設計思想
Defyコレクションの再起動と、その入り口
ゼニスは2017年、Defyコレクションを刷新した。中核を担ったのは、1/100秒を計測するDefy El Primero 21と、シリコン製の発振器を用いたDefy Labである。いずれも技術の実験場という性格が強く、Defyは「ゼニスが何をなし得るか」を示す場として再起動した。
その翌年、2018年のバーゼルワールドで加わったのがDefy Classicである。位置づけは明快で、コレクションへの入り口だった。ケースの造形はDefy共通の近未来的な言語を受け継ぎながら、心臓部には高振動の複雑機構ではなく、自動巻きのCal. Elite 670 SKを据えた。技術の花火を一段抑え、日常的に使えるエントリー機として設計された一本である。
セラミックへの展開
49.9003.670/51.R793は、Defy Classicの素材を広げる試みのなかから生まれた。当初チタンで始まったDefy Classicは、2018年12月に黒セラミックを得て、2019年には白・青を加えた3色のセラミック仕様へと広がる。本機が担うのは、このうち青である。
青い文字盤と星形ブリッジのコントラストによって、開口の多い文字盤でも読み取りやすい点が評価された。チタン版が軽く実用的なエントリー機だとすれば、青セラミックは同じ設計を素材の側から際立たせた派生といえる。
終息と、本機が立つ位置
2022年には、八角形ケースを持つDefy Skylineが登場し、2023年にはDefy Skyline Skeletonが続いた。Defyのエントリー機の中心は、やがてこのSkylineへと移っていく。後継のSkylineはケース素材をスティールへ、ムーブメントを高振動世代へと変え、Defy Classicとは異なる方向へ進んでいる。
その意味で49.9003.670/51.R793は、すでに閉じた章に属する一本である。チタンで始まったエントリーDefyが、セラミックで表情を変え、青で最も目立った時期を示している。短い生産期間のなかで、Defy Classicが素材表現の面でどこまで踏み込んだかを今に残す。
意匠分析
本機の核心は、青く発色したセラミックケースにある。酸化ジルコニウムを基とするセラミックは、黒よりも均一な発色が難しいとされ、青の量産は技術的な挑戦であった。ケースは多面的なエッジを持ち、その上を真円のベゼルが縁取る。角張った造形と円形ベゼルの対比が、Defy Classic共通の表情をつくる。表面はポリッシュとサテンを切り替え、硬質な素材に陰影を与えている。
ケースの右側には、リューズを収めるための角張った切り欠きが設けられ、左右非対称の表情を加える。厚さは約10.75mmに抑えられ、ドーム状のサファイアクリスタルが文字盤を覆う。
文字盤はスケルトン仕様で、地板を抜いた奥に五角の星形ブリッジが広がる。中央の秒針には星形のカウンターウェイトが添えられ、ゼニスの紋章が機構の一部として現れる。6時位置には日付窓が小さく開く。針とインデックスにはスーパールミノヴァが充填され、開口の多い文字盤でも時刻の把握を妨げない。青い文字盤との対比で針とインデックスが浮かび、黒や白のセラミック版よりも読み取りやすいとされる。
ストラップは青のラバーで、留具はブルーのDLCを施したチタン製のダブルフォールディングバックルである。ムーブメントはCal. Elite 670 SK。毎時28,800振動 (4Hz)で時を刻み、シリコン製のアンクルとガンギ車を備える。シリコン部品は注油への依存を減らし、整備の間隔を延ばすために選ばれている。星形ローターが回る様子は、開口文字盤とサファイアバックの双方から見ることができる。
系譜と歴史
Defy Classicは2018年のバーゼルワールドで、Defyコレクションへの入り口となるモデルとして登場した。当初の構成はブラッシュ仕上げのチタンケースで、オープンワーク文字盤とソリッド文字盤の2種が用意された。本機が属するセラミック仕様は、その翌年に加わった層である。2018年12月に黒セラミックが先行して公開され、2019年に白と青が加わって3色が出揃った。49.9003.670/51.R793は、このうち青を担う一本として2019年に生産が始まっている。限定生産ではなく、レギュラーコレクションの一員であった。
生産期間中、青セラミックはラバーストラップと組み合わせて供給された。Defy Classicに設けられた特別仕様は、Range Rover Editionに代表されるようにチタンケースが中心で、セラミックは色違いの定番3色が軸となった。
その後、Defyのエントリー機としては、2022年発表の八角形ケースのDefy Skyline、ならびに2023年のDefy Skyline Skeletonが新たな中心となった。
出典
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