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VACHERON CONSTANTIN · SERIES

Métiers d'Art

メティエ・ダール

エナメル、彫金、ギヨシェ、宝石嵌め — 腕時計の文字盤を装飾美術のキャンバスに変えた、ヴァシュロン・コンスタンタンの工芸系譜。

40 mm
01 — 概要 / SUMMARY

ヴァシュロン・コンスタンタンが2004年に「Tribute to Great Explorers」で正式に確立した、装飾芸術の系譜である。エナメル絵付け、ギヨシェ、彫金、宝石嵌めといった工芸を文字盤に集約し、機械式時計を装飾美術の表現舞台へと押し上げた。Les Masques、La Symbolique des Laques、Les Univers Infinis、Tribute to Great Civilisationsなど、テーマごとに少数限定で展開される。

02 — STORY · 物語

Métiers d'Art(メティエ・ダール)、これまでの軌跡

The story of this series
01

装飾技芸の系譜と1990年代の予兆

ヴァシュロン・コンスタンタンは1755年の創業以来、エナメル絵付け、彫金、ギヨシェ、宝石嵌めといった装飾技芸を時計に取り入れてきた。19世紀から20世紀初頭にかけては懐中時計や装身具時計に装飾が施されたが、20世紀後半には装飾技芸そのものが時計業界全体で衰退の道を辿る。クォーツショックを経た時計産業が機械式の精度や複雑機構へと回帰するなかで、装飾工芸を時計の主役に据える試みは長らく傍流であった。

転機は1990年代に訪れる。同社のスタイル&ヘリテージ部門ディレクターであるクリスチャン・セルモニ氏は、当時を「これらの工芸を絶やさぬよう、ごく少数の懐中時計をミニチュアエナメル文字盤で生産していた」と語っている。1996年に発表された「Mercator」は、16世紀のフランドルの地理学者ジェラルドゥス・メルカトルの地図をシャンルヴェ・エナメルで文字盤に描いた腕時計であり、装飾工芸を主役にした腕時計シリーズの先駆として位置づけられる。1996年には博物学者ジャン=ジャック・オーデュボンの鳥類画を同じくシャンルヴェで描いた限定モデルも続いた。

02

2004年、シリーズとしての確立

「Métiers d'Art」という名のもとに装飾工芸シリーズが正式に立ち上がるのは2004年である。フェルナン・マゼランと鄭和という二人の航海者を主題にした「Tribute to Great Explorers」が最初のオプスとして発表され、グラン・フー・エナメルによる古地図の文字盤と、自社製キャリバー1120 ATを組み合わせた構成が示された。1120 ATは時表示用のサテライト・ホイール機構を備え、文字盤中央の絵柄を妨げないようアラビア数字が円弧状の分目盛りを横断していくという、装飾を主役に据えるための専用設計であった。

2008年にはマルコ・ポーロとクリストファー・コロンブスを主題にした第二オプスが、2021年にはバルトロメウ・ディアス、ヴァスコ・ダ・ガマ、ペドロ・アルヴァレス・カブラルを主題にした第三オプスが続き、三部作として完結する。

03

2007〜2009年、「Les Masques」という転換点

シリーズの方向性を決定づけたのは、2007年から2009年にかけて3年計画で展開された「Les Masques」である。ジュネーヴのバルビエ=ミュラー博物館が収蔵する原始美術の仮面12点を主題に、各年4点ずつ・各25本限定で発表された。サファイアクリスタル製の文字盤越しに、金で立体的に彫金された仮面が浮かび、時・分・曜日・日付は文字盤の四隅に配置された窓に読み取らせる。中央を装飾の独擅場とするこの構成は、以降の同シリーズの基本文法となった。

このとき新たに搭載されたキャリバー2460 G4は、2005年の創業250周年を機に開発された自社製自動巻ムーブメントである。「ドラッギング」と呼ばれる時刻表示方式と4窓の周辺配置により、文字盤中央を装飾のキャンバスとして解放するという思想が機械側から裏付けられた。

04

美術との対話 — 多様な工芸の交差点

2010年代に入ると、シリーズはさらに多様な美術と対話を始める。2010年には京都の漆芸家・象彦と協業した「La Symbolique des Laques」が発表され、蒔絵で文字盤と裏蓋を装飾した3年計画の三部作が展開された。同年にはマルク・シャガールがパレ・ガルニエ天井に描いた壁画を主題にした「Chagall & L'Opéra de Paris」が発表され、2013年にはエドガー・ドガを主題にしたグリザイユ・エナメルの「Hommage à l'Art de la Danse」、2012年にはマウリッツ・コルネリス・エッシャーのテッセレーションを主題にした「Les Univers Infinis」が続いた。彫金、ギヨシェ、シャンルヴェ・エナメル、クロワゾネ・エナメル、グリザイユ・エナメル、宝石嵌め、金と螺鈿のマルケトリー — シリーズは装飾工芸の事典のような広がりを得ていく。

