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CALIBER · OMEGA

8806

自動巻 Automatic Analog

2017年、復刻Railmasterに搭載されて世に出た、Master Chronometer認証の三針自動巻

8806
movement · 8806
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

オメガ Cal. 8806は、2017年に新生Railmasterで初搭載された自社製自動巻キャリバーである。コーアクシャル脱進機とシリコン製ヒゲゼンマイを備え、METAS認定のMaster Chronometerとして15,000ガウスの耐磁性能を確保する。振動数25,200vph(3.5Hz)、35石、55時間パワーリザーブ。日付機構を持たない三針構成として、Cal. 8800系の時刻表示専用バリエーションに位置づけられる。Railmaster、Seamaster Diver 300Mノーデイト仕様、Seamaster 1948など、ダイヤルを簡潔に保つモデル群に幅広く採用される。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerOmega
Reference8806
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency25,200 bph (3.5 Hz)
Jewels35 石
Power reserve55 h
Movement ⌀29 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
AdditionalChronometer, Co-Axial Escapement
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. Master Chronometerという文脈

Cal. 8806を語るには、まず2015年にオメガが新設したMaster Chronometer認証を押さえる必要がある。COSC認定を前提に、ケーシング後の完成品で精度・耐磁性・パワーリザーブ・防水性能を10日間8項目で検査する独自規格で、日差0/+5秒以内、15,000ガウスまでの耐磁を保証する。軟鉄インナーケースに依存せず非磁性素材で耐磁を実現する点が、それまでの業界水準と画した。

この認証を担う新世代キャリバー群として、Cal. 8500系を刷新したCal. 8900系(2015年Globemasterで初搭載)と、それより小径のCal. 8800系が整備された。Cal. 8806は、後者すなわち11.5ライン(約26mm径)のCal. 8800ファミリーの一員である。

2. Railmasterのための無垢裏蓋

Cal. 8806が初めて世に出たのは、2017年Baselworldで発表された「1957 Trilogy」、すなわちSeamaster 300、Railmaster、Seamaster Aqua Terraの60周年復刻三部作のうち、RailmasterおよびSeamaster 300である。とりわけRailmasterは1957年に登場した耐磁プロフェッショナル時計で、当初から軟鉄インナーケースによる磁気シールドを採用していた歴史を持つ。

復刻に際してサファイア裏蓋を採用すると磁気遮蔽の連続性が断たれかねないが、Master Chronometerが15,000ガウスまでの動作を保証する規格であるのに対し、Railmasterの哲学はそれ以上の完全シールドにある。新生Railmasterがサファイア裏蓋ではなくステンレス無垢裏蓋を採用したのは、その帰結である。

ムーブメントは視認できず、装飾よりも機構の純度が優先される。加えてダイヤルは1950年代意匠を踏襲し、日付窓を持たない三針構成が望まれた。この二要請に応え、Cal. 8800ファミリーから日付機構を取り除いた純粋な三針版として開発されたのがCal. 8806である。日付付きの「本家」Cal. 8800が新型Seamaster Diver 300Mに搭載されBaselworldを賑わせたのは翌2018年であり、ファミリーの公式デビュー順としてはむしろ8806が先行した。

3. 8800ファミリーの系譜

Cal. 8806は、Cal. 8800を基盤とする一連のバリエーションの一角を占める。基本仕様のCal. 8800は時刻と日付の3針構成、Cal. 8802/8803は6時スモールセコンド+日付、Cal. 8804/8805は同スモールセコンド・日付なしでパワーリザーブを60時間に拡張、そして本稿のCal. 8806/8807が時刻のみの三針構成という棲み分けである。奇数番号(8801/8803/8805/8807)はそれぞれSednaゴールド製ローターと天輪受を備えた意匠的上位仕様となる。

Cal. 8806自体はステンレスケースの実用モデルから「ノー・タイム・トゥ・ダイ」エディションのような限定版まで幅広い文脈で活用されており、結果として8800ファミリーの中で最も搭載モデル数の多い派生となった。日付機構を持たないことで生まれた構造上の余白が、ダイヤル意匠の自由度を広げた格好である。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

