自社の歴史を題材とするという発想
1991年、ヴァシュロン・コンスタンタンは新たなコレクション「Les Historiques」を発表した。Patrimony(クラシック)、Malteやのちに登場するOverseas(スポーツ)が現在進行形の意匠を担うのに対し、Historiquesに与えられた役割は明確だった——自社の過去そのものを商品化することである。
この発想は当時の業界では異例だった。ヴィンテージに着想を得た新作は珍しくなかったが、自社アーカイブから具体的なリファレンスを選び、原型の名称や由来年号を冠して現代に蘇らせる手法は、1755年以来一度も操業を停止していないマニュファクチュールにしか採れない選択肢だった。