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VACHERON CONSTANTIN · SERIES

Overseas

オーヴァーシーズ

222から受け継いだ意匠と、旅のための運用思想。1996年、ヴァシュロン・コンスタンタンが世に問うたラグジュアリースポーツ。

34.5 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Overseasは、ヴァシュロン・コンスタンタンが1996年に発表したラグジュアリースポーツコレクションである。1977年のリファレンス222を直接の祖先とし、マルタ十字を抽象化した多角ベゼルと一体型ブレスレットを意匠の核に据える。現行は2016年に登場した第三世代で、Self-Winding、Chronograph、World Time、Dual Time、Perpetual Calendar、Tourbillonを擁する。スチール、レザー、ラバーの三本のストラップを工具なしで交換できる独自の機構を備え、「旅する者」のための時計として位置づけられている。

02 — STORY · 物語

Overseas(オーヴァーシーズ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1970年代、ラグジュアリースポーツの夜明け

1755年創業のヴァシュロン・コンスタンタンが最も得意としてきたのは、複雑機構を備えた金無垢のドレスウォッチだった。だが1970年代、業界はクォーツショックに揺さぶられる。同時期にオーデマ ピゲがロイヤルオーク(1972年)、パテック フィリップがノーチラス(1976年)を発表し、ステンレススチール製ラグジュアリースポーツウォッチという新しい鉱脈が掘り当てられていた。

ヴァシュロン・コンスタンタンが応えたのは1977年、創業222周年を機に発表したリファレンス222である。当時の若手デザイナー、ヨルク・ヘイセック(Jörg Hysek)が設計したこのモデルは、トノー型のモノブロックケース、一体型ブレスレット、円周に切り欠きを刻んだベゼルを備えていた。5時位置に小さなマルタ十字が埋め込まれている。これが後年、Overseasコレクションを貫く視覚的な印となる。ムーブメントはCal. 1121で、ジャガー・ルクルトCal. 920をベースとした極薄自動巻きである。222は1980年代半ばまで生産され、その後333、Phidiasといった派生モデルを経て、いったん表舞台から姿を消す。

02

1996年、Overseasという名前

1996年、ヴァシュロン・コンスタンタンはヴァンドーム・ラグジュアリー・グループ(現リシュモン)の傘下に入る。新体制下で最初に大きく押し出された製品が、Overseas Phase 1であった。社内デザイナーのヴァンサン・カウフマンと外部デザイナーのディノ・モドロが設計を担当し、222のDNAを継承しながら「世界を旅する者のための時計」として再構築された。

Phase 1の中核はRef. 42040(37mm)。後の更新でRef. 42042となる。八つの切り欠きを持つベゼルはマルタ十字を抽象化したもので、リューズガードを備えたケースには150m防水が確保された。搭載されたCal. 1310は、ジラール・ペルゴCal. 3100をベースとしたCOSC認定の自動巻きである。1999年、シリーズ初のクロノグラフRef. 49140が追加される。Frédéric Piguet Cal. 1185をベースとするCal. 1137は、コラムホイール制御とビッグデイトを備え、Overseasが「コレクション」として展開していく端緒となった。

03

2004年、Phase 2 — 大型化と意匠の刷新

2000年代に入ると、業界全体がケース径の大型化へ傾いていく。2004年、ヴァシュロン・コンスタンタンはOverseasを大幅にリニューアルし、第二世代を発表する。三針モデルはRef. 47040となり、ケース径は42mmへと拡大された。

最も大きな視覚的変化はブレスレットにあった。Phase 1の多リンク型から、半マルタ十字をモチーフにしたセンターリンクへと刷新され、これが今日まで続くOverseasの象徴的なディテールとなる。リューズガードは廃され、ケースとブレスレットの一体感は一層滑らかになった。機械面では、三針モデルがCal. 1126(ジャガー・ルクルトCal. 889ベース)を搭載し、ムーブメント周囲には軟鉄製インナーケースを備えて25,000A/mの耐磁性能を確保した。Phase 2は拡張の時期でもあり、2006年にはデュアルタイムRef. 47450(Cal. 1222)が、その後パーペチュアルカレンダーやスケルトン派生も加えられ、Overseasは複雑機構を擁する総合コレクションへと脱皮した。

04

2016年、Phase 3 — 自社製化とジュネーヴ・シール

2016年、ジュネーヴSIHHでヴァシュロン・コンスタンタンは第三世代Overseasを発表する。意匠の刷新だけでなく、機械と運用思想を根本から見直した世代である。

三針モデルRef. 4500V(41mm)はCal. 5100、クロノグラフRef. 5500V(42.5mm)はCal. 5200、ワールドタイムRef. 7700V(43.5mm)はCal. 2460 WTを搭載。すべて自社製で、ジュネーヴ・シール(Poinçon de Genève)認定の高仕上げ機械である。Cal. 5100は172部品から構成され、毎時28,800振動(4Hz)で60時間のパワーリザーブを備える。22Kゴールド製ローターには方位を示す風配図(コンパスローズ)が彫刻され、旅というテーマと結びつけられている。

Phase 3で最も実用面に影響を与えたのが、工具不要で装着者自身がブレスレットとストラップを交換できる「イージーフィット」機構である。スチールブレスレット、ラバー、レザーの三本が標準同梱され、装着者は数秒で見た目と性格を切り替えられる。一本の時計が三本分の表情を持つこの仕組みは、ラグジュアリースポーツの世界で独創的なソリューションとして受け止められた。

05

複雑機構の現代的展開

第三世代の登場以降、Overseasは複雑機構コレクションとしても拡大を続ける。2016年にはCal. 1120 QPを搭載したパーペチュアルカレンダー ウルトラスリンが、2017年にはデュアルタイムRef. 7900Vが追加された。2022年にはペリフェラルローターを備えるCal. 2160搭載のOverseas トゥールビヨンが投入され、2024年にはチタングレード5のケースとブレスレットによる軽量版も展開されている。

2025年、ブランドは創業270周年を迎え、Overseasにも新作が加わった。Perpetual Calendar Ultra-Thinに新色が登場し、シリーズ初のミニッツリピーターを含むOverseas Grand Complication Openface(Ref. 6510V)も発表されている。発表当初は控えめな選択肢と見られたOverseasは、第三世代以降、自社製機械、ジュネーヴ・シール、独自のストラップ交換機構を備えるコレクションとして再定義され、現在はカテゴリーの中で独自の位置を確立している。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Overseasの設計言語は、二つの要素を軸に組み立てられている。一つは1977年のリファレンス222から受け継いだマルタ十字の意匠言語、もう一つは「旅する者」という用途定義である。

ベゼル外周には六つ(初期は八つ)の切り欠きが刻まれる。これはヴァシュロン・コンスタンタンが1880年に商標として採用したマルタ十字を抽象化したもので、ロイヤルオークの六角ビス頭、ノーチラスの両側突起と同様、シリーズを一目で識別させる視覚的アンカーとなる。第二世代以降、ブレスレットのセンターリンクも半マルタ十字をかたどった意匠となり、ケースから腕に至る視線の流れの中で同じモチーフが反復される。5時位置にひっそりと埋め込まれた小さなマルタ十字は、Ref. 222から一貫して受け継がれた象徴である。

機能設計においては、150m防水と耐磁性能(軟鉄製インナーケース、25,000A/m)が一貫した基準として維持されてきた。装飾性ではなく実用性を担保するための数値であり、これはオフィスでも水辺でも使える時計、という性格を支えている。

意匠面で特徴的なのは、強さよりも均衡を選ぶ自制である。同時代のロイヤルオークがビス頭をあえて見せる機能美の表明であり、ノーチラスがポートホール状の側面突起に船舶のメタファーを刻むのに対し、Overseasは装飾要素を抑え、ベゼルの切り欠きとブレスレットのモチーフ反復という二点に視覚的緊張を集約する。

第三世代(2016年)で導入されたイージーフィット機構は、Overseasの設計思想を最もよく象徴している。スチールブレスレット、ラバー、レザーの三本のストラップを工具なしで交換できるこの仕組みは、「一本の時計を多様な場面で着用する」という旅の思想を、所有者の手で実現可能な形に落とし込んだものである。形状の物語性ではなく、運用の柔軟性に重きを置く——その思想が、Overseasを同カテゴリーの他のモデルから明確に分けている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1996-2004
Cal. 1310 / 1311
ジラール・ペルゴ3100ベース、COSC認定3針機。
1999-2016
Cal. 1137
Frédéric Piguet 1185改、ビッグデイト搭載。
2004-2016
Cal. 1126 / 1222
JLC系ベースの自動巻、軟鉄耐磁ケースを採用。
2016-現在
Cal. 5100 / 5200 / 2460 WT 系
完全自社製化、ジュネーヴ・シール取得の新世代。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1977-1985

222(直接の前身)

222
創業222周年記念モデル、Overseasの意匠的祖先。
1996-2004

Phase 1

42040 42042
37mm、Cal. 1310搭載、Overseasの名で再出発。
2004-2016

Phase 2

47040
42mmに大型化、半マルタ十字ブレス採用の世代。
2016-現在

Phase 3

4500V
自社製Cal. 5100搭載、即時交換ストラップ機構を導入。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive