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CALIBER · ZENITH

El Primero 400

自動巻 Automatic Analog

1969年に生まれた高振動自動巻クロノグラフの直系、毎時36,000振動を継ぐゼニットの基幹キャリバー

El Primero 400
movement · El Primero 400
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal. 400(エルプリメロ400)は、ゼニットが1969年に発表した自動巻クロノグラフ、Cal. 3019 PHCを直接の祖とする基幹ムーブメントである。世界最初期の自動巻クロノグラフのひとつに数えられ、1980年代の再生産を経て現行名称へ改められた。最大の特徴は毎時36,000振動 (5Hz) の高振動で、1/10秒単位の計測を可能とする。コラムホイールと一体設計のクロノグラフ機構を備え、パワーリザーブは約50時間、31石。日付は4時半位置に配される。クロノマスターやA386リバイバルの中核を担い、かつてはロレックス・デイトナRef.16520にも改修版が搭載された。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerZenith
ReferenceEl Primero 400
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency36,000 bph (5 Hz)
Jewels31 石
Power reserve50 h
Movement ⌀30 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateDate
ChronographChronograph, Column wheel
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 1969年、高振動という野心

ゼニットが自社製の自動巻クロノグラフ開発に着手したのは1962年とされる。創業100周年にあたる1965年での発表を目標に掲げたが、設計の難度は高く、完成には1969年まで要した。同社が選んだのは、クロノグラフ機構をムーブメントへ一体で組み込み、なおかつ毎時36,000振動という当時例のない高振動で駆動する構成であった。モジュール追加ではなく一体設計を採り、作動はコラムホイール(円柱状の制御部品)に委ねる。完成したCal. 3019 PHCは1969年1月10日の記者会見で公表され、「最初の」を意味するスペイン語からエルプリメロと名付けられた。もっとも、同年にはセイコーや、ホイヤーらによるクロノマチック(Cal. 11)も登場しており、自動巻クロノグラフの「世界初」を巡る議論には諸説が残る。

2. 沈黙を越えた再生

1970年代のクォーツ危機は、機械式を主力とするゼニットを直撃した。当時の親会社であった米国資本は機械式の将来を見限り、1975年頃に生産を停止する。製造用の工具や設計図は鉄屑として売却される方針が示された。これに抗ったのが、時計師シャルル・ヴェルモである。彼はエルプリメロの製造設備と図面を密かに保管し、後年の復活へ道を残したと伝わる。1978年にゼニットがスイス資本へ戻ると、保存された設備をもとに1980年代半ばから生産が再開された。この再生産世代で名称はCal. 40.0、続いてCal. 400へと改められ、マルテル社由来の旧称3019から脱した。

3. 産業を支えた基幹機

復活後のエルプリメロは、ゼニット一社の枠を越えて広く採用された。なかでも象徴的なのが、ロレックスである。同社は自動巻化したデイトナの心臓部としてエルプリメロを選び、テンプの振動数を毎時28,800振動へ下げ、ブレゲヒゲゼンマイなどを加えた改修版Cal. 4030として、Ref.16520に搭載した。この関係は1988年頃から自社製Cal. 4130登場の2000年まで続いたとされる。エベルやタグ・ホイヤー、ブルガリなど採用ブランドは多岐にわたる。1999年にLVMH傘下へ入った後もCal. 400は系譜を広げ続け、現在はより新しい世代のCal. 3600と併存しながら、リバイバル系やクロノマスター38などに採用が続く。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

エルプリメロ400の設計思想は、ただ一点、高振動に集約される。テンプ(調速を担う振り子状の回転体)は毎時36,000振動 (5Hz) で振れ、これは多くの自動巻が採る毎時28,800振動 (4Hz) を上回る。1秒間に10回の振動は、クロノグラフ秒針が1/10秒単位の位置で停止することを可能にし、高い振動数ゆえに姿勢差などの外乱も生じにくい。

機構の核心は、クロノグラフを時計本体へ統合した一体設計にある。別体モジュールの追加ではなく、輪列(歯車の列)の段階からクロノグラフを織り込む。始動・停止・復針の制御は、歯車式のカムではなくコラムホイールが担う。円柱の側面に歯を立てた制御車で、操作感の滑らかさと作動の精緻さに寄与する部品である。動力の伝達には、左右の歯車が水平に噛み合うラテラルクラッチ(水平クラッチ)を採用する。

口径は13 1/4型(直径約30mm)、厚さは約6.5mmと薄型に収まり、構成部品は約278点を数える。調速には特殊な機構ではなく、スイス式のアンクル脱進機(レバー脱進機)を用いる。古典的な構成を高い振動数で破綻なく成立させた点にこそ、本機の技量が宿る。クロノメーター規格に適合する精度を備え、認定を受けた個体も古くから存在する。

高振動は精度に資する一方、エネルギー消費が大きいという代償を伴う。香箱(ゼンマイを収める部品)一つで約50時間のパワーリザーブを確保するため、輪列効率と注油の最適化が要となった。初期のエルプリメロは二硫化モリブデンを用いた乾式潤滑を採り、長期の安定性を狙った点でも特異であった。

仕上げの面では、ローターにコートドジュネーブ(波状の装飾)を施し、コラムホイールやネジに焼き入れによる青色を与えた個体が知られる。自動巻は全回転式ローターによる両方向巻き上げで、初期にはタングステン製の重錘が腕の微細な動きまで捉えた。日付は4時半位置に小窓として配され、瞬時切り替え式で深夜に一気に送られる。この位置取りは、初代エルプリメロの面影を今に伝える意匠でもある。なお、この日付位置を6時方向へ移したのが派生版Cal. 400Bであり、サブダイヤルの再配置を含む大規模な設計変更を要したと伝わる。

世代の進化に目を向ければ、近年のCal. 3600は同じ5Hzを保ちながら部品点数を整理し、パワーリザーブを60時間へ延ばした後継基幹機である。シリコン系部品の導入で耐磁性にも配慮するなど、高振動という核を継承しつつ現代的な改良を重ねている。Cal. 400は、その源流に最も近い構成を保つ存在として、なお現役にある。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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