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CALIBER · ZENITH

Elite 670 SK

自動巻 Automatic Analog

1994年に登場したゼニスの基幹自動巻エリートを、シリコン脱進機で現代化した中央秒針キャリバー

OVERVIEW · 概要

エリート 670 SKは、ゼニスが2018年に発表した自動巻キャリバーである。1994年発表の名作エリート 670を基に、ガンギ車とアンクル爪石をシリコン製へ置き換えた現代版にあたる。毎時28,800振動 (4Hz)、27石、パワーリザーブは約50時間。直径25.60mm、厚さ3.88mmの薄型設計で、中央秒針と日付表示を備える。「SK」はスケルトン (Skeleton) を指し、地板とブリッジを肉抜きしたオープンワーク仕様が中心となる。デファイ・クラシックで初搭載され、五芒星形ローターと虹色に光るシリコン脱進機が外装の核を担う。エリート・クラシックなど、ゼニスの非クロノグラフ機を支える基幹機である。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerZenith
ReferenceElite 670 SK
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels27 石
Power reserve50 h
Movement ⌀25.6 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
DateDate
AdditionalSkeleton
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. エル・プリメロの陰に育った基幹機

ゼニスといえば、1969年の自動巻クロノグラフ「エル・プリメロ」が代名詞である。毎時36,000振動 (5Hz) の高振動で知られる同機に対し、エリートは時刻表示の土台を静かに支える存在として育てられた。開発が始まったのは1990年代初頭。技術部門を率いたジャン=ピエール・ゲルベール (Jean-Pierre Gerber) のもと、ゼニスは社内で初めてCAD設計を導入し、薄型かつモジュール式の自動巻を構想した。設計にはコンセイレ社のキャロル・フォレスティエ (Carole Forestier) も加わった。後にカルティエ、現在はタグ・ホイヤーでムーブメント開発を統括する人物である。完成したエリートは1994年のバーゼルフェアで「年間最優秀ムーブメント」に選ばれ、ゼニス再興の礎となった。

2. モジュール式ファミリーとしての広がり

エリートは単一の機械ではなく、用途に応じて姿を変える系譜である。直径11.5リーニュ (25.60mm) の地板を共有しつつ、手巻のCal.650 (厚さ2.83mm) から複雑機構を載せたCal.687 (6.20mm) まで、23種を超える派生が確認されている。中核を担う自動巻は二系統に分かれ、9時位置にスモールセコンドを置くCal.680系と、中央に秒針を備えるCal.670系が並ぶ。中3針は同ファミリーではむしろ少数派にあたる。エリートはゼニス専用にとどまらず、外部にも供給された。ユーブロはCal.670をHUB1710として採用し、パネライやダニエル・ロートも派生を用いている。

3. 2018年、シリコンとスケルトンへの転換

670 SKは、2018年のバーゼルワールドで発表されたデファイ・クラシックで初搭載された。基本設計は1994年の670を受け継ぎつつ、ガンギ車とアンクル爪石をシリコン製へ置き換えた点が要となる。シリコンは非磁性かつ軽量で、脱進機まわりの注油を要さないため、保守性と耐磁性に寄与する。シリコン部品の採用自体は2000年代に業界へ広まった潮流であり、670 SKはその流れにゼニスが合流した世代といえる。「SK」が示すとおり、地板とブリッジを肉抜きしたオープンワーク仕様が中心で、虹色に光るシリコンのガンギ車と五芒星形のローターが、機構そのものを意匠へと昇華させている。デファイ・クラシックは、超高振動を追うデファイ・ラボやエル・プリメロ21とは異なる路線の、扱いやすい日常機として位置づけられた。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

エリート 670 SKは、直径25.60mm・厚さ3.88mm (スケルトン仕様) の自動巻で、石数は27石、毎時28,800振動 (4Hz) で時を刻む。4Hzとは、テンプ (時間の基準を生む、振り子に相当する回転振動体) が1秒間に8回往復する速さを指す。エル・プリメロの5Hzには及ばないが、時刻表示主体の薄型機には十分な安定性と省エネルギー性を両立する選択である。

機構面で最大の特徴は、ガンギ車とアンクル爪石のシリコン化である。脱進機 (ゼンマイの力を一定間隔で解き放ち、テンプへ伝える心臓部) のうち、摩擦が集中するこの二部品をシリコンへ置き換えることで、いくつかの利点が生まれる。シリコンは非磁性のため磁界の影響を受けにくく、密度が低く軽量なため部品の慣性が小さい。加えて表面が滑らかで、従来必要だった脱進機まわりの注油を省ける。文字盤側から覗くシリコンのガンギ車は、光の角度により紫から青、緑へと色を変え、機能部品が同時に視覚的な見どころともなっている。

調速機構には、エリート系統が一貫して用いてきたグリュシデュール製の環状テンプが据えられる。グリュシデュールは温度変化に強い合金で、自己補正型のヒゲゼンマイ (テンプの往復周期を定める渦巻状のばね) と組み合わされ、姿勢差や温度差による精度のぶれを抑える。緩急の微調整は、テンプ外周のマイクロメーターネジで行う。

自動巻機構は、ボールベアリングに支持された大径ローターが、両方向の手首の動きを巻き上げへ変換する。670 SKでは、このローターがゼニスの象徴である五芒星をかたどってオープンワーク化され、裏面の見どころを担う。香箱 (ゼンマイを収める部品) は一つで、約50時間のパワーリザーブを供給する。エリート系には二つの香箱で100時間を実現したCal.6150も存在したが、670系は薄さと汎用性を優先し、単一香箱の構成を保っている。

日付機構は、デファイ・クラシックでは6時位置の小窓で表示され、回転する日付ディスクの縁が文字盤外周からも透けて見える独特の構成をとる。早送り修正は順逆どちらにも回せる設計で、長期間止めた後の操作負担を抑えている。

仕上げは、肉抜きされた地板とブリッジにサテン仕上げ (筋目状の艶消し) を基調とし、機械工業的な質感を前面に出す。装飾の華やかさよりも構造の可視化に重きを置いた設計思想が、デファイ・クラシックの外装と一体の表現を生んでいる。なお「670」と「670 SK」はシリコン脱進機を共有しつつ、肉抜きの有無で仕様が分かれ、スケルトン版は構成部品が187点へ増し、ソリッド版より厚みを増す。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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