寸法と基本構成

Cal. 8806は直径11.5ライン(約26mm)の自動巻ムーブメントで、香箱は1基のシングルバレル方式である。テンプ・脱進機・輪列・自動巻機構の各要素はオメガが2010年代後半に整備した8800系の共通アーキテクチャに基づき、機構の中核となる輪列と脱進機の幾何はCal. 8800と共通する。日付関連の歯車・カム類を持たないぶん、構成部品数はわずかに少ない。

コーアクシャル脱進機

機構の核となるのがコーアクシャル脱進機である。1974年に英国の独立時計師ジョージ・ダニエルズ(1926–2011)が発明し、1980年前後に特許を取得した脱進機で、オメガが1999年にCal. 2500として量産化した。1755年にトーマス・マッジが完成させたスイス・レバー脱進機が約250年にわたり業界の標準となってきた中で、量産化に成功した代替脱進機としては事実上唯一の事例と言える。

その原理は、ガンギ車とパレットの間にスライド摩擦ではなく半径方向の押し出し動作で力を伝達することにある。接触面の摩擦が減るため脱進機への潤滑が最小化され、長期的な精度の安定と整備間隔の延長が期待できる。Cal. 8806は、Cal. 2500から始まる量産世代の中で改良を重ねたバージョンを搭載する。

フリースプラング・テンプとシリコンヒゲゼンマイ

テンプはチタン製のフリースプラング構造を採用し、緩急針(レギュレーター)を持たない。代わりにテンプ腕に組み込んだ4本の調整ネジで慣性モーメントを微調整し、精度を整える方式である。緩急針による有効長変化を伴わないため、衝撃や経年変化に対する精度の安定性に優れる。

ヒゲゼンマイには非磁性のシリコン素材(Si14)を採用し、温度変化に対する弾性率の安定性と耐磁性を両立する。シリコン部品と非鉄合金で構成された脱進機・テンプ周りの設計こそが、軟鉄インナーケースに頼らずに15,000ガウスの耐磁を実現する技術的根拠であり、これがRailmasterにおける磁気遮蔽の発想を「ケースによる遮断」から「機構そのものの非磁化」へと置き換えることを可能とした。耐衝撃機構にはNivachocが用いられ、テンプ軸の支持系にもNivaGaussなどの非磁性素材が用いられる。

自動巻機構と振動数

ローターは両方向巻き上げ式で、中心軸の摩擦低減のためにセラミック・ベアリングを採用する。スチール・ベアリングと比べて摩耗に強く長寿命とされる半面、回転音はやや大きい傾向が指摘される。

振動数は25,200vph(3.5Hz)で、これは現代の汎用ムーブメントで多用される28,800vph(4Hz)よりわずかに低い。低振動数はテンプの慣性モーメントを大きく取れるためエネルギー効率と長期精度に有利であり、シングルバレル構造のまま55時間のパワーリザーブを確保する設計選択につながっている。石数は35石。

仕上げとMaster Chronometer認証

ローターと地板はロジウム・メッキ仕上げで、ジュネーブ・ストライプの一種であるアラベスク・パターンによる装飾が施される。Railmasterのように無垢裏蓋のモデルでは外部から視認できないが、Seamaster Diver 300Mのノーデイト仕様などサファイア裏蓋を採用するモデルでは、赤いラッカーで色入れされたローター刻印とともに観賞可能である。

Master Chronometer認証は、まずCOSCで日差-4/+6秒以内の精度を担保した上で、METASが定める8項目の試験を10日間にわたって完成時計の状態で実施する。15,000ガウスの磁場へ2回曝露しても作動が止まらないこと、装着シミュレーション下での日差0/+5秒以内、表示パワーリザーブの達成、防水性能の個別検証など、ケーシング後のシステム性能を直接保証する点が、ムーブメント単体を検査する従来のクロノメーター認証との最大の差異である。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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