本文へ
CALIBER · IWC

82200

自動巻 Automatic Analog

2018年登場、セラミック化したペラトン式自動巻と60時間パワーリザーブを備える、IWC自社製の中核キャリバー

82200
movement · 82200
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal. 82200は、IWC自社製の自動巻ムーブメントである。2018年のSIHHにて、Da Vinci Automatic Edition「150 Years」での初搭載とともに発表された。32000系と52000系の中間を担う82000系の基幹キャリバーで、振動数28,800vph (4Hz)、31石、片香箱から60時間のパワーリザーブを得る。ペラトン式自動巻機構の主要部品をセラミック化した点を最大の特徴とし、ポルトギーゼ・オートマティック40などに搭載されている。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerIWC
Reference82200
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels33 石
Power reserve60 h
Movement ⌀30 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 開発の背景:自社製化を完成させる最後のピース

IWCは2000年、Cal. 5000の発表をもって自社製ムーブメントへの本格回帰を果たした。50000系は7日間のパワーリザーブを擁する大型キャリバーで、ポルトギーゼやパイロット・ウォッチの中核を担った。2005年には、より小型で堅牢な80000系が登場する。Cal. 80110はインヂュニア・オートマティックに初搭載され、Valjoux 7750の手巻き派生7765のアーキテクチャを参照しつつ、ペラトン機構と耐衝撃構造を備えていた。

しかし2010年代に入ると、より汎用的な3針時計向けの中核キャリバーが求められるようになる。当時IWCの基幹3針モデルはETAやSellitaのエボーシュをベースとした30000系に依存しており、ブランド全体の自社製化を完成させる最後のピースが、コンパクトで時刻表示専用の自動巻ムーブメントだったのである。

2. 技術的革新:第三世代ペラトンとセラミック化

Cal. 82200の核は、ペラトン式自動巻機構の素材革新にある。本キャリバーではダブルコハゼ構成を採用し、衝撃耐性と巻き上げ効率を向上させている。さらに、コハゼ・自動巻車・ハート型カムといった応力を受ける主要部品をセラミック複合材で製造することで、磨耗をほぼ排除し、これらの可動部の潤滑を不要としている。セラミック部品の本格導入自体は50000系の系譜で先行していたが、中核時刻系キャリバーへの全面展開は82000系で初めて達成された。

歩度の心臓部であるテンプは、緩急針を持たないフリースプラング型を採用する。前世代80110系が緩急針付きを基本としていたのと対照的で、上位機の設計思想が中核機にも降りてきた形である。

3. 82000系のラインアップ展開

Cal. 82200はスモールセコンド版の基本形として位置づけられ、82000系は複数のバリエーションを擁する。Cal. 82110は中央秒針型でインヂュニア・オートマティック42などに採用される。Cal. 82650はパーペチュアルカレンダー機構を統合した派生で、2024年のポルトギーゼ・パーペチュアルカレンダー42に搭載された。いずれも、共通の自動巻機構とセラミック部品の思想を継承している。

4. 業界での位置

IWCの現代キャリバー戦略は、32000系(エントリー)、82000系(中核時刻系)、52000系(7日間ハイエンド)、69000・89000系(クロノグラフ)という階層に整理される。Cal. 82200は、この体系における中核時刻系の主力として位置づけられる存在である。スウォッチグループによるETA調達制限の段階的強化を背景に、各ブランドが自社製化を進めた2010年代後半の流れと合致した展開といえる。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

仕様の核

Cal. 82200は、直径30mm、振動数28,800vph (4Hz)、31石、片香箱で60時間のパワーリザーブを実現する自動巻ムーブメントである。表示機能は時・分・スモールセコンド(6時位置)と秒停止(ハッキング)に限られ、複雑機構を持たない3針キャリバーとして設計されている。

ペラトン式自動巻機構

本キャリバー最大の特徴は、ペラトン式自動巻機構の構造とその素材にある。発明したのはIWCの技術部長アルベール・ペラトン(Albert Pellaton, 1898–1966)で、1946年に基本設計が確立された。ローター(おもり)が回転すると、その軸に固定されたハート型カムが二つの宝石ローラーの間を揺動する。ローラーはY字状ブリッジに保持されており、カムの揺動を受けてブリッジが左右に首を振る運動を行う。ブリッジに連動した2つのコハゼ(pawl、爪状の歯止め部品)が、香箱の歯車を交互に押し引きすることで、主ぜんまいを巻き上げる仕組みである。ローターの両方向の回転が等しく巻き上げに変換されるため、巻き上げ効率が高い。

Cal. 82200では、コハゼ・自動巻車・ハート型カムの主要可動部がセラミック複合材で製造される。金属同士の摺動に比べて摩擦と磨耗が大幅に低減され、潤滑油の介在が不要となるため、保守間隔の延伸と長期的な巻き上げ効率の維持に寄与すると伝わる。

調速機構

テンプは緩急針を持たないフリースプラング型で、テンプ輪上の調整ウェイト(可変慣性錘)により歩度を調整する。慣性質量そのものを変えるこの方式は、緩急針による有効長変更に比べて衝撃や経年による狂いが生じにくく、姿勢差の制御にも有利とされる。ヒゲゼンマイは平ヒゲ(フラット・ヒゲゼンマイ)で、シリコン素材は採用されていない。

仕上げと外観

ブリッジには大胆な肉抜きが施され、サファイアシースルーバックを通して香箱、輪列、ペラトン機構の動きが直接観察できるよう設計されている。ローターはスケルトナイズされ、コートドジュネーブ(ジュネーブストライプ)による装飾が施される。地板にはペルラージュ(円形磨り)が広く配される。手仕上げに重きを置くクラフト系ハイエンドキャリバーとは性格を異にし、産業的な精度と機能美を重んじた仕上げといえる。

上位機との関係

ペラトン機構と60時間パワーリザーブは、50000系および80000系から継承された設計思想である。一方、50000系が単香箱で7日間という大容量設計を採るのに対し、82000系は片香箱で60時間と現実的な範囲に留めており、より小径で多くのコレクションに展開可能な構成を選んでいる。Cal. 82200は、こうした上位機の技術資産を、中核時刻系という実用領域に翻訳した存在である。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references