設計思想
36mmへ戻った後の空白
ロレックスは2021年、約11年続いた39mm 214270を生産終了とし、初代1953年モデルの寸法に立ち返る形で36mmの124270を投入した。オイスタースチール単色の124270に加え、エクスプローラー史上初のイエローローレゾール仕様となる124273も同時発表され、コレクションは小さな2モデルだけで構成されることになった。
この36mm回帰はヴィンテージへの忠実さと装着感の上品さの両面で歓迎される一方、「サイズが小さすぎる」という声も招いた。214270で39mmに慣れた層、そして他のロレックス・スポーツモデルとサイズ感を揃えたい層からは、より大きなエクスプローラーを求める要望が残された格好である。
70周年に投入された初の40mm
その2年後、2023年3月27日のWatches and Wondersで発表されたのが本作224270である。エクスプローラー誕生70周年にあたるこの年、ロレックスは同シリーズに初めて40mmという寸法を持ち込んだ。214270の39mmではなく40mmが選ばれたことで、現行サブマリーナーやデイトジャスト41とラグ幅・直径が揃い、ロレックス・スポーツモデルとしての「現代基準」に組み込まれた格好となる。
224270は124270を置き換えるためのモデルではない。発表と同時に36mmの124270および124273はそのままラインに残され、エクスプローラーは初めて1つのシリーズが複数サイズで並列展開される構成となった。同シリーズ内で複数サイズが用意されるのは、ロレックスのスポーツモデルではヨットマスターに次ぐ稀少な事例である。
「ほとんど何も変えない」という設計判断
224270の意匠的選択は、徹底して変更を最小限に留めることに振り切られている。ダイヤルレイアウト、針形状、ベゼル、ブレス構造に至るまで、36mm 124270と本質的に同一であり、ケース径とラグ幅、各要素の比率だけが拡大されている。1953年から続くエクスプローラーの設計言語に対し、寸法以外の介入を最小化した格好と言える。
その背後には、エクスプローラーというモデルが背負う制約の大きさがある。スムースベゼル、3列オイスターブレス、3-6-9のアラビアインデックスと黒ダイヤルという基本様式は、70年にわたり大幅な変更を拒んできた。224270が示したのは、その制約を維持したまま現代的なケースサイズへ到達するための、ロレックスらしい慎重な解答とも読める。
意匠分析
ケースとプロポーション
ケース径は40mm、厚さは11.6mmで、同じCal.3230を搭載する36mm 124270と厚さを揃えている。薄型のプロポーションを保ったまま直径だけを引き上げた構成である。ラグ間距離は46.3〜46.5mm程度と伝わり、前任の39mm 214270の約47mmからわずかに短縮された一方で、直径は1mm増えている。
ラグ幅は20mmから21mmへと拡大された。これは現行サブマリーナーやデイトジャスト41と共通の寸法であり、ラグ内側を削り込む手法によって実現されている。同手法は新世代サブマリーナーやエクスプローラーIIでも採用されており、ブレスのエンドリンクがケース側の凹みに収まる、より一体感のある取り付け構造へと刷新されている。
ダイヤルと針
文字盤は光沢のあるブラックラッカーで、3・6・9のアラビア数字と12時の逆三角形、その他のバトンインデックスがすべて18kホワイトゴールドの植字とされる。インデックスと針にはクロマライト夜光が充填され、暗所で青色に長時間発光する。針はメルセデス時針、バトン分針、ロリポップ秒針の組み合わせで、サブマリーナーやGMTマスターと共通するスポーツモデルの基本文法に従う。
「Explorer」の文字位置は12時直下、「Oyster Perpetual」表記の下に置かれた。これは初代1953年モデルから受け継がれる古典的なレイアウトであり、214270で6時側に移されていたものが124270で復帰し、224270にも継承された配置である。直径が大きくなった分、数字・インデックス・各文字表記は比例して拡大されている。
ムーブメントとブレス
搭載されるCal.3230は2020年に発表されたデイト無しの世代キャリバーで、214270のCal.3132を置き換える。クロナジー・エスケープメントとパラクロム製ヒゲゼンマイ、パラフレックス耐衝撃機構を備え、パワーリザーブは約70時間、振動数は毎時28,800振動 (4Hz)、日差は-2/+2秒以内のSuperlative Chronometer基準を満たす。
ブレスは3列のオイスターで、トップ面はサテン、サイドはポリッシュ仕上げ。オイスターロック・セーフティクラスプと5mm伸縮のイージーリンクを備える。ケースバックは無装飾のねじ込み式で、ツインロック竜頭とともに100m防水を確保する。
系譜と歴史
2023年3月27日、ジュネーブで開催されたWatches and Wondersでロレックスは224270を発表した。エクスプローラー誕生70周年にあたるこの年、現行36mmモデル124270と並ぶ40mm版が初めて投入され、エクスプローラーの歴史上初めて1つのコレクションが2サイズで並列展開される構成へと舵を切った。
直接の前任とされる39mm 214270は、2010年バーゼルワールドで登場し、2016年頃に針の延長と3-6-9インデックスへの夜光追加を経て、いわゆるMk Iダイヤルから「Mk II」と呼ばれる仕様へ移行した経緯を持つ。214270は2021年に生産終了となり、36mmの124270が後継として投入されたが、市場ではこの36mm回帰を歓迎する声と並んで、より大きなサイズを求める声も少なくなかった。224270はその空白を埋める形で約2年後に追加投入された格好になる。
発売は2023年春で、当初の参考定価はヨーロッパで7,650ユーロ、英国で6,450ポンド、米国で7,700ドル前後とされた。発表時から正規流通量は限られ、各市場で待機リストが形成された。
発表以降、文字盤・ケース・ブレスの仕様に大きな変更は公表されていない。並行して、36mm 124270および18kイエローローレゾールの124273が継続生産されており、224270はそれらと並ぶオイスタースチール40mmの単独構成として位置づけられる。
2026年4月のWatches and Wondersでもエクスプローラー40の仕様変更や派生の追加は発表されておらず、224270は現行ラインアップに留まっている。同年はオイスターケース誕生100周年にあたり、ロレックスはオイスター パーペチュアルやヨットマスターIIなどに節目の更新を集中させた一方で、エクスプローラー40については現状維持の姿勢を示した。