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ZENITH · SERIES

Defy

デファイ

1969年、クォーツに抗して生まれた八角形のスポーツウォッチ。いまは機械式時計の最前線を試す、ゼニスの実験場である。

41 mm – 44 mm
01 — 概要 / SUMMARY

デファイは1969年、ゼニスがクォーツの台頭に抗して送り出した頑健なスポーツウォッチに始まる。八角形のケースに多面ベゼルと一体型ブレスレットを組み合わせた角張った意匠は、鋼鉄製スポーツウォッチの先駆けの一つだった。名は一度途絶えかけたが、2017年にゼニスはデファイを機械式時計の技術を試す実験場として再起動する。1/100秒を刻むエル・プリメロ21、単結晶シリコンの一体振動子を備えたデファイ ラボがその象徴である。現在は八角形を現代に甦らせたスカイライン、頑健なエクストリーム、三針のクラシックを軸に展開している。

02 — STORY · 物語

Defy(デファイ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1969年、クォーツへの抵抗として

1969年は、ゼニスにとって二重の意味を持つ年である。世界初の自動巻きハイビートクロノグラフとして知られるエル・プリメロが発表され、同じ年に、もう一つの新機軸が静かに姿を現した。デファイである。当時、安価で正確なクォーツ時計が機械式時計の足場を脅かしつつあった。ゼニスはこれに対し、量産電子時計には真似のできない頑健さと際立った造形で応えようとした。その器が初代デファイ A3642だった。八角形のケースに14面のベゼルを重ねた角張った姿は、フランス語で金庫を意味する「コフルフォール」と渾名された。ゲイ・フレール社製の通称「ラダー」ブレスレットを備え、300m防水(30気圧)を確保している。鋼鉄製スポーツウォッチの先駆けの一つであり、一体型ブレスレットの高級スポーツウォッチとして、後のロイヤル オークに三年先んじていた。同年には600m防水のダイバーA3648も登場し、デファイは一つの時計ではなく、頑健さを軸とした一群として出発した。

02

名前の漂流と前衛への振れ

デファイ(初期の綴りはDefi)の名は、創業まもない時期にも使われていたと伝わるが、シリーズとして定着したのは1969年からである。ところが1970年代を過ぎると、この名は時代相応の量産モデルへと拡散し、輪郭を失っていった。流れが変わるのは2001年、ティエリー・ナタフがCEOに就いてからである。ナタフはデファイを大胆な前衛路線へと振り、大型で装飾過多なデファイ エクストリームを世に問うた。その振れ幅は賛否を呼び、ナタフは2009年に退任する。初代の頑健で禁欲的な造形からは遠ざかった時期だったが、デファイという名が「常識に挑む」器であり続けた点は変わらなかった。

03

2017年、実験場としての再起動

2017年、LVMH傘下のゼニスはデファイを全面的に再定義する。指揮を執ったのはジャン=クロード・ビバーだった。その第一弾が、1/100秒を計測するデファイ エル・プリメロ21である。新キャリバー、エル・プリメロ9004は二系統の調速機構を持つ。時刻用は毎時36,000振動(5Hz)、クロノグラフ用は毎時360,000振動(50Hz)で動き、中央のクロノグラフ針は1秒で文字盤を一周する。ひげぜんまいにはカーボンナノチューブ複合材が用いられ、磁気や温度変化への耐性を高めた。1/100秒という分解能の発想には、同じLVMH傘下のタグ・ホイヤーが先に手がけた機構の知見が生かされたとされる。デファイは、ゼニスがもっとも先鋭な機械を載せる器として再起動した。

04

シリコン振動子という賭け

再起動の真の核心は、同じ2017年9月に披露されたデファイ ラボにあった。キャリバーZO 342は、テンプ・ひげぜんまい・アンクルという約30点の部品を、単結晶シリコンの一体構造へ置き換える。1675年にホイヘンスが確立して以来ほぼ変わらなかった調速の原理に、ゼニスは挑んだ。振動数は毎時108,000振動(15Hz)に達し、振り角はわずか±6度にとどまる。この振動子はジュネーブ時計グランプリで革新賞を得た。当初は10本限定の実験機だったが、2019年に量産版デファイ インヴェンターへと結実し、振動数は毎時129,600振動(18Hz)へと引き上げられた。ゼニスはこれを「世界でもっとも正確な機械式時計」と表現した。

05

コレクションの拡張 — クラシックとエクストリーム

先鋭な技術を見せる一方で、ゼニスは間口も広げた。2018年のデファイ クラシックは、自社のエリート670をスケルトン化して載せた三針日付モデルである。毎時28,800振動(4Hz)で動き、シリコン製のアンクルとガンギ車を備え、41mmのチタンケースに収まる。エル・プリメロほど派手ではないが、デファイの工業的な意匠を日常に落とし込む役割を担った。2021年には、45mmへ大型化したデファイ エクストリームが加わる。エル・プリメロ9004系を頑健なケースに収め、工具不要でストラップを交換できる機構を備えた、よりタフな性格の一本である。

06

スカイラインと八角形の帰還

2022年、デファイ スカイラインが現行コレクションの中核として登場する。41mmの八角形ケースに12面のベゼルを重ねた姿は、初代A3642の造形を明確に呼び戻すものだった。文字盤にはゼニスの四芒星が敷き詰められる。搭載するエル・プリメロ3620は毎時36,000振動(5Hz)で動き、9時位置の小針が10秒で一周する1/10秒表示を、脱進機から直接駆動する。同年にはA3642を37mmで忠実に再現したデファイ リバイバルも届けられた。2024年にはクロノグラフ版のスカイライン クロノグラフ、そして600m防水のデファイ エクストリーム ダイバーと、オレンジ文字盤のリバイバルA3648が加わる。創業160周年の2025年には、ブルーセラミックの限定群やサファイアケースのゼロGなどが続いた。初代の頑健さと、技術を試す実験場という性格。デファイはこの二つを一つのコレクションに束ね直して、現在に至っている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

デファイの設計言語は、二つの「抵抗」に貫かれている。一つは脆さへの抵抗であり、もう一つは時計づくりの慣習への抵抗である。

機能設計の核にあるのは頑健さだ。1969年の初代A3642は、八角形のケースと多面ベゼルを鋭い面取りで構成し、ねじ込み式リューズと厚い裏蓋で高い防水性を確保した。この角張った幾何学は、量産電子時計には出せない存在感と耐久性を視覚化する狙いを持っていた。同年のダイバーA3648では、14面の固定ベゼルの上に回転ベゼルを重ねるという独特の構成をとり、機能を造形へ翻訳している。現行のスカイラインやエクストリームに残る多面ベゼルと面で構成されたケースは、この初代の造形を直接受け継ぐ。

意匠面では、八角形のケース、多面体のベゼル、ケースと連続する一体型ブレスレットという三点が、半世紀を超えて「デファイの顔」を保ってきた。スカイラインがベゼルの面数を初代の14面から12面へ整え、文字盤にゼニスの四芒星を敷き詰めても、初代の輪郭は崩れていない。可読性の面でも、面取りされた針とインデックスに夜光を載せ、コントラストを確保する手法は一貫している。

もう一つの設計思想は、機構そのものを見せることにある。現代のデファイは、文字盤をスケルトン化し、エル・プリメロやシリコン振動子の動きを露わにする。これは可読性を重んじる同社のクロノマスターとは異なる方向であり、時計を計器ではなく工学の標本として提示する態度に近い。チタン、セラミック、サファイア、そして軽量なアルミニウム複合材といった素材選びも、この工学志向の延長にある。

同時代の一体型ブレスレットのスポーツウォッチ、たとえばロイヤル オークやノーチラスが装飾的な仕上げで高級感を演出するのに対し、デファイはより即物的で工業的な表情を選んできた。変えなかったのは角張った幾何学と、技術を前面に出す姿勢である。変えたのは、1970年代の肉厚な鋼鉄から、現代のシャープな仕上げと先端素材への移行であった。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1969-1970年代
自社製自動巻き
初期デファイを駆動した量産自動巻き。
2017-
El Primero 9004
二系統の脱進機で1/100秒を刻む。
2017-2019
ZO 342(Zenith Oscillator)
シリコン一体振動子、15→18Hzへ。
2018-
Elite 670 / 670SK
三針日付の基幹、毎時28,800振動。
2022-
El Primero 3620 / 3600
1/10秒表示を担う高振動の現行系。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1969-1970年代

初代デファイ「コフルフォール」

A3642 A3648
八角形ケースと多面ベゼル、頑健な鋼鉄スポーツの原型。
2017

現代デファイ再起動の起点

Defy El Primero 21
1/100秒クロノグラフでシリーズを再起動させた一本。
2017-2019

シリコン振動子の実験機

Defy Lab Inventor
単結晶シリコン一体振動子を量産化へ運んだ世代。
2018

装飾を抑えた三針日付

Defy Classic
Elite系を積んだ、間口を広げる三針日付モデル。
2021

タフネス志向の大型機

Defy Extreme
45mmにエル・プリメロ21系を収めた頑健な一群。
2022-現在

八角形ケースの再定義

Defy Skyline
星空文字盤と1/10秒表示を備えた現行の中核。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive