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SINN · SERIES

Diving Watches

ダイビングウォッチ

潜水艦の鋼、曇らない機構、オイル封入の深度。装飾を削ぎ落とした、ドイツ工学のダイバーである。

41 mm – 45 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Sinnのダイビングウォッチは、1994年のロタール・シュミットによる経営継承を機に、機能技術を核とする道具時計として輪郭を得た系譜である。1995年以降のAr除湿技術やオイル封入のHYDRO技術が土台を築き、2005年には潜水艦由来のドイツ製潜水艦鋼を用いたU1が登場する。現行はU1・U50を主力に、UX、U1000、チタンのT50などへ枝分かれし、GSG 9をはじめ実務の現場で使われる工具としての性格を保つ。

02 — STORY · 物語

Diving Watches(ダイビングウォッチ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

技術が形を決めるダイバー

Sinnのダイビングウォッチは、伝統や意匠ではなく技術から輪郭を得た系譜である。1994年、エンジニアのロタール・シュミットがSinnをHelmut Sinnから引き継ぎ、社名をSinn Spezialuhrenとした。彼はIWCで生産部門の経験を積んだ人物であり、就任とともに自社開発の機能技術へ舵を切る。同年の磁場耐性モデル244を皮切りに、ダイバーズウォッチも「素材と機構で過酷な環境に応える」という思想で組み立てられていく。売るための装飾ではなく、潜るための工学。これがこのシリーズの出発点である。

02

曇らない時計とオイル封入

潜水で文字盤が曇ることは、視認性を奪う安全上の問題である。Sinnはこの課題に二つの方向から取り組んだ。1995年のチタン製低温ダイバー203「Arktis」では、ケース内を不活性ガスで満たし硫酸銅の乾燥カプセルで湿気を抑えるAr除湿技術を採用する。翌1996年のModel 403 HYDROでは、ケース内部をシリコンオイルで満たすHYDRO技術を投入した。オイル封入は空気を排し、500気圧(5,000m)を超える深度耐性と、あらゆる角度からの視認性をもたらす。ただし機械式の脱進機はオイル中で動かないため、HYDROは石英ムーブメントを前提とする。1997年にはこれらが実務用の計時器シリーズEZMへ整理され、EZM 2は警察特殊部隊GSG 9の仕様に合わせて開発されたと伝わる。2001年のEZM 3はその思想を引き継ぎ、最長寿のEZMダイバーとして現在も生産が続く。

03

潜水艦の鋼 — U1の登場

シリーズの性格を決定づけたのは、2005年のバーゼルワールドで発表されたU1である。ケースには、潜水艦メーカーThyssenKrupp Marine Systemsが供給する、ドイツ海軍212型潜水艦の船殻と同じ鋼材が用いられた。「U」はドイツ語で潜水艦を指すU-Bootに由来する。この鋼は海水耐性と無磁性に優れ、Tegiment処理で表面硬度は約1,500ビッカースに達する。一般的な316Lの約220ビッカースを大きく上回る値である。U1は44mmケースで1,000m防水、回転ベゼルはケースに固定され不意の脱落を防ぐ構造とした。同時に発表されたU2(EZM 5)は2,000m防水とUTC針を備える。Sinnはこの年から、ダイバーをDNVによる独立認証の対象とし、時計の防水規格にとどまらず欧州のダイビング装備規格に照らして検証している。

04

深度と用途の拡張

潜水艦鋼を得たシリーズは、用途ごとに枝を伸ばす。2006年のUX(EZM 2B)は、潜水艦鋼ケースにHYDROのオイル封入を組み合わせ、ケース自体は極端な深度に耐える設計とした。長寿命電池の石英を積み、整備時は本国へ送り返す。2008年には潜水艦鋼のダイビングクロノグラフU1000(EZM 6)が加わる。Valjoux 7750を基にした自社改修ムーブメントSZ02を積み、プッシャーは水中でも操作できる。2012年には、より軽量なチタンを用いたT1・T2が登場した。T1は45mmで1,000m、T2は41mmで2,000m防水と、潜水艦鋼の系列を素材違いで補完する。

