1969年、A386という起点
1969年1月10日、ゼニスはEl Primeroを発表した。完全一体型の自動巻きクロノグラフ機構であり、毎時36,000振動 (5Hz) という、当時としては突出した高振動で時を刻んだ。この高振動が、1/10秒単位の計測を可能にした。
同じ年、自動クロノグラフの開発をめぐっては複数の陣営が競っていた。ホイヤーやブライトリングらによるクロノマティック陣営 (Cal. 11)、そしてセイコーである。三者はほぼ同時期に製品を市場へ投入しており、「最初」の称号は単純には定まらない。ゼニスはこの1月の発表をもって先頭に立ったと位置づけるが、一体型・高振動という設計の独自性こそが、El Primeroを後年まで生き残らせた要因である。
El Primeroを最初に載せたモデル群のうち、本シリーズが範とするのがRef. A386だ。直径38mmのステンレススチール製ラウンドケース、まっすぐ伸びるラグ、ドーム状の風防。文字盤には、灰・青・アンスラサイトの三色が少しずつ重なり合うサブダイヤルが配された。広告に最初に登場したのはA384とされるが、製造番号の最も若い個体はA386に見られ、ゼニスはこれを最初に製造されたEl Primeroと位置づけている。重なる三色のカウンターは、その後のシリーズを貫く視覚的な記号となった。