設計思想
El Primero「Open」という系譜
Zenithが1969年に世に出したEl Primeroは、自動巻きで毎時36,000振動を刻む高振動クロノグラフとして知られる。その心臓部を文字盤側から見せる試みが「Open」であった。2003年、Zenithは文字盤の一部を切り欠き、調速機構と脱進機を露出した最初のクロノグラフを発表する。針やインデックスを残したまま機構の鼓動を覗かせるこの手法は、以後Zenithの定番表現となった。初期のOpenは、おおむね10時付近に開口を設け、El Primeroの400系キャリバーを収めていたとされる。
2021〜2022年、Chronomasterの再編
2021年、Zenithは1/10秒計測に対応する新世代キャリバーEl Primero 3600をChronomaster Sportに搭載し、コレクション名を「Chronomaster」へと整理した。翌2022年のWatches and Wondersでは、この新世代エンジンを軸にChronomaster Openが復活する。ケースは39.5mmへと見直され、開口はかつてより大きく取られた。搭載するEl Primero 3604は3600をベースに地板とブリッジを開放した派生で、基本性能は3600と変わらない。発表時の構成はシルバーとブラックのスティール、そしてローズゴールドであった。
ブルー文字盤がブティック専売で加わった意味
本機03.3300.3604/51.M3300は、その約半年後の2022年9月に追加された一本である。標準仕様がマット文字盤であったのに対し、本機は深いブルーのサンレイ文字盤をまとう。色とブティック専売という性格を除けば、ケースもムーブメントも標準仕様と共通する。限定番号を持つ生産ではないが、流通をZenithの直営ブティックとオンラインに絞ることで、標準ラインとは別の立ち位置が与えられた。派手な機構追加ではなく、色と販路によって固有性を与える手法であり、Openの系譜にもう一つの選択肢として並ぶ。
意匠分析
本機の核は文字盤にある。標準仕様のシルバー・ブラックがマット仕上げであるのに対し、本機は深いブルーのサンレイ文字盤を採用する。光の角度で表情を変える放射状の輝きが、開口部の機構と対照をなす。インデックスと針はファセット付きの植字で、視認性とともに立体感を与える。
El Primero伝統の3色カウンターは、ブルーの地に合わせて再構成される。6時の30分積算計はグレー、3時の60秒積算計はシルバーで刷り分けられ、9時のスモールセコンドはヘサライトの透明な小皿として開口の上に重ねられる。これにより、秒の表示を保ちながら、その下で動く脱進機を同時に見せる。9時から12時方向にかけて取られた面取り付きの開口からは、シリコン製の星形脱進車と天輪の鼓動が露わになる。El Primeroの伝統だった日付窓は、開口部の情報量を考慮して省かれている。
ケースは39.5mm径、厚さ13mm、ラグ間45.2mm。ヘアラインと鏡面を切り分けて構成され、ベゼルは平滑な鏡面とする。外周にセラミックベゼルを持つChronomaster Sportと形状を共有しつつ、ベゼルの厚みがない分だけ径が1.5mm小さい。プッシャーはピストン型で、現行コレクションの意匠に沿う。ブレスレットは3列構成のヘアライン・鏡面仕上げで、フォールディングクラスプを備える。
ムーブメントは自社製El Primero 3604。コラムホイール制御の自動巻きで、毎時36,000振動 (5Hz)、パワーリザーブは60時間。脱進車とアンクルはシリコン製で、潤滑を要さず磁気の影響も受けにくい。サファイアバックからは、星形ローターとブルースティールのネジが見える。
系譜と歴史
Chronomaster Openという名のクロノグラフが初めて世に出たのは2003年である。本機はその系譜に連なるが、固有の生涯は2022年に始まる。同年、ジュネーブで3月30日から4月5日まで開かれたWatches and Wondersで、ZenithはChronomaster Openを現行世代として復活させた。このとき発表されたのはシルバーとブラックのスティール、およびローズゴールドであり、ブルー文字盤は含まれていなかった。
本機03.3300.3604/51.M3300が加わったのは、それから約半年後の2022年9月である。深いブルーのサンレイ文字盤を備えたこの一本は、既存のシルバー・ブラックと並ぶ形で発表された。番号付きの限定生産ではないが、流通はZenithの直営ブティックおよびオンラインブティックに限定された。標準仕様が正規販売店でも扱われるのに対し、本機は入手経路そのものが性格を規定する仕様といえる。
発表以降、本機のケースとムーブメントに大きな仕様変更は確認されていない。流通形態も発表時から変わらず、ブティックとオンラインに限られている。本稿執筆時点では、Zenithのカタログに現行モデルとして掲載されている。