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CALIBER · ZENITH

El Primero 3604

自動巻 Automatic Analog

2022年登場。エル・プリメロ3600系を開放設計とし、シリコン脱進機を文字盤に露出させた1/10秒クロノグラフ

El Primero 3604
movement · El Primero 3604
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

エル・プリメロ3604は、ゼニスが2022年に発表した自動巻クロノグラフ・ムーブメントである。2021年のクロノマスター スポーツで実用化された3600系を基礎とし、日付機構を省いたうえで、地板とブリッジを開放設計に改めた派生キャリバーにあたる。毎時36,000振動 (5Hz) の高振動を保ち、シリコン製のガンギ車とアンクルを文字盤側から覗かせる構成をとる。クロノグラフは1/10秒を計測でき、中央の秒針は10秒で一周する。パワーリザーブは60時間、石数は35石。クロノマスター オープンに搭載され、エル・プリメロの鼓動を表側から見せる役割を担う。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerZenith
ReferenceEl Primero 3604
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency36,000 bph (5 Hz)
Jewels35 石
Power reserve60 h
Movement ⌀30 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
ChronographChronograph, Column wheel
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 3600系という世代交代

エル・プリメロは、1969年に複数の陣営が自動巻クロノグラフの実用化を競うなかで登場した、高振動の自動巻クロノグラフである。同年にはホイヤーらのクロノマティック陣営やセイコーも同種の機構を世に問うており、その先後はいまなお議論が残る。ゼニスはこの基幹キャリバーを「Cal.400」系として半世紀近く生産し続けたが、パワーリザーブや調整機構には時代との隔たりも生じていた。

その更新を担ったのが、エル・プリメロ3600系である。原型は2019年、エル・プリメロ誕生50周年の記念モデルで限定的に披露された。通常生産に乗ったのは2021年のクロノマスター スポーツが最初で、パワーリザーブを50時間から60時間へ延ばし、ストップセコンド機構を新たに備えた。最大の眼目は、中央のクロノグラフ秒針が10秒で一周する設計により、1/10秒を文字盤上で直接読み取れるようにした点にある。高振動ゆえに理論上は1/10秒の計測が可能でありながら、それを針の動きとして表示する手段が長く課題とされてきた領域である。

2. 開放設計の派生、3604

3604は、この3600系から日付表示を取り去り、地板とブリッジを開放設計へ改めた変種である。スペック上は3600とおおむね共通し、両者の違いは構造の見せ方にある。文字盤の9時位置にあるスモールセコンドの直下を透明素材のディスクとし、その奥でシリコン製のガンギ車が高速で回る様子を表側から望めるようにした。

「オープン」という発想自体は新しくない。2000年代のエル・プリメロ・クロノマスターには、文字盤に開口を設けて脱進機を露出させる仕様が存在し、当時のゼニスを象徴する意匠であった。3604はその系譜を、3600世代の機構と現代的な仕上げで再構成したものといえる。初出は2022年のクロノマスター オープン ブティック限定モデル(ブルーダイヤル)で、翌2023年にはマット・シルバーやブラックの通常コレクションへと展開された。

3. 高振動クロノグラフの現在地

エル・プリメロは、その高い振動数ゆえに長く特異な地位を占めてきた。1988年から2000年にかけては、ロレックスがデイトナの自動巻機構の母体としてこの系統を採用したことでも知られる。3600系、そして3604は、こうした歴史を背負う基幹機構を現行へ橋渡しする存在であり、単なる外装変更ではなく、計測機構そのものの世代交代として位置づけられる。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

高振動が支える計測精度

エル・プリメロ3604は、毎時36,000振動 (5Hz) で作動する。テンプ(振り子に相当する調速機構)が1秒間に10回振れることを意味し、クロノグラフが刻める最小単位は1/10秒となる。振動数が高いほど一拍あたりの時間誤差が姿勢変化に左右されにくく、瞬間的な衝撃に対しても歩度が安定しやすい。反面、消費エネルギーは増すため、香箱の効率や注油設計に高い水準が求められる。

ガンギ車から駆動するクロノグラフ

3604が属する3600系の核心は、クロノグラフの駆動経路にある。従来のCal.400では、クロノグラフ秒針は4番車(秒を刻む輪)から動力を得ており、中央秒針は1分で一周していた。3600系ではこれを改め、脱進機のガンギ車から直接クロノグラフを駆動する。二枚の中間車を介する横カップリング機構によって、中央のクロノグラフ秒針は10秒で一周し、その円周を100分割して読む。これにより、高振動が本来もつ1/10秒の分解能を、針の位置として直接表示できる。輪列の末端は駆動トルクが細りやすい位置であるため、星形に肉抜きしたシリコン製ガンギ車と専用の歯車比で、クロノグラフとテンプ双方へ十分な力を配分する設計がとられている。

シリコン脱進機と耐磁・保守性

ガンギ車とアンクルはシリコンで成形される。シリコンは軽量かつ非磁性で、潤滑油を必要としない自己潤滑性をもつため、注油の経年劣化や磁気の影響を受けにくい。3604ではこのガンギ車を文字盤側へ露出させ、高速で回転する様子を表から観察できる。スモールセコンドの土台を透明ディスクとすることで、運針機能を保ちながら脱進機への視界を確保している。

巻上げ・パワーリザーブ・仕上げ

自動巻機構は筋目仕上げを施した星形のローターを備え、可動部の慣性を確保しつつ巻上げ効率を高めている。パワーリザーブはCal.400の50時間から60時間へと延ばされた。クロノグラフ操作にはコラムホイール(柱状歯車による制御機構)を用い、そのコラムホイールはブリッジに覆われず、ブルースチール仕上げで露出する。高振動の自動巻クロノグラフとしてはクロノメーター認定を取得しており、日常使用に足る精度と動力持続を両立させている。シリコン部品は摩耗や磁気の影響を受けにくく、注油間隔の面でも保守の負担を抑えやすい。3604は日付を持たないぶん部品構成も簡潔で、地板とブリッジの開放設計は、装飾としてだけでなく機構の透明性を示す意図をもつ。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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