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OMEGA · SERIES

X-33 / Z-33

ムーンウォッチを補完するために生まれた、宇宙飛行士が実際に使う多機能計器。アナログとデジタルを統合したクォーツ・スピードマスター。

01 — 概要 / SUMMARY

X-33は、1998年にオメガが発表したアナログ・デジタル併用の多機能クォーツ時計である。機械式のムーンウォッチを置き換えるのではなく、ISS時代の長期ミッションを支える計器として開発された。複数のタイムゾーン、UTC、ミッションタイマー、アラームを備え、NASAの飛行認定を受けている。近年の世代は、ESAと開発したX-33 Skywalkerと、火星時を扱うX-33 Marstimerである。加えて地上の操縦士に向けた派生、Spacemaster Z-33も存在した。宇宙飛行士が儀礼ではなく実務で巻く時計として知られる。

02 — STORY · 物語

X-33 / Z-33、これまでの軌跡

The story of this series
01

ムーンウォッチを補完するという発想

1965年にNASAの飛行認定を受けて以来、機械式のスピードマスター・プロフェッショナルは有人宇宙計画の標準装備であり続けた。だが1990年代、国際宇宙ステーション (ISS) の運用が視野に入ると、求められる時計の性格は変わっていく。

地球を周回するISSでは、乗員は1日に16回の日の出と日の入りを見る。基準時はUTCに統一され、地上管制との連携には複数のタイムゾーンの同時把握が要る。ミッションの経過時間管理、目覚まし、24時間表示——これらを針だけで扱うのは煩雑である。

この更新を推し進めたのが、当時オメガの取締役を務めていた元宇宙飛行士トーマス・スタッフォードだったと伝わる。彼はアポロ計画とアポロ・ソユーズの経験から、新世代の宇宙飛行士に必要な機能を見据えていた。1990年代において、その答えはクォーツだった。極端な温度変化でも精度を保つ温度補正クォーツと、デジタル表示の情報量。機械式の置き換えではなく、用途から導かれた選択である。

02

1998年、X-33という回答

1998年3月28日、テキサス州ヒューストンのNASAジョンソン宇宙センターで、Speedmaster Professional X-33 (Ref. 3290.50) が発表された。会場ではロシアの宇宙ステーション「ミール」との衛星中継が結ばれたと伝わる。通称は「Marswatch」である。

X-33はムーンウォッチに次いで、NASAのスペースシャトル計画で飛行認定を得た2本目のスピードマスターとなった。設計にはNASAとロシアの宇宙飛行士、軍出身のパイロットが関与し、試作機は実地でテストされたとされる。

文字盤上には時・分・秒を示すアナログ針が浮かび、その下にデジタルLCDが広がる。針はボタン操作で待避し、LCDの視界を確保できる。搭載した温度補正クォーツ Cal. 1666 は、-20度から+70度の範囲で日差わずか数秒の精度を保ったとされる。42mmのチタンケースは軽量で、耐磁・耐衝撃性も高い。アナログとデジタルを併せ持つ多機能クォーツの計器という発想自体は、ブライトリングのエアロスペース (1985年) など同時代の他社にも見られた。X-33はその系譜に、スピードマスターの宇宙開発史を重ねた一本である。

03

第2世代と、民生市場からの一時退場

2001年、Ref. 3291.50へと更新される。X-33のリューズは回さず押し引きする方式のため、握りやすいよう同心円状の溝を刻んだ形状に改められた。ベゼルやプッシャーの仕上げも見直されたが、内部の機構と操作系はほぼ共通である。

民生向けの生産は2006年頃に一度終了したとされる。ただしオメガは、政府機関や軍に対しては別のリファレンス (318系) で42mmのX-33を供給し続けた。米政府の文書がX-33を「米国宇宙飛行士に選ばれる時計」と記したのもこの時期である。市販カタログから消えても、現場では使われ続けていた。

04

Z-33 — 地上の操縦士への分岐

2012年、オメガはこの系譜に新しい枝を加える。Speedmaster Spacemaster Z-33 (Ref. 325.92.43.79.01.001) である。X-33が宇宙飛行士のための計器だったのに対し、Z-33は地上のパイロットに向けて再構成された。

意匠の出自は、1969年の「フライトマスター」に連なるオメガのパイロットライン。樽型に近い大ぶりのケースは賛否を呼ぶ独特の造形である。グレード5チタン製で、43×53mm、厚さ約19.9mm。新作の多機能クォーツ Cal. 5666 を搭載し、UTCと2つのタイムゾーン、パーペチュアルカレンダー、クロノグラフ、カウントダウンに加え、10件まで記録できるフライトログを備えた。

特徴的なのは二重のケースバックである。内側が防水を担い、外側との間の空気室がアラーム音を増幅する。騒音の多いコックピットで警報を聞き取るための工夫だった。Z-33は現行カタログには残っていない。

05

Skywalker — ESAと新世代X-33

2014年、バーゼルワールドで民生向けX-33が復活する。Speedmaster X-33 Skywalker (Ref. 318.90.45.79.01.001) は、ケース径を45mmに拡大したグレード2チタン製。1990年代の初代を継ぐ、本格的な後継機である。

この世代の核は、欧州宇宙機関 (ESA) と開発した Cal. 5619 にある。ESAの宇宙飛行士ジャン=フランソワ・クレルヴォワが構想し、特許化された機能群を取り込んだムーブメントだ。基本構造は Cal. 1666 に近いが、LCD表示は再設計されている。ミッション経過時間 (MET) と各フェーズの経過時間 (PET)、3つのアラーム、週番号を含むパーペチュアルカレンダーを扱う。

06

Marstimer — 火星へ向かう視線

2022年、第4世代の Speedmaster X-33 Marstimer (Ref. 318.90.45.79.01.003) が登場する。再びESAとの協働により、有人火星探査の時代を見据えて開発された。

中核は新型の Cal. 5622。Skywalkerの全機能を引き継いだうえで、火星の時刻を扱うMTC機能を加えた。火星の1日は地球より約39分長く、その差を計算して火星の平均太陽時を表示する。さらに、磁場を持たない火星でも真北を割り出せる太陽コンパスを備えた。これらの計算は従来のキャリバーには重すぎ、新しいマイクロコントローラが必要だったとされる。

ムーンウォッチが月面の儀礼的な象徴であり続ける一方、軌道上で実際に使われてきたのはX-33の系譜だった。2026年のアルテミスII計画でも、乗員は第2世代のX-33を腕に巻いていたと報じられている。月から火星へ。計器としてのスピードマスターは視線を更新し続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

X-33/Z-33を貫く設計思想は、「読み取りの速さ」と「情報量」を一本の中で両立させることにある。文字盤の上層には時・分・秒を示すアナログ針が浮かび、その下層にデジタルのLCDが広がる。瞬時の時刻把握は針が担い、複数のタイムゾーンやカレンダー、各種タイマーといった情報量はデジタルが受け持つ。針はボタン操作で文字盤上方へ待避し、LCDの視界を妨げない。二つの表示系の役割分担が、この系譜の設計言語の根幹である。

第二の柱は、実際の使用者から逆算した操作性だ。リューズは回さず押し引きで操作し、ケース周囲に配したプッシャーと組み合わせて多くの機能を呼び出す。グローブを着けたままでも扱える配慮であり、X-33は宇宙飛行士、Z-33はパイロットの声を取り込んで形になった。Z-33の二重ケースバックは、内側で防水を保ちつつ外側との空気室でアラーム音を増幅する。騒音下で警報を確実に届けるための、用途起点の構造である。

機械の選択もまた思想の表れだ。温度補正クォーツは、極端な温度差のなかで安定した精度を保ち、UTCやミッションタイマーといった機能を破綻なく動かす。これは機械式に対する優劣の問題ではなく、運用環境が導いた合理的な帰結である。軽量で耐磁・耐衝撃性に優れるチタンケースも、同じ実用思想から選ばれている。

意匠面では、ムーンウォッチとの距離の取り方に一貫性がある。X-33はあえて月面時計の姿をなぞらず、計器としての独自の顔を持つ。黒い文字盤に白い針とインデックスを置き、コントラストと夜光、バックライトで視認性を最優先する。装飾を足さず、色数を抑える自制が、この系譜の表情を整えてきた。

Z-33だけは例外的に、1969年のフライトマスターに連なる樽型ケースをまとう。同じ表示思想を、宇宙ではなく操縦席という別の文脈へ移した造形だ。同時代には、ブライトリングのエアロスペースという近い性格の時計も存在した。そうした計器系クォーツの系譜のなかで、X-33/Z-33はスピードマスターの宇宙開発史を背景に持つ点で輪郭を異にする。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1998-2006
Cal. 1666 系
温度補正クォーツ。初代・第2世代を駆動。
2012-(生産終了)
Cal. 5666
Z-33専用。フライトログ等の操縦士機能。
2014-2022
Cal. 5619
ESAと開発。MET/PETに対応しLCD刷新。
2022-現在
Cal. 5622
新マイクロコントローラで火星時を演算。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1998-2001

初代 X-33 Marswatch

3290.50
NASA飛行認定の多機能クォーツ、アナログ・デジタル併用の起点。
2001-2006

X-33 第2世代 改良型

3291.50
リューズ形状を改良。民生向けは2006年頃に一旦終了。
2012-(生産終了)

Spacemaster Z-33

325.92.43.79.01.001
フライトマスター由来の樽型、地上の操縦士向け派生。
2014-2022

X-33 Skywalker

318.90.45.79.01.001
45mmへ拡大、ESAと開発した民生X-33の復活。
2022-現在

X-33 Marstimer

318.90.45.79.01.003
火星時と太陽コンパスを追加した第4世代。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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  3. 03 専門メディア Speedy Tuesday - The Omega Speedmaster Pro X-33 1st Gen 専門メディア · Fratello · 2026.10.15 閲覧 Fratello · 2026.10.15
  4. 04 専門メディア Omega launches the Spacemaster Z-33 multi-function pilot’s watch 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.15 閲覧 SJX Watches · 2026.10.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

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