05

小型化という転機 — U50と現在

44mmのU1は道具として完成度が高い一方、日常の腕には大きいという声が長く続いた。2020年、Sinnは41mm・厚さ約11mmのU50でこれに応える。潜水艦鋼とTegiment、固定ベゼル、視認性最優先の文字盤というU1の設計言語を保ちながら、500m防水へ整理し、装着性を引き上げた。U50は短期間で派生を増やし、チタンのT50(2023年)、オイル封入のU50 HYDROへと広がっている。2005年の潜水艦鋼採用から20年の節目には、退役した潜水艦の鋼を用いた記念モデルも編まれた。道具としての一貫性を保ったまま、シリーズは現在も拡張を続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Sinnのダイバーを貫く設計思想は、装飾ではなく工学で信頼性を語ることである。このシリーズは「何を変えないか」が明確で、過酷な環境での確実な計時という一点に資源を集中する。意匠の新しさより、検証可能な性能を優先する姿勢が一貫している。

中核は素材と機構にある。潜水艦由来の鋼は海水耐性と無磁性に優れ、Tegiment処理で傷に強い表面を得る。Ar除湿技術はケース内を不活性ガスと乾燥剤で乾いた状態に保ち、文字盤の曇りという安全上の弱点を断つ。HYDROのオイル封入は、空気を排することで深度耐性と全方位の視認性を同時に解決する。これらは見た目のためではなく機能として存在し、結果として独特の表情を生む。技術が先にあり、デザインは後からそれを写し取る。

意匠言語もまた機能から導かれる。ビーズブラスト仕上げのマットなケースは反射を抑え、太い夜光針と明快なインデックスが暗所での即読性を支える。回転ベゼルはケースに固定され、衝撃で外れたり不意に回ったりしない。これは計測した潜水時間を守るための判断である。U1やU50ではリューズを4時位置に置き、手の甲への干渉を避ける。色や装飾を足さず、サイズも必要以上に誇張しない自制が、道具としての佇まいを保つ。

ベゼルは時間計測の道具であると同時に、視覚の起点でもある。文字盤は黒を基調に情報を絞り、針とインデックスのコントラストを最優先する。同時代のスイス勢、たとえばロレックス サブマリーナーやブランパン フィフティ ファゾムスが象徴性や普遍的な美を磨いたのに対し、Sinnは認証可能な性能と整備性を前面に置く。長い世代史を持つ系譜ではないが、素材と機構の一貫性が、ひと目でSinnと分かる「道具の顔」を作り上げている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1995-2005
ETA 2824-2 / 2892-A2 系 ほか
EZM初期の三針ダイバーが用いた調達自動機。
1996-現在
ETA サーモ石英 (Cal. 955 系 ほか)
HYDRO=オイル封入モデル専用の石英機。
2005-現在
ETA / Sellita 自動 (SW 200-1・SW 300-1)
U1・U50など主力三針ダイバーの自動機。
2008-
SINN SZ02 (Valjoux 7750 ベース)
U1000のダイビングクロノ用に自社改修。
2012-
ETA 2892-A2
T1・T2のチタンダイバーが搭載した自動機。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1995-1997

除湿とオイル封入の祖型

Model 203 Model 403
チタン低温ダイバーとオイル封入で、Sinn流ダイバーの技術基盤を築く。
2001-現在

実務用ミッションダイバー

EZM 3
左リューズと簡潔な文字盤。最長寿のEZMダイバーとして現行を続ける。
2005-現在

潜水艦鋼ダイバーの初代

U1 U2 (EZM 5)
潜水艦由来の鋼を初採用。1,000m防水のU1がシリーズの性格を定める。
2006-現在

潜水艦鋼×オイル封入

UX (EZM 2B)
潜水艦鋼にHYDROを組み合わせ、極深度と全方位視認性を石英で両立。
2008-

潜水艦鋼のダイビングクロノ

U1000 (EZM 6)
潜水艦鋼で1,000m防水。水中で操作可能なクロノグラフを実現する。
2012-

軽量チタンのダイバー

T1 T2
軽量チタンを採用し、1,000m/2,000m防水で潜水艦鋼系を補完する。
2020-現在

小型化した現行の主力機

U50
41mm・厚さ約11mmへ縮小。設計言語を保ち装着性を高めた現行の主力。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive