設計思想
三度目のブロンゾが生まれた地点
PAM00671は2017年1月、ジュネーブで開催されたSIHHでパネライが発表したLuminor Submersible 1950 3 Days Automatic Bronzoの参照番号である。
2011年のPAM00382、2013年のPAM00507と続いたブロンゾの系譜のなかで、本機は三本目に位置する。初代・二代目はいずれも、その後も定価を上回る価格で取引されるほどの人気を保っており、ブロンゾはパネライの特別仕様シリーズのなかでも象徴的な存在として定着していた。同年のSIHHでは、実験機LAB-IDとともに半ダースほどの新しいSubmersibleが並んだ。PAM00671は、その素材横断ラインナップの中で「ブロンズ」を担う一本として配置されていた。
緑から青へ、P.9000からP.9010へ
第三作にあたる本機が採った選択は、外形と内部の両面で前二作からの「世代更新」と呼ぶべきものであった。47mm径のブロンズケース、チタンバックの構成、300m防水、反時計回りに動く潜水時間計算ベゼルといった基本構造は初代から継承される。一方、文字盤の地色は前二作の緑系から濃紺へ、ムーブメントは初代のCal.P.9000から、薄型化された新世代のCal.P.9010へと差し替えられた。
緑から青への変更は、単なる色違いに留まらない。緑の前二作にはミリタリーウォッチの系譜上の引用が色濃く残っていたのに対し、本機の青は設計の重心をやや海洋的な情緒へとずらしている。サンドイッチ構造の文字盤の下層には青く発光するSuper-LumiNovaを塗った板が置かれ、インデックスの切り抜きを下から光らせる。
「Luminor」名下で完結した最後のブロンゾ
ブロンゾの系譜は本機の後、2019年のPAM00968でブラウンのセラミックベゼルインサートを得てさらに刷新される。同じ2019年にはSubmersible自体がLuminorから独立した単独コレクションとして再編されたため、PAM00671は「Luminor Submersible 1950」の名で一般に販売されたブロンゾとしては最後の世代となる(2017年には慈善のためのユニークピースPAM00907も作られている)。系譜のなかで本機が担うのは、Cal.P.9010導入と濃紺文字盤への転換を、旧コレクション名の下で果たした一作という役割である。
意匠分析
PAM00671の意匠は、Luminor 1950ケース固有のクッション形状を継承しつつ、ブロンズという素材を軸に組み立てられている。47mm径のケースはブラッシュ仕上げを施されたブロンズ無垢で、銅と錫を主体とした合金が用いられる。経年と空気との接触により表面が酸化し、緑がかった褐色のパティナへと変化していくことが前提となっている。一方ケースバックはチタン製で、サファイアの覗き窓を備える。皮膚に触れる面にブロンズを直接当てない配慮であり、初代PAM00382から踏襲された構成である。
リューズには、パネライ特許の「クラウンガード」を備える。レバー式のロックブリッジでリューズを押さえ込む独自の構造で、Luminor系列としての視覚的シグネチャーであると同時に、300m防水を担保する実用要素でもある。
ベゼルもブロンズ製で、反時計回りの単方向回転式である。表面には潜水時間計算用のグラデュエートスケールが直接刻まれ、ケースと同様にパティナの発達がそのまま視認される。これは2019年のPAM00968で導入されるブラウンのセラミックベゼルインサートとは明確に異なる選択であり、本機までのブロンゾはベゼルを含めて素材変化を受け入れる思想で設計されていた。
文字盤は深い青で、パネライ伝統のサンドイッチ構造をとる。上層の文字盤に切り抜いたインデックスの下から、青く発光するSuper-LumiNovaを塗った下層の板が覗く。9時位置のスモールセコンド、3時位置の日付窓と組み合わせられ、針はパネライ伝統のソードハンドである。
ムーブメントは自社開発のCal.P.9010を搭載する。13¾リーニュ径、厚さ6.0mm、31石、毎時28,800振動(4Hz)。ツインバレル構成で72時間のパワーリザーブを確保し、二点支持のテンプブリッジ、Glucydurテンプ、Incabloc耐衝撃機構を備える。時針は1時間刻みで独立調整が可能で、地球を跨ぐ移動時に分秒を止めずに時刻だけを動かせる構造である。前任Cal.P.9000の7.9mm厚に対し、Cal.P.9010では6.0mmまで薄型化されており、ケース内に若干の余裕が生まれた。
系譜と歴史
PAM00671は、2017年1月16日から20日までジュネーブのPalexpoで開催されたSIHH(Salon International de la Haute Horlogerie)においてパネライが発表した特別仕様モデルである。
参照番号PAM00671として正式公開された本機は、1,000本の限定生産と告知された。前作PAM00382(2011年、1,000本限定)、PAM00507(2013年、1,000本限定)に続く、ブロンズ無垢ケースを採用したパネライの三本目にあたる。初代から二代目を経て本機に至るブロンゾは、いずれも1,000本という同一の生産本数で揃えられた。
生産期間中における文字盤、ベゼル、ムーブメント、ケースバック構成の重要な仕様変更は伝えられておらず、発表時の仕様が1,000本の生産を通じて維持されたとみられる。
2019年のSIHHにおいて、パネライはブロンゾ系譜の次作PAM00968を発表する。2017年のユニークピースPAM00907に倣った濃いブラウン文字盤と、シリーズで初めてのブラウンのセラミック・ベゼルインサートを備え、年間1,000本ずつ作られるレギュラーラインに移行した設計である。同2019年、Submersibleは「Luminor」コレクションから独立した単独コレクションとして再編されており、PAM00671は旧称「Luminor Submersible 1950」の名で一般に販売されたブロンゾとしては最後の生産世代となる。本機自体は発表当時の1,000本限定枠で生産を終えており、現行カタログには既に掲載されていない。
出典
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