設計思想
高周波を色で語る
Defy 21は、2017年のバーゼルワールドで発表された、El Primero 9004を初めて積んだモデルである。1/100秒を計測する高周波クロノグラフをゼニスの中核に据えた一本で、この機構は計時用とクロノグラフ用に独立した2つの脱進機を持ち、後者は毎時360,000振動 (50Hz) で動く。ゼニスはこの速さを、可視光の周波数すなわち色に置き換えて見せる手法を編み出した。2020年のUltravioletがその出発点であり、グレー一色のケースに対し、ムーブメントだけを鮮烈な色で仕上げるという設計コードがここで定まった。
Ultra Colourボックスは、その発想を1つの製品として完結させた企画である。2023年2月、ゼニスは8色のDefy 21を1組にまとめ、8セットのみの限定で世に出した。色は黒、青、紫、橙、桃、緑、ターコイズ、カーキの8種。この97.9001.9004-6/80.R946.T3/Pは、そのうちの青を担う1本である。
Ultravioletから続く色の系譜
8色のうち紫は、2020年のDefy 21 Ultravioletで最初に示された色である。Ultravioletは、グレーのケースに対してムーブメントだけを鮮烈な色で仕上げるという手法を定め、Ultra Colourボックスはその手法を8色に広げて一つの製品にまとめた。本機の青もこの系譜に連なり、ブリッジと回転錘を単色の青で仕上げている。8本のケースはいずれもマット仕上げの軽量なチタン製で、内部の色彩を際立たせる。ボックスには、見る角度で色が変わる透明なアクリルのケースが用意された。
8色のなかの青
ゼニスの名は天頂に輝く星に由来すると伝わり、同社は青をブランドを象徴する色の一つとして用いてきた。8色を横に並べたとき、ブランドの色と最も重なるのがこの青である。本機はその青を、8セットのみという限定のかたちで世に出した個体にあたる。
意匠分析
97.9001.9004-6/80.R946.T3/Pの設計は、無彩色の器と有彩色の機構という対比に集約される。ケースは44mmのチタン製で、表面は微細なブラスト加工により梨地へ整えられ、光を抑えた濃いグレーに沈む。面取りの効いた稜線が走るが、仕上げ全体は均質で、ケースそのものは徹底して色を排している。
その無彩色の器に対し、色を担うのはムーブメントである。開けた文字盤と透明なサファイア裏蓋の双方から、El Primero 9004の地板とブリッジ、そして自動巻きのローター(回転錘)が青く仕上げられているのが見える。文字盤側のクロノグラフカウンターはケースと同じグレーで立体的に起こされ、その下層に青が覗く構成をとる。色を文字盤やベゼルではなく機構そのものに与えるこの手法が、Ultraviolet以来の設計コードであり、本機もそれを踏襲する。針とインデックスはロジウムプレートで面取りされ、スーパールミノヴァを備えて、グレーの地に対する視認性を確保する。
機構の振る舞いそのものも意匠の一部となっている。中央のクロノグラフ秒針は、作動時に1秒で文字盤を1周する。これは毎時360,000振動 (50Hz) で動くクロノグラフ用脱進機がもたらす動きで、毎時36,000振動 (5Hz) の計時用脱進機とは独立している。積算計とクロノグラフのパワーリザーブ表示を備え、開けた文字盤の下で2つの調速機構が並走する様子が見える。ムーブメントはTIME LABのクロノメーター認定を受ける。
ストラップはムーブメントの色に合わせた青のコーデュラ調ラバーで、マイクロブラストのチタン製ダブルフォールディングバックルで留める。ケースは無彩色、ストラップと機構は青という色分けが、この個体の性格を決めている。裏蓋には、8セット限定を示す通し番号が刻まれる。
系譜と歴史
本機が属するDefy 21の系譜は、2017年のバーゼルワールドに遡る。El Primero 9004を初めて搭載したDefy El Primero 21がここで発表され、1/100秒クロノグラフのプラットフォームが立ち上がった。色をめぐる展開はその後に始まる。2020年、ムーブメントを紫に仕上げたUltravioletが登場し、グレーのケースに対して機構だけを彩色する手法が定まった。
97.9001.9004-6/80.R946.T3/Pが世に出たのは2023年である。2月、ゼニスはDefy 21を8色そろえたUltra Colourボックスを発表した。8色は黒、青、紫、橙、桃、緑、ターコイズ、カーキで、本機はそのうちの青を担う。ボックスは8セットのみの限定で、ゼニスの直営ブティックと公式オンラインブティックでのみ取り扱われた。
このボックスには番号付けの工夫がある。各時計の裏蓋には1から8の限定番号が刻まれるが、1セット内の8本に同じ番号を与えるのではなく、1から8まで順に割り振る方式が採られた。したがって本機の参照番号も合計8本のみが存在し、各個体は異なる番号を帯びる。単体で販売されたDefy 21の色違いとは異なり、本機はこの限定ボックスの構成要素として供給された点に、生産上の固有性がある。
出典
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