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OMEGA · SERIES

Trésor

デ・ヴィル トレゾア

ムーブメントこそが宝(トレゾア)。1949年のオメガが残した、薄型ドレスウォッチの系譜

40 mm
01 — 概要 / SUMMARY

トレゾア(Trésor)は、1949年にオメガが発表したドレスウォッチの系譜である。「宝(Trésor)」の名が指したのは文字盤上の装飾ではなく、ケースの中で時を刻む口径30mmのマニュファクチュールキャリバーだった。1960年代以降は長く休眠していたが、2014年にデ・ヴィル トレゾア(De Ville Trésor)として復活する。現行ラインは40mm手巻きの紳士用ドレス、スモールセコンド、パワーリザーブ、26mmのミニ トレゾアという派生で構成され、いずれもオメガのドレスウォッチの中で最もミニマルな顔を持つ。

02 — STORY · 物語

Trésor(デ・ヴィル トレゾア)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1949年、宝はムーブメントの中にあった

オメガが「トレゾア」(Trésor)の名を冠したコレクションを発表したのは1949年である。フランス語で「宝」を意味するこの名前が指したのは、文字盤上の装飾でも宝石でもない。ケースに納められた口径30mmのマニュファクチュールキャリバー、その機械そのものだった。

当時のオメガにとって、30mmキャリバーは特別な存在だった。1939年に量産が始まったこの手巻きムーブメントは、懐中時計用機械の小型化ではなく「腕時計のために設計された大径キャリバー」として生まれ、1946年にはキュー天文台のクロノメトリーコンクールで精度部門第1位を獲得している。戦後のオメガの精度の評判を支えたのはこのムーブメントだったとされる。

同じ1949年、オメガはムーブメントの呼称を三桁ナンバリングへ整理し、30T2系列は260番台・280番台へ再編される。これらの手巻きキャリバーを納める器として、薄型ドレスウォッチコレクション「トレゾア」が立ち上げられた。リファレンスには「OT」のプレフィックスが与えられ、ケースは18Kイエローゴールド、ピンクゴールド、ゴールドキャップが用いられた。

02

黄金時代と、長い空白

1950年代を通じて、トレゾアはオメガのドレスウォッチの主力として展開された。キャリバーは進化を重ね、cal. 265、cal. 332、cal. 354、自動巻きcal. 501などが採用された。ケースサイズは34mmから37.5mmが中心。シーマスター(1948年)やコンステレーション(1952年)が「ツール」「精度の象徴」を担ったのに対し、トレゾアは肩書きを必要としない純粋なドレスとして位置づけられた。

しかし1960年代後半以降、トレゾアの名はオメガのコレクションから次第に姿を消す。クォーツショックを経て、ブランドのアイデンティティはスピードマスターとシーマスターへ集約されていった。手巻き薄型ドレスという様式そのものが業界の主流から外れた、半世紀近い空白がここに横たわる。

03

2014年、デ・ヴィルの下での復活

トレゾアの名が公式に戻ってきたのは2014年のバーゼルワールドである。新生コレクションはデ・ヴィルの下位ライン「デ・ヴィル トレゾア」として復活。40mm径、厚さ10.6mmのケースは、3種類のゴールド——イエローゴールド、ホワイトゴールド、そしてオメガ独自の赤色ゴールド合金「セドナ™ゴールド」(Sedna™ Gold)——で展開された。

ムーブメントは新開発のマスター コーアクシャル キャリバー8511。手巻き、3段階のコーアクシャル脱進機、Si14シリコン製ヒゲゼンマイ、二つのバレルによる60時間パワーリザーブと15,000ガウスの耐磁性を備える。文字盤は中央が緩やかに膨らんだドーム型で、「クル・ド・パリ」(Clous de Paris)ギロシェを施したシルバリーオパリン。日付窓は6時位置に置き、12時起点の左右対称を崩さなかった。サファイアクリスタルのケースバックからは、レッドゴールドのテンプブリッジを持つキャリバー8511の全景が見える。「宝はムーブメントの中にある」という1949年の思想が、視覚的に再翻訳された瞬間だった。

04

2019年、スティールと125周年

2019年、トレゾアは二つの方向に同時に動いた。

一つは民主化である。オメガは初のステンレススティールのトレゾアを発表した。Ref. 435.13.40.21シリーズは2014年版のケース寸法を踏襲しつつ、ムーブメントを進化版のキャリバー8910に置き換える。8910はMETAS(スイス連邦計量・認定局)認証のマスタークロノメーターで、毎時25,200振動 (3.5Hz)、72時間パワーリザーブを実現。価格はゴールドモデルの半分以下となった。

もう一つはブランド名「オメガ」自体の周年記念である。1894年に完成した19リーニュの懐中時計用ムーブメント「キャリバー オメガ」がブランド名の起源とされ、その125周年を記念して、イエローゴールドケース・赤エナメル文字盤のデ・ヴィル トレゾア 125周年記念モデル(Ref. 435.53.40.21.11.001)が発表された。搭載キャリバー8929は、オメガ初の「手巻き式マスタークロノメーター」とされる。

05

スモールセコンドとパワーリザーブ

2021年、トレゾアに初めての複雑機構が加わった。デ・ヴィル トレゾア スモールセコンドと、デ・ヴィル トレゾア パワーリザーブの二系統である。前者はキャリバー8934/8935、後者はキャリバー8926/8927を搭載。6時位置のスモールセコンドと、12時位置のパワーリザーブインジケーターが配され、ロゴは対称性を保つために3時側へ移された。

この拡張は、トレゾアが単なる三針ドレスから機構を読ませる設計言語へ一歩踏み出したことを示している。ただし派手な複雑機構は加えず、ドレスとしての品格の範囲内に留めた。シリーズの自制が、ここでも貫かれる。

06

ミニ トレゾアと、現在のトレゾア

レディースラインも同じ方向で進化した。2022年、オメガは26mm径の「ミニ トレゾア」を発表する。ケースサイドにダイヤモンドが弧を描き、ムーブメントはクォーツ式キャリバー4061。ケースバックの「Her Time」鏡面パターンが、装飾品ではなく自身の時間を刻む道具という立ち位置を打ち出した。2024年にはステンレススティールおよびオメガ独自のイエローゴールド合金「ムーンシャイン™ゴールド」(Moonshine™ Gold)の新作群が加わっている。

現在、トレゾアは40mm紳士用の三針および小複雑機構、36mm・39mmのクォーツ、26mmのミニ トレゾアという複数のサイズ・機構を擁する。ムーブメントは多様化したが、ドーム型文字盤、6時位置の日付、湾曲したインデックス、そしてケースバックの向こうに見える手巻きキャリバー——1949年に「宝はここにある」と宣言した時計のコードは、現代に正確に受け継がれている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

トレゾアの設計言語は、「宝(Trésor)は文字盤の上ではなく、ケースの中にある」という1949年の宣言を出発点としている。だからこそ、このシリーズは70年以上にわたって、文字盤上で目立たないことを選び続けてきた。

第一の規範は、薄さである。現行の40mm三針モデルの厚みは10.6mmにすぎず、これは手巻きコーアクシャル脱進機、シリコン製ヒゲゼンマイ、二つのバレル、自由テンプを内包したマスタークロノメーターキャリバーとしては異例の薄さである。トレゾアは「薄型ドレスにテクノロジーを詰める」という、業界では稀な方向性を選んでいる。同じドレスウォッチ領域でも、パテック フィリップ カラトラバ(Calatrava)が機械式の純粋さを、ジャガー・ルクルト マスター ウルトラ シン(Master Ultra Thin)が極限の薄さを追求するのに対し、トレゾアは「現代的なロバストネス——15,000ガウスの耐磁性、72時間パワーリザーブ、METAS認証——をドレスのフォーマットで成立させる」という独自の立ち位置にある。

第二の規範は、ドーム形状の徹底である。文字盤は中央が膨らんだドーム型で、その曲率に追随するように、インデックスと針も緩やかに湾曲している。サファイアクリスタルもボックス型で外周がエッジを持ち、1940年代後半の風防のような立体感を生む。平面構成を旨とする現代ドレスとは異なる、ヴィンテージ由来の空気がここにある。

第三の規範は、日付配置の選択である。トレゾアの日付窓は一貫して6時位置にある。3時に置けばブランドロゴとの均衡が崩れ、4時半に置けば設計の妥協が露呈する。6時に置くことで、12時を頂点とした垂直の対称軸が保たれる。スモールセコンドモデルとパワーリザーブモデルにおいても、サブダイヤルは6時と12時に対称配置され、ロゴが3時へと移される。シリーズ全体を貫く対称性へのこだわりは、トレゾアのアイデンティティの中核を成す。

そしてケースバックの哲学がある。サファイアクリスタル越しに見えるのは、レッドゴールドあるいはセドナ™ゴールドのテンプブリッジを持つ手巻きムーブメントの全景である。トレゾアは「宝を内に隠す」のではなく、「宝を裏側から見せる」ことを選んだ。1949年の名前が掲げた宣言は、現代の透明なケースバックを得て、文字通りの意味で完成したと言える。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1949-1960s
Cal. 30 系
戦後の高級手巻、30mm口径、Trésor初代の心臓部。
2014-2019
Cal. 8511
Master Co-Axial手巻、シリコンひげぜんまい搭載。
2017-現在
Cal. 4061
高精度クォーツ、48ヶ月電池寿命、レディース向け。
2019-現在
Cal. 8910 / 8929
METAS認定手巻、72時間PR、鋼用と金用で型番分け。
2023-現在
Cal. 8926
METAS認定手巻、6時位置スモールセコンド搭載。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1949-1960s

初代Trésor誕生

Original Trésor
Cal.30搭載のジェントルマン・ドレスウォッチ、薄型37.5mm。
2014-2019

70年ぶり復活

ゴールド Trésor 40mm
70年ぶりの復刻、Cal.8511 Master Co-Axial搭載のゴールド機。
2017-現在

レディース展開

Ladies 36 39mm
Cal.4061高精度クォーツ、ダイヤモンドベゼル付き36/39mm。
2019-現在

Master Chronometer化

435.XX (40mm)
Cal.8910(鋼)/8929(金)で日付追加、METAS認定の現行モデル群。
2023-現在

スモールセコンド版

Small Seconds 40mm
Cal.8926搭載、6時位置スモールセコンド、現代的なドレス系として展開。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive