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BREGUET · SERIES

Pilot

タイプ XX

1954年のフランス軍用仕様に発し、フライバックを核として発展した、航空クロノグラフの系譜。

39 mm
01 — 概要 / SUMMARY

タイプ XX は、1954年にフランス空軍の軍用仕様 Type 20 に応えてブレゲが供給した、フライバックを備えるパイロット・クロノグラフの系譜である。黒文字盤に大型の夜光数字、双方向回転ベゼル、一押しで計時をやり直せるフライバック。航法の道具として設計された軍用 Type 20 と、その民間版 Type XX を起点とする。1995年の Aéronavale(Ref. 3800)で自動巻として復活し、大型の Type XXI・Type XXII へ枝分かれした。2023年には自社製キャリバーを積む第4世代(Ref. 2057 / 2067)が登場し、2025年の250周年には原点回帰の38.3mm手巻Ref. 2075 が加わった。

02 — STORY · 物語

Pilot(タイプ XX)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1954年、空のための仕様

第二次大戦後、フランス国防省は手持ちの軍用クロノグラフの多くを米英からの供給に頼っており、その補充が課題となっていた。1950年代初頭、空軍と海軍航空隊のために統一仕様のクロノグラフ腕時計が起草される。コードネームは Type 20。黒文字盤に夜光数字と夜光針、圧力や加速度の変化に耐える機械、双方向回転ベゼル、そして最重要の要件としてフライバック(retour en vol)機能。日に8秒以内の精度や35時間以上のパワーリザーブも条件に含まれたと伝わる。

この仕様は単一のブランドに発注されたのではない。Breguet のほか Dodane、Auricoste、Vixa、Airain など複数の製造者が Type 20 を供給した。ブレゲは1952年に試作を提出し、1953年に航空技術部門(STAé)の承認を得たとされる。1954年、フランス空軍向けの量産が始まる。航空に深い縁を持つメゾンにとって、これは自然な参入であった。創業者アブラアム-ルイ・ブレゲの血を引くルイ・ブレゲ(1880–1955)は、20世紀初頭から航空機製造に身を投じ、エールフランスの設立にも関わった人物である。

02

軍の時計から民間の Type XX へ

ブレゲの帳簿では、軍用モデルを Type 20、民間モデルを Type XX と区別して記す。アラビア数字をローマ数字に置き換えたこの呼称が、二つの系統を分けた。軍用 Type 20 は1955年から1959年にかけて空軍へ、1960年からは海軍航空隊へ納入され、いずれも国家の所有物として管理された。初期の軍用個体は文字盤にブレゲの銘すら持たない、純然たる計器であった。

1955年には金無垢ケースの民間 Type XX が3本だけ作られている。航空用の時計が鋼ではなく金で仕立てられたのは異例であった。1958年、海軍航空隊は出撃前の機体点検に合わせ、30分計を15分計へ改めるよう求める。機能が文字盤の構成を決めていく時代であった。なお Type XX No. 519 は、ベトナム最後の皇帝バオ・ダイが入手したと伝わる。

03

沈黙と復活 — Ref. 3800

1980年代初頭、Type 20 の生産は途絶える。整備や修理の負担が重くなり、軍は仕様を更新した Type 21 へ移行していた。ブレゲの航空時計はいったん歴史の表舞台から姿を消す。

復活は1995年であった。Type XX Aéronavale(Ref. 3800)は、原型の寸法と意匠をほぼ保ったまま、初めて自動巻機構を載せて現れた。心臓はキャリバー582。レマニア1350をベースに自社でフライバック機構を組み込んだもので、毎時28,800振動(4Hz)で時を刻む。直径は約39mm、黒文字盤に大型の夜光数字という基本は変わらない。新たに加わったのが、ケース側面のフルート装飾である。同年には日付窓を備える Type XX Transatlantique(Ref. 3820)も登場した。3800系は世代を越えて支持され、2018年頃まで生産が続いた。

04

Type XXI と Type XXII — 拡張の時代

1999年、ブレゲはスウォッチ・グループの傘下に入る。新体制は Type XX の美学を大きく崩さぬまま、より現代的なスポーツ・クロノグラフへと系列を広げた。

2004年、Type 20 誕生から50年の節目に Type XXI(Ref. 3810)が発表される。ケースは42mmへ大型化し、キャリバー584Qは中央へ伸びるクロノグラフ分針を備えた。文字盤には「Retour en vol」の文字が記される。2010年には Type XXII(Ref. 3880)が続く。44mmケースに第2時間帯とフライバックを収め、シリコン製の脱進機と平ヒゲぜんまいによって毎時72,000振動(10Hz)という高振動を実現した。クロノグラフ秒針は30秒で文字盤を一周する。なお Type XXI・Type XXII の呼称は、フランス軍の Type 21 仕様とは直接の関係を持たない。

05

2023年、自社製への到達

2023年、ブレゲは4年の開発を経た新世代を投入する。軍用に着想した Type 20 Chronographe(Ref. 2057、2カウンター)と、民間に倣う Type XX Chronographe(Ref. 2067、3カウンター)の二本立てである。直径は42mm。新設計のキャリバー728/7281はコラムホイールと垂直クラッチを持ち、シリコン製の脱進部品を採り、毎時36,000振動(5Hz)で60時間を駆動する。立体的に削り出されたラグや対比的な面処理は、それまでのパイロット・クロノグラフより明らかに仕上げの密度を増していた。一方で42mmという径や文字盤上の日付には、原型の小ぶりな手巻を望む愛好家から戸惑いの声もあった。

06

原点への回帰 — Ref. 2075 と250周年

2025年、メゾン創業250周年を機に、ブレゲは原点へ近づく一手を打つ。Type XX Chronographe(Ref. 2075)は、1955年の金無垢民間 Type XX を範に、当時と同じ直径38.3mmで手巻へ回帰した。ケースは銀・銅・パラジウムを加えた独自合金「ブレゲ・ゴールド」で、30分計のフライバック・クロノグラフを収める。裏蓋には、1930年にコスト=ベロンテがブレゲ19型機「ポワン・ダンテロガシオン」でパリからニューヨークへ飛んだ航跡が手彫りで描かれる。発表の地がニューヨークであったのも、この大西洋横断飛行に由来する。航空機製造者ルイ・ブレゲが世を去った1955年から70年——系譜は再び、その原点に触れている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

タイプ XX を貫く設計の核は、フライバック(retour en vol)にある。通常のクロノグラフで計時をやり直すには停止・帰零・再始動の三動作を要するが、フライバックは一押しで針を瞬時にゼロへ戻し、同時に新たな計測を始める。航法の現場では針路を変えるたびに区間時間を計り直す必要があり、操作を一動作に縮めることは操縦そのものへ集中する余地を生んだ。1954年の軍用仕様が最も重視したのはこの機能であり、以後すべての世代に受け継がれている。

視認性も一貫した規範である。黒文字盤に大型の夜光アラビア数字、太い夜光針、双方向回転ベゼル。グローブをはめた手でも扱えるよう、洋梨形(オニオン型)の大きなリューズと突き出したプッシャーが与えられた。いずれも装飾ではなく、計器としての要件から導かれた形である。

文字盤の構成には軍用と民間の二つの語法がある。軍用 Type 20 は3時・9時に置く2カウンターのバイコンパックスを基本とし、民間 Type XX は3カウンターのトリコンパックスを採ることが多い。1958年に海軍航空隊が30分計を15分計へ改めるよう求めたのは、出撃前の機体点検に要する時間に合わせるためで、機能が意匠を決めた一例である。

ケースの意匠で象徴的なのは、側面のフルート(コインエッジ)装飾である。1995年の Ref. 3800 で初めて加えられ、以後この系列の視覚的な署名となった。クラシックなブレゲのケースに通じる細工を道具時計に持ち込むことで、軍用の質実さとメゾンの作法が一本の線で結ばれている。

タイプ XX はブレゲ固有の発明ではない。同じ Type 20 仕様には Dodane、Auricoste、Vixa(実体はハンハルト製)なども応えており、フライバックや黒文字盤は仕様共通の要件であった。差異は機能ではなく、仕上げと造形の密度に表れる。変わらないのはフライバックと黒文字盤の可読性、変わったのは寸法と機械と仕上げの深度である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1954-1980s
Valjoux 222 系
手巻フライバックの調達機。Type 20/XX の心臓。
1995-2010s
Cal. 582 / 584Q 系
レマニア1350基盤に自社フライバック、4Hz自動。
2010-
Cal. 589F
10Hz高振動、シリコン脱進機を採用。
2023-
Cal. 728 / 7281
新設計の自社製、5Hz・コラムホイール式。
2025-
Cal. 7279
2075用の手巻フライバック、原点回帰。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1954-1960s

軍用初代 Type 20

Type 20(軍納入品)
38mm・手巻フライバック・2カウンター。仏軍向け計器の原点。
1955-1970s

民間版 Type XX 初期

Type XX(民間)
ローマ数字表記で民間化、3カウンターの語法が定着。
1995-2018

現代の復刻 Aéronavale

3800 3820
39mmで自動巻復活、側面フルート装飾を初採用。
2004-2010s

Type XXI への拡張

3810 3817
42mm大型化、中央クロノ分針を備えた現代化。
2010-

Type XXII 高振動

3880
44mm、第2時間帯と毎時72,000振動の高速機。
2023-

第4世代・自社製キャリバー

2057 2067
42mm、新設計の自社キャリバー728/7281を搭載。
2025-

250周年・原点回帰

2075
38.3mm手巻、独自合金で1955年の金無垢を範とする。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive