本文へ
CALIBER · VACHERON CONSTANTIN

1120 AT

自動巻 Automatic Analog

Cal.1120を母体に、サテライト式ウォンダリングアワーを駆動するヴァシュロン・コンスタンタン自社製自動巻

1120 AT
movement · 1120 AT
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal.1120 ATは、ヴァシュロン・コンスタンタンの自社製自動巻キャリバーである。2004年、メティエ・ダール「世界の偉大な探検家たち」シリーズに搭載されて登場した。母体は1967年にジャガー・ルクルトが開発した極薄自動巻Cal.920を継承する自社製Cal.1120で、その上部にサテライト式ウォンダリングアワー機構をモジュール構成として加えている。3本のアームに配された12個の時数字が、マルタ十字を模したカムに駆動され、文字盤上を120度の弧に沿って巡る。振動数19,800vph(2.75Hz)、パワーリザーブ約40時間、36石。ジュネーブ・シール認定。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerVacheron Constantin
Reference1120 AT
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency20,160 bph (2.8 Hz)
Jewels36 石
Power reserve40 h
Movement ⌀32.8 mm
HandsJumping Hours, Jumping Minutes
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 母体「Cal.1120」の系譜

Cal.1120 ATの理解には、その基幹となる極薄自動巻Cal.1120の系譜を踏まえる必要がある。Cal.1120は、1967年にジャガー・ルクルトが開発した「Cal.920」を自社向けに仕立てたものである。Cal.920は、フルローター式自動巻として当時最薄の2.45mmという薄さを実現し、ジャガー・ルクルト自身は完成品に搭載せず、オーデマ ピゲ(Cal.2120)、パテック フィリップ(Cal.28-255)、そしてヴァシュロン・コンスタンタン(Cal.1120)の三社にのみエボーシュとして供給されたと伝わる。Cal.1120はヴァシュロン・コンスタンタンの1977年「222」、1996年初代オーバーシーズ、そして現行のオーバーシーズ・ウルトラスリン・パーペチュアルカレンダー等、薄型を要するモデルの基幹ムーブメントを長く担ってきた。

2. 2004年、サテライトアワーへの転用

Cal.1120 ATは、2004年に発表されたメティエ・ダール「世界の偉大な探検家たち(Hommage aux grands explorateurs)」のために用意された。型番末尾の「AT」は、サテライト式ウォンダリングアワーを示す内部呼称と伝わる。第一弾はマゼラン、鄭和、コロンブス、マルコ・ポーロに捧げられた40mmイエローゴールド・ケース各60本のシリーズで、シャンルベ・エナメルで描かれた航海図と、サテライト式の時数字が同居する独特の構成となる。2021年にはバルトロメウ・ディアス、ヴァスコ・ダ・ガマ、ペドロ・アルヴァレス・カブラルを主題とする41mmピンクゴールド版「Tribute to Great Explorers」が各10本展開されている。

3. 「AT/1」への進化

2023年のメティエ・ダール「Tribute to Explorer Naturalists」では、改良版のCal.1120 AT/1がデビューする。本作は1830年代にビーグル号で世界の海を巡った博物学者たちに捧げる4部作で、エナメルと彫金による絵画的な文字盤を、サテライト式時表示が彩る構成となる。Cal.1120 ATと1120 AT/1の差分の詳細は公表されていないが、両者ともジュネーブ・シールを取得し、22Kゴールドのローターには羅針盤を模した彫りが施される。

4. ヴァシュロンにおける時間表示の系譜

Cal.1120 ATは、ヴァシュロン・コンスタンタンが連綿と試みてきた「もう一つの時間表示」の系譜に位置づけられる。1994年のMercator(両針レトログラード)、後年のSaltarello(ジャンピングアワー)等、機械式の表示装置を絵画的・装飾的に再構成する試みは、20世紀前半のbras en l'air系作品にまで遡る。Cal.1120 ATは、その伝統と、ホーリー・トリニティが共有してきた極薄自動巻の基幹キャリバーとを接合した、ヴァシュロンならではの構成と言える。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

1. 仕様と寸法

Cal.1120 ATは、自動巻、振動数19,800vph(2.75Hz)、パワーリザーブ約40時間、石数36、部品点数205。厚さは5.45mmで、これは基幹Cal.1120の2.45mmという薄さに対し、サテライト・モジュール分の厚みが上載せされた数値である。それでもなお、ウォンダリングアワー機構を備える自動巻としては極めて薄い部類に属し、搭載するメティエ・ダール41mmケースの総厚を11.68mmに収めている。なお公式仕様上は12½リーニュ規格が記載されるが、モジュールを含む実寸は32.80mmと公表されており、ベース部の地板径(約28mm)とは区別される。

2. ベース機構の構成

母体Cal.1120の最大の特徴は、ベリリウム合金製のローター・サポートリングと、それを支える4個のルビー製ローラーである。これにより、フルローター式でありながら従来のボールベアリングを使わず、極めて薄い自動巻機構を成立させている。脱進機はスイス・レバー式で、低トルクの動力を安定して取り出すために、組み立てと調整は熟練のウォッチメーカーが一個ずつ手作業で担当する方式が継承されると伝わる。振動数19,800vph(2.75Hz)は現代の主流である28,800vph(4Hz)と比べると低めだが、これは1967年設計当時の極薄化要件を優先したCal.920由来の選択であり、低エネルギー消費で安定して駆動する設計思想を引き継いだ結果である。

3. ウォンダリングアワー・モジュール

Cal.1120 ATの固有部は、文字盤側に装着されるサテライト式時表示モジュールである。中央に位置する時車には120度間隔で3本のアームが伸び、各アームの先には4個の数字(1〜12を3組に分けて配置)を備えた小さな円盤(サテライト)が回転自在に取り付けられる。中央のカムはマルタ十字を模した形状で、時車が1時間で1ステップ進むごとに、サテライトを1コマずつ回転させ、現在時を示す数字が文字盤上部から下部へと描かれた120度の分目盛りの上を、左から右へとなぞる。分は通常の針を用いず、数字そのものの位置が分を示す構造となる。文字盤上部の彫金や絵画的装飾のための広い面積を確保するため、機構の大部分は文字盤の裏に隠される。

4. 仕上げと認定

Cal.1120 ATはジュネーブ・シール(Poinçon de Genève)を取得しており、ムーブメント仕上げに関するジュネーブ州法の基準を満たす。地板にはコート・ド・ジュネーブ装飾、エッジには手作業による面取り(アングラージュ)、ねじ頭には鏡面研磨が施される。ローターは22Kゴールド製で、羅針盤を模した彫りが入る。なお、ジュネーブ・シールは2011年改定により、ムーブメント単体ではなくケース入り完成品に対する精度・防水性能を含む総合認定へと刷新されており、現行のCal.1120 AT搭載モデルもこの新基準下で認定を受ける。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references