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BLANCPAIN · SERIES

L-Evolution

Lエヴォリューション

8日巻と毎分1回転カルーセルを擁し、レマンの後継として前衛に振り切ったブランパンの実験場

43.5 mm
01 — 概要 / SUMMARY

L-Evolution(エヴォリューション)は、ブランパンが2000年代後半に立ち上げた前衛的スポーツコレクションである。現代的ライン「レマン」の後継として構想され、8日巻ムーブメントや毎分1回転のフライング・カルーセルなど、機構を前面に押し出した造形を特徴とする。Automatique 8 Jours や Carrousel Saphir といった本流に加え、ランボルギーニとの提携から生まれたモータースポーツ志向の L-Evolution R も展開した。古典の外側を試みた、ブランパンの実験的な一群である。

02 — STORY · 物語

L-Evolution(Lエヴォリューション)、これまでの軌跡

The story of this series
01

レマンの後継として

ブランパンが2000年代後半に立ち上げた L-Evolution は、それまでの現代的スポーツライン「レマン(Léman)」の後継として構想されたと伝わる。コレクション名の頭文字「L」もレマンに由来するとされる。主導したのは、当時 CEO を務めたマルク・エイエックである。1735年創業を掲げ、世界最古の時計ブランドを名乗るマニュファクチュールにとって、これは古典から大きく踏み出す試みであった。

折しもこの時期、高級時計の世界では前衛的なスポーツウォッチが相次いで登場していた。エイエックは、自社の技術力を読みやすい古典としてではなく、見せる前衛として提示する場を求めた。L-Evolution は、その実験場として設けられた。

02

8日巻という土台

コレクションの骨格をなしたのは、8日巻という長時間のパワーリザーブである。2006年の手巻 Cal. 13R0 を起点に自動巻の Cal. 1315 が派生し、L-Evolution 向けには日付とパワーリザーブを備える Cal. 13R5、ムーンフェイズ付完全カレンダーの Cal. 66R9 が用意された。3つの香箱を直列に連結し、安定した動力供給を確保する構造である。

2009年には、Automatique 8 Jours(Ref. 8805)、Phase de Lune 8 Jours(Ref. 8866)、Tourbillon GMT(Ref. 8825)、Réveil GMT(Ref. 8841)の4作が出そろう。径43.5mm の段差を刻んだケース、3・9・12時位置の大ぶりな数字、立体的に層を重ねた文字盤。これらが L-Evolution の共通言語となった。

03

カルーセルという挑発

L-Evolution を象徴する技術が、カルーセルである。2008年、ブランパンはヴァンサン・カラブレーゼの設計による Carrousel Volant Une Minute(Cal. 225)を発表した。カルーセルは重力の影響を平均化する点でトゥールビヨンと目的を同じくするが、19世紀末にバーン・ボニクセンが考案した別系統の機構である。原型は1回転に数十分を要したが、ブランパンは差動装置を加えて毎分1回転を実現した。腕時計用としては世界初とされる。

2010年には、地板と橋をサファイアで構成した Carrousel Saphir Volant Une Minute(Ref. 00222A、Cal. 22T)が続く。機構を支える部材そのものを透明にし、回転する調速機構を宙に浮かせて見せた一本である。

04

ランボルギーニとの並走

マルク・エイエックは熱心なモータースポーツ愛好家であり、自らもレースに参加していた。この個人的な関心が、ランボルギーニとの結び付きを生む。2009年に始まったランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオは、両社が組成したワンメイク・レースである。これに合わせ、フライバック機構を備える Cal. F185 を積んだ Chronographe Flyback Super Trofeo(Ref. 8885F)が登場した。

派生として最も先鋭だったのが、L-Evolution R である。カーボンとチタンを多用し、数字の書体やインダイヤルの形状に自動車の意匠を織り込んだ。スプリットセコンドの Cal. 69F9 を積む Chronographe Flyback à Rattrapante Grande Date は、この路線の到達点といえる。

05

賛否、そして退場

L-Evolution の意匠は、発表当初から賛否を分けた。とりわけ立体的で情報量の多い文字盤は、古典的なブランパン像を期待する層には受け入れられにくかったとされる。多彩なケース形状もまた、レマンのような一貫した後継像を描きにくくした。

その一方で、機構面では到達点も残した。2015年、トゥールビヨンとカルーセルを1つの機械に併載した L-Evolution Tourbillon Carrousel(Ref. 92322、Cal. 2322V2)が発表される。径47.4mm のプラチナケースに収められた、限定50本の意欲作であった。

商業的に大きな成功を収めたとは言いがたく、L-Evolution は2010年代後半までにブランパンの主力カタログから姿を消した。現行ラインには直接の後継を持たない。それでもこのコレクションは、世界最古を名乗るブランドが古典の外側で何を試みうるかを示した記録として残る。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

L-Evolution の設計が一貫して優先したのは、機構を隠すのではなく見せることであった。長時間パワーリザーブの香箱、回転するカルーセル、NAC 処理で黒く仕上げた地板や橋。これらを文字盤側へ引き上げ、層を重ねた立体的な構成で提示する。読みやすさよりも、機械そのものの存在感を前面に出す思想である。

ケースは径43.5mm の段差構造を基本とし、モジュール式の構築によってラグや素材の組み合わせに自由度を持たせた。ステンレススチール、チタン、カーボン、各種ゴールド、プラチナ、タンタルまで、同じ造形言語のまま素材を入れ替えられる。レマンが用いた二重リングのベゼルは、外側のリングを新形状のラグで断ち切った平らな段リングへと翻案された。着脱できるラグはこの自由度を支える要であり、ケースとストラップを一体に見せるための構造でもあった。

意匠の記号は、3・9・12時の大ぶりな数字、剣形やバトン形の太い針、そして開口の大きなローターである。視認性のための古典的な要素を残しつつ、その配置と立体感で現代性を主張した。一方でコレクション内ではケース形状や文字盤の構成が一様ではなく、レマンのように単一の顔へ収斂しなかった。この多様さは素材実験の幅と引き換えに、シリーズとしての像をやや結びにくくした側面も持つ。

この自己主張の強さは、ヴィルレが体現する円形・白文字盤の古典性とも、ダイバーズである Fifty Fathoms の道具性とも異なる。1735年以来の革新こそ伝統という標語を、最も挑発的な形で具現化したのが L-Evolution であった。派手にしないという従来の自制を意図的に手放し、機構の劇場性へ振り切る。賛否を分けた要因も、独自の輪郭を与えたのも、この一点に集約される。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2008-2010
Cal. 225 / 22T
世界初とされる毎分1回転のフライング・カルーセル機構。
2009
Cal. 13R5 / 66R9
13R0/1315系の8日巻自動巻。創設モデルの基幹機。
2009
Cal. 1241
GMTとアラームを備える複合機。レマン期から継承。
2009-2015
Cal. F185 / 69F9
フライバック及びスプリットセコンドの自動巻クロノ。
2015
Cal. 2322V2
トゥールビヨンとカルーセルを差動装置で併載。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2009

創設世代 8 Jours

8805 8866 8825 8841
8 Jours の創設世代。43.5mm段差ケースと大ぶりな数字で共通言語を確立。
2009-2015

スーパー・トロフェオ / R

8885F 560STC R85F
ランボルギーニ提携のモータースポーツ系。カーボン×チタンのフライバック。
2010

カルーセル・サファイア

00222A 00222
サファイア地板で機構を宙に見せた毎分1回転カルーセル。
2015

トゥールビヨン・カルーセル

92322
トゥールビヨンとカルーセルを併載、47.4mmプラチナの限定作。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive