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ZENITH · SERIES

Chronomaster Original

クロノマスター オリジナル

1969年のA386を、1/10秒を刻む現行のEl Primeroで定番に甦らせた高振動クロノグラフ

38 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Chronomaster Originalは、ゼニスが2021年に発表した、1969年のEl Primero Ref. A386を範とする高振動クロノグラフのシリーズである。直径38mmのケースと重なり合う三色サブダイヤルでA386の意匠を受け継ぎ、心臓部には1/10秒を直読できる現行のEl Primero 3600を据える。シルバーの三色文字盤、黒のリバースパンダ、ブルー文字盤に加え、2024年には完全カレンダーを備えるTriple Calendarが派生した。忠実な復刻に徹するRevivalと、現代的なSportのあいだで、定番として位置づけられる系譜である。

02 — STORY · 物語

Chronomaster Original(クロノマスター オリジナル)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1969年、A386という起点

1969年1月10日、ゼニスはEl Primeroを発表した。完全一体型の自動巻きクロノグラフ機構であり、毎時36,000振動 (5Hz) という、当時としては突出した高振動で時を刻んだ。この高振動が、1/10秒単位の計測を可能にした。

同じ年、自動クロノグラフの開発をめぐっては複数の陣営が競っていた。ホイヤーやブライトリングらによるクロノマティック陣営 (Cal. 11)、そしてセイコーである。三者はほぼ同時期に製品を市場へ投入しており、「最初」の称号は単純には定まらない。ゼニスはこの1月の発表をもって先頭に立ったと位置づけるが、一体型・高振動という設計の独自性こそが、El Primeroを後年まで生き残らせた要因である。

El Primeroを最初に載せたモデル群のうち、本シリーズが範とするのがRef. A386だ。直径38mmのステンレススチール製ラウンドケース、まっすぐ伸びるラグ、ドーム状の風防。文字盤には、灰・青・アンスラサイトの三色が少しずつ重なり合うサブダイヤルが配された。広告に最初に登場したのはA384とされるが、製造番号の最も若い個体はA386に見られ、ゼニスはこれを最初に製造されたEl Primeroと位置づけている。重なる三色のカウンターは、その後のシリーズを貫く視覚的な記号となった。

02

意匠を生き延びさせたもの

A386の意匠が半世紀を経て現行モデルへ受け継がれた背景には、ひとつの判断がある。

1971年、ゼニスはアメリカのゼニス・ラジオ社の傘下に入った。1975年、経営陣は機械式生産の停止と、製造設備・図面の廃棄を命じる。資源をクォーツに集中させるためであった。このとき、時計師シャルル・ヴェルモは設備と技術資料を密かに保管したと伝わる。工具や図面が整理された状態で屋根裏に残されたという。

1978年にゼニスはスイス資本へ戻り、1984年頃にEl Primeroは生産を再開した。設備が保存されていたため、ムーブメントを一から起こす必要はなかった。再開後、ロレックスはこのEl Primeroを改良してデイトナに採用する。振動数を毎時28,800振動 (4Hz) へ下げ、日付機能を省いた仕様で、Cal. 4030と名づけられた。1988年から2000年まで続いたこの世代のデイトナは、後に「ゼニス・デイトナ」と呼ばれる。

つまりA386の三色文字盤とその心臓部は、一度は廃棄を命じられながら残された設計言語である。Chronomaster Originalが再現するのは、この生き延びた意匠にほかならない。

03

復刻から定番へ

2019年、El Primero誕生50周年に際し、ゼニスはA386の意匠を忠実に再現したRevivalを展開した。ゴールドによる限定モデルを中心に、A386の寸法と意匠を写し取ったもので、搭載するのは現代版のCal. 400である。

ただしこれらは復刻という性格が強かった。最新世代のムーブメントを載せた定番のステンレススチール版が登場するのは2021年、Chronomaster Originalとしてである。38mmという原型どおりの寸法、ベゼルを持たないケース、ポンプ式プッシャー、面取りされたラグ。A386の輪郭を受け継ぎながら、これを限定ではなく恒常コレクションとして据えた点に、このシリーズの狙いがある。

発表時のラインアップは、灰・青・アンスラサイトの三色サブダイヤルを持つシルバー文字盤と、新たに加わった黒地に銀のカウンターを置く「リバースパンダ」文字盤であった。ゼニスのコレクション内で、Chronomaster Originalは忠実な復刻に徹するChronomaster Revivalと、41mmのセラミックベゼルを備える現代的なChronomaster Sportのあいだに位置する。

04

1/10秒という設計の現代化

Chronomaster Originalの中核は、El Primero 3600である。2019年に発表され、2021年に量産仕様として投入された世代だ。

毎時36,000振動 (5Hz) という高振動はA386から変わらない。変わったのは、その高振動の使い方である。中央のクロノグラフ秒針は、60秒ではなく10秒で文字盤を一周する。これにより、針が指す位置をそのまま1/10秒として読み取れる。文字盤の周縁には、A386がタキメーターを刻んでいた位置に、この1/10秒スケールが配される。実用上の精密計測よりも、高振動という機構の性格を視覚化する設計判断である。

El Primero 3600はこのほか、パワーリザーブを60時間へ延長し、ストップ秒(ハック)機構を備えた。ローターはゼニスの星形を象った肉抜き仕様で、裏蓋のサファイアクリスタルから見える。2024年には、完全カレンダーとムーンフェイズを加えたEl Primero 3610が派生する。

05

派生の展開と現在地

Chronomaster Originalは数年のうちに、配色と機構の双方で広がりを見せた。2023年には黒地に三色カウンターを重ねたダイヤルが加わり、配色の幅が広がっている。

2024年のChronomaster Original Triple Calendarは、シリーズに完全カレンダーとムーンフェイズをもたらした転機である。曜日と月の窓をカウンター上部に配し、日付を4時半に置く。El Primeroが当初から完全カレンダーを想定して設計されていたという事実を、半世紀を経て形にしたものといえる。

2025年、ブランドの160周年に合わせ、Chronomaster Originalにブルー文字盤版が加わった。サンレイ仕上げの青地に、青・灰・銀の三色カウンターを重ねる構成である。この青は、往年のA3818「カバーガール」を想起させるものとされ、単なる配色変更を超えた含みを持つ。発表から数年、Chronomaster Originalは1969年の顔を保ったまま、現行コレクションの中核を担う位置にある。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Chronomaster Originalの設計思想は、「1969年のA386を、可能なかぎりそのまま現代に持ち込む」という一点に集約される。

最も重視されたのは、ケースの寸法と形状である。直径38mmは、現代のクロノグラフとしては小ぶりだが、A386の比率をそのまま踏襲した結果だ。ベゼルを持たず、ケースサイドからラグへ落ちる稜線、ポンプ式のプッシャー、面取りされたラグ。いずれも1969年の意匠を測り直して再現したものであり、サイズを現代的に膨らませる選択を取らなかった。この自制が、シリーズの輪郭を保っている。

意匠の核心は、重なり合う三色のサブダイヤルにある。灰・青・アンスラサイトという配色と、互いに少し重なるレイアウトは、A386を一目で識別させる記号であり、半世紀にわたってゼニスのクロノグラフの顔であり続けた。Chronomaster Originalはこれを忠実に再現する一方で、黒地のリバースパンダや後年のブルー文字盤など、地の色を変える派生で表情の幅を持たせる。配色は変えても、三色カウンターという骨格は変えない。ここにシリーズの一貫した判断が表れている。

機能設計の上で象徴的なのが、文字盤周縁のスケールである。A386はここにタキメーターを刻んでいた。Chronomaster Originalは、これを1/10秒スケールに置き換えている。中央のクロノグラフ秒針が10秒で一周し、その針が周縁の目盛りを直接指す。高振動機構そのものを文字盤の上で読ませる設計であり、見た目の連続性を保ちながら、内部の進化を可視化する仕掛けである。

同時代の比較対象としては、オメガのSeamasterやSpeedmaster、かつてEl Primeroを積んだロレックスのデイトナが挙がる。Speedmasterが手巻の月面クロノとして機能の物語を負うのに対し、Chronomaster Originalは「高振動・自動・一体型」という機構の系譜を負う。装飾やサイズで主張するのではなく、1969年の比率と三色文字盤を守ることで、シリーズは自らの輪郭を保ち続けている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1969-1972
El Primero 3019 PHC
一体型・高振動の自動クロノ、毎時36,000振動。
2019
El Primero 400
50周年復刻に載せた現代版ベース機。
2021-現在
El Primero 3600
1/10秒直読、60時間、ストップ秒を追加。
2024-現在
El Primero 3610
完全カレンダーとムーンフェイズを備える派生。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1969-1972

三色文字盤の始祖 A386

A386
三色サブダイヤルとEl Primeroを載せた、本シリーズが範とする原型。
2019

50周年のA386復刻

A386 Revival
Cal. 400でA386の意匠を忠実再現、定番ステンレス化の前段階。
2021-現在

定番Original誕生

03.3200.3600 系
El Primero 3600を載せた定番ステンレスとして恒常化。
2024-現在

Triple Calendar

03.3400.3610 系
Cal. 3610で完全カレンダーとムーンフェイズを追加した転機。
2025

160周年のブルー文字盤

03.3200.3600 52.C910
160周年を機に、青地へ三色カウンターを重ねた配色。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive