構となった。

05

250年の節目と現在地

2025年、ブレゲは創業250年を記念し、自社開発の合金「ブレゲゴールド」を用いた38mmのRef. 7035(Seconde Rétrograde)を250本限定で発表した。

翌2026年には、コレクション全体が見直される。発表以来の手巻ベーシック機である7027と7057が整理され、現行の主軸はレトログラード秒のモデル——38mmの7037、37mmの7038、40mmの7097——へと移った。文字盤の多くはグランフー琺瑯となり、ローマ数字に代えてアラビア数字を採る個体も増え、ラバーストラップなど現代的な要素が加わっている。GMTの7067には緑のグラデーション琺瑯が用いられた。

文字盤側に機構を開くという発想は、その後の独立時計師たちにも影響を与えたと評される。18世紀の懐中時計に発した一つの構図が、現代の機械式時計の語彙として定着している。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

トラディションの設計を一言で表せば、「機構そのものを文字盤にする」ことである。既存のムーブメントを削って透かすスケルトンとは出発点が異なり、正面から読まれることを前提に新たな機構が設計された。隠すべきものを隠さず、動力の経路を意匠として提示する点に、このシリーズの核がある。

構図はsouscription懐中時計から受け継いだ。中央に香箱を置き、輪列と調速機構が4時から8時へ弧を描き、12時寄りに小さな時刻表示用の文字盤を配する。左右対称のこのレイアウトが、トラディションの「顔」である。複雑機構を載せても、トゥールビヨンやクロノグラフはこの対称構図の中に組み込まれ、シリーズ全体の視覚的な一貫性が保たれる。20年を経ても識別できるのは、個々のスペックではなく、この構図が変わらないからである。

外装にはブレゲの伝統的な意匠が貫かれる。細かくフルート加工したケースサイド、溶接された直線的なラグとネジ留めのバー、先端を抜いたブレゲ針、ギヨシェ彫りのサブダイヤル、隠し署名と個別のシリアル番号。防水は30mにとどまり、これが道具ではなく正装の時計であることを示している。

変わったのは素材と仕上げである。ひげぜんまいや脱進機の一部にシリコンを採用し、ムーブメントにはアントラサイトやチャコールの被膜、近年はグランフー琺瑯のサブダイヤルや色彩の導入が進む。ただし時刻表示は一貫して小さく控えめで、露出した機構の複雑さに対し、読み取りの中心はあえて抑制されている。同時代にはグラスヒュッテ・オリジナルのパノインバースなども機構を文字盤側に見せたが、souscriptionの構図を起点に据える点でトラディションの輪郭は明確である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2005-
Cal. 507系
手巻の基幹機。時分+パワーリザーブとGMT版を展開。
2008頃-
Cal. 569
フュゼ&チェーンの手巻トゥールビヨン。シリコン部品を採用。
2015-
Cal. 580DR
二つの独立輪列を持つ手巻の独立クロノグラフ。
2015-
Cal. 505系
自動巻。レトログラード秒/日付の現行主力機。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2005-2015

初代トラディション

7027
37mm手巻。ムーブメントを文字盤側へ開いた最初の現代腕時計。
2008頃-

トゥールビヨン

7047
フュゼ&チェーン定力機構を備える手巻トゥールビヨンの旗艦。
2010頃-

40mm化とGMT

7057 7067
ケースを40mmに拡大し、第2時間帯のGMTへ展開した手巻群。
2015-

自動巻と独立クロノ

7097 7077
自動巻のレトログラード秒と、独立クロノグラフを追加。
2025

創業250年記念

7035
創業250年を記念したブレゲゴールドの限定モデル。
2026-

レトログラード秒中心へ

7037 7038
手巻初代を整理し、グランフー琺瑯のレトログラード秒を主軸に。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive