1949年、宝はムーブメントの中にあった
オメガが「トレゾア」(Trésor)の名を冠したコレクションを発表したのは1949年である。フランス語で「宝」を意味するこの名前が指したのは、文字盤上の装飾でも宝石でもない。ケースに納められた口径30mmのマニュファクチュールキャリバー、その機械そのものだった。
当時のオメガにとって、30mmキャリバーは特別な存在だった。1939年に量産が始まったこの手巻きムーブメントは、懐中時計用機械の小型化ではなく「腕時計のために設計された大径キャリバー」として生まれ、1946年にはキュー天文台のクロノメトリーコンクールで精度部門第1位を獲得している。戦後のオメガの精度の評判を支えたのはこのムーブメントだったとされる。
同じ1949年、オメガはムーブメントの呼称を三桁ナンバリングへ整理し、30T2系列は260番台・280番台へ再編される。これらの手巻きキャリバーを納める器として、薄型ドレスウォッチコレクション「トレゾア」が立ち上げられた。リファレンスには「OT」のプレフィックスが与えられ、ケースは18Kイエローゴールド、ピンクゴールド、ゴールドキャップが用いられた。