05

美術館とのパートナーシップ

2010年代後半以降、シリーズは美術館との正式提携を軸に展開される。2019年にルーヴル美術館との提携が発表され、2023年には同館収蔵品を主題にした「Tribute to Great Civilisations」が発表された。エジプト、ペルシア、ギリシア、ローマの四古代文明を象徴する作品が、シャンルヴェ・エナメルや彫金によって文字盤に再現されている。2025年にはメトロポリタン美術館との提携も発表され、装飾技芸の保存と継承という観点でのコラボレーションが拡張された。

06

270周年と現在地

2025年の創業270周年を機に発表された「Métiers d'Art – Tribute to the Quest of Time」は、20本限定の双面ケース構造を持つ。1930年代の「Bras en l'Air」懐中時計を起点とするレトログラード機構を発展させた新型キャリバー3670を搭載し、512個の部品、6日間のパワーリザーブ、3次元月相、ジュネーヴ・シールを備える。同年には「Tribute to The Celestial」も発表され、12星座をテーマとした12モデルが手彫りのギヨシェとブリリアントカット・ダイヤモンドで構成された。装飾技芸と機械工学とを並行して進化させる姿勢が、現在も同シリーズの中核に据えられている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Métiers d'Artは、単一のケース形状や統一されたデザイン言語を持たない。Patrimony、Traditionnelle、Égérieなど他コレクションのケース、あるいは独自のクラシカルなケースをベースに、テーマに応じてケース径や仕上げが選ばれる。このシリーズを貫くのはケースの形ではなく、文字盤を「絵画のキャンバス」として最大限に解放するという思想である。

その思想を機械側で支えるのが、装飾を主役にするための専用ムーブメント群である。キャリバー1120 ATはサテライト・ホイール式のドラッギング時刻表示を採用し、アラビア数字が文字盤上部の弧状ミニッツトラックを横断する。2005年に開発されたキャリバー2460 G4は、時・分・曜日・日付の四要素を文字盤の四隅に配置された小窓に振り分け、文字盤中央を完全に空ける構成を実現した。針が消えたわけではなく、針の存在を装飾の邪魔にならない位置・形式へと再設計したというのが正確な表現である。

文字盤に展開される技法は、グラン・フー・エナメル、シャンルヴェ・エナメル、クロワゾネ・エナメル、グリザイユ・エナメル、彫金、ギヨシェ、宝石嵌め、金と螺鈿のマルケトリー、蒔絵と多岐にわたる。同一シリーズ内で複数の技法を組み合わせるのが基本で、たとえば「Les Univers Infinis」の「Fish」モデルは、ギヨシェで波紋を彫り込んだ地金にクロワゾネ・エナメルで魚の輪郭を仕切り、色彩を流し込むという二段構えで構成される。

外部の知を呼び込む姿勢も特徴である。バルビエ=ミュラー博物館、京都の象彦、ルーヴル美術館、メトロポリタン美術館 — シリーズは時計工房単独の表現ではなく、装飾美術の専門機関との共同制作という形を取る。ヴァシュロン・コンスタンタン公式の言い回しによれば、装飾技芸は世代を越えて受け継がれるものであり、その継承の場として時計を位置づける。同社のスローガン「One of Not Many(多数ではなく少数)」は、限定生産という商業的選択を超えて、装飾技芸の本来あるべき制作規模に対する姿勢の表明とも読める。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1990年代-
Cal. 1003 / 1003 SQ
極薄手巻ムーブメントとそのスケルトン版。
2004年-
Cal. 1120 AT
サテライト・ホイールでドラッギング時表示。
2005年-
Cal. 2460 G4 / G4/2
周辺4窓表示で文字盤中央を装飾用に解放。
2010年代-
Cal. 4400 系
手巻のベースムーブメントとして併用。
2025年-
Cal. 3670
高振動・両レトログラード・天体表示の新型。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1994-2003

前史 — 装飾工芸の腕時計化

Mercator Audubon
シャンルヴェ・エナメルによる古地図・鳥類画の文字盤。
2004-2010

Great Explorers 初代

47070
グラン・フー・エナメルでシリーズを正式に確立。
2007-2009

Les Masques 三部作

86070
金彫金の仮面と四隅窓表示で構成文法を確立。
2010-2014

美術との対話期 — 蒔絵から印象派へ

33222 86222 86090
蒔絵・シャガール・ドガ・エッシャーへの応答。
2017-2023

美術館パートナーシップ期

86222 7620A
Villes LumièresとGreat Civilisationsへ展開。
2025-現在

270周年・現行世代

7200A 6007A
Tribute to the Quest of Timeで新Cal.3670搭載。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive