設計思想
1. 41mmと37mmの間に空いていた席
オーバーシーズが第三世代へと刷新されたのは2016年のことであり、その中心に据えられたのは41mmケースの4500Vであった。同年には37mmサイズの「オーバーシーズ・スモールモデル」(Ref. 2305V)もSIHH 2016で発表されており、第三世代のラインナップは早期に大小2サイズを揃えた構成で始まっている。
しかし37mmの2305Vは、自動巻きムーブメントCal.5300を搭載し、9時位置にスモールセコンドのサブダイヤルを置く設計だった。ダイヤルの対称性という観点ではこの配置に違和感を覚える層も少なくなく、また41mmの4500Vはラグ・トゥ・ラグ49mmと、女性や小さめの手首には決して扱いやすいサイズではなかった。ふたつの中間に位置するミッドサイズの選択肢は、第三世代の盲点として長く残されていたといってよい。
2. Watches and Wonders 2023での回答
この空白を埋めたのが、Watches and Wonders Geneva 2023で発表された4600V系および4605V系の新作群である。同時に披露された4本のうち、本機Ref. 4600V/200R-B979は18K 5Nピンクゴールドのケースに同素材のブレスレットを組み合わせた34.5mmモデルにあたる。姉妹機としてステンレススチール製の4600V/200A-B980(ブティック専売)、そして35mmにわずかに径を広げたジェムセット仕様の4605V/200R-B978(ピンクゴールド)と4605V/200A-B971(スティール)が同時に登場した。
中央秒針の採用は、この世代の最大の刷新点である。新設計の自動巻きCal.1088/1が初投入され、ダイヤル中央から伸びる3本の針構成が初めて小径オーバーシーズで実現した。
3. 派生と現行ラインナップ
発表後も色違いの派生は段階的に追加されており、緑文字盤などのバリエーションが順次ラインに加えられている。2025年12月には、35mmケースを母体としたフルジェムセットのハイジュエリー仕様も登場した。本機自体は2026年時点でも現行モデルとして継続される。
意匠分析
ピンクゴールドの六角形ベゼルは、ブランドの紋章であるマルタ十字の腕に着想を得た意匠で、第三世代オーバーシーズ全般を貫く識別記号である。ケース径34.5mm、厚さ9.33mm、ラグ・トゥ・ラグは約42mmとされ、41mmの4500Vの49mmから大幅に短縮されている。ケース表面は全体をサテン仕上げとし、ベゼル外周やケースサイドのエッジ、ブレスレットのリンクの稜線にポリッシュを差し込む構成を採る。
文字盤はトランスルーセント・ブルーラッカーを基層とし、サンバースト・サテン仕上げのベースの外周に、ベルベット仕上げのミニッツトラックを配する。アプライドの12個のピンクゴールド・インデックスと細身のピンクゴールド針には、視認性のためのブルー・スーパールミノヴァが充填される。41mmモデルが内側・外側の二重のアウタートラックを持つのに対し、本機ではミニッツトラックを一段に整理しており、より静かなダイヤル面となっている。3時位置には枠付きのデイト窓を置く。
ブレスレットは18K 5Nピンクゴールド製で、ハーフ・マルタクロスを象って成型されたリンクが、ポリッシュとサテンの切り分けによって陰影を持つ。クラスプは三段折り式で、プッシュピースとコンフォート・アジャストメント機構を備える。標準でダークブルー・グレインカーフレザーとダークブルー・ラバーの2本がクイックリリース機構付きで同梱され、ベゼル下部のリリースボタンで工具なしの交換に対応する。
ムーブメントは自社開発のCal.1088/1で、直径20.8mm、厚さ3.83mm、144部品で構成され、毎時28,800振動 (4Hz)、約40時間のパワーリザーブを得る。22K金製のローターには方位を象ったコンパス・ローズの装飾が彫られ、オーバーシーズが掲げる「旅」のモチーフを引き継ぐ。ムーブメントは軟鉄製のインナーケースで覆われ、耐磁構造を備える。
系譜と歴史
2023年3月から4月にかけてジュネーブで開催されたWatches and Wonders Geneva 2023において発表された。同時に披露されたオーバーシーズ・セルフワインディングの新サイズ群は4本構成で、本機Ref. 4600V/200R-B979(18Kピンクゴールド、ブルーダイヤル、34.5mm)に加えて、ステンレススチール製でブティック専売とされた4600V/200A-B980、35mmジェムセット仕様の4605V/200R-B978(ピンクゴールド、ピンクダイヤル)と4605V/200A-B971(スティール、ピンクダイヤル)が同時に発表されている。発売時の北米向け参考定価は52,000米ドルとされた。
発表後も同シリーズには色違いの派生が段階的に加えられている。グリーンラッカー文字盤を組み合わせた同型のRef. 4600V/200R-H134等が後年追加されたと伝わる。2025年12月には、35mmケースに1,430個のバゲットおよびブリリアントカット・ダイヤモンドを敷き詰めたフルジェムセットのハイジュエリー仕様(ピンクゴールドおよびホワイトゴールド)が追加され、シリーズ最上位の意匠が確立した。本機Ref. 4600V/200R-B979自体は、2026年時点においても現行モデルとして製造が継続されている。