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OMEGA · SERIES

Speedmaster (Non-Moonwatch)

スピードマスター(Non-Moonwatch)

Mark Series から Super Racing まで——月以外の方向で進化を続けた、スピードマスターのもう一つの歴史

01 — 概要 / SUMMARY

1957年に発表された Speedmaster は、1965年の NASA 選定によって月面到達の象徴となった。だがオメガが手掛けた Speedmaster の系譜は、その一本道ではない。1969年の Mark II に始まる Mark シリーズ、世界初の自動巻きクロノメータークロノグラフとされる Speedmaster 125、1988年から2010年まで続いた 39mm Reduced、2013年に原点回帰した '57、レーシング志向の Racing、ヴィンテージスケールを纏う Chronoscope、そして 0/+2秒/日の精度に挑む Super Racing——Moonwatch を守りつつ、別軸で実験を重ねてきたシリーズである。

02 — STORY · 物語

Speedmaster (Non-Moonwatch)(スピードマスター(Non-Moonwatch))、これまでの軌跡

The story of this series
01

1969年、Mark II が開いた「もう一つの道」

1957年発表の Speedmaster は、本来サーキット用のクロノグラフとして設計された。1965年に NASA の認定試験を通過し、1969年7月、アポロ11号と共に月面へ到達したことで Speedmaster Professional は単なる時計を超えた象徴となる。

同じ1969年、オメガは Mark II Ref. 145.014 を発表した。手巻きキャリバー861を維持しながら、ケースは従来の非対称ラグから一新され、41.1mm のトノー形へと変わる。タキメータースケールはベゼルから外され、平らなミネラルクリスタルの下に置かれた。

02

自動巻きへの転換と Speedmaster 125

1971年、オメガは Mark III Ref. 176.002 を発表する。搭載されたキャリバー1040は Lemania 1340 をベースとする自動巻きクロノグラフで、Mark III は Speedmaster 初の自動巻きモデルとなった。

1973年、創業125周年を記念して Speedmaster 125 が登場する。搭載されたキャリバー1041は1040のクロノメーター認定版で、世界初の自動巻きクロノメータークロノグラフとされる。大ぶりのスチールケースを持つ記念モデルだった。同じ時期には音叉式キャリバーを搭載した Speedsonic も展開され、機械式と電子式の両面で実験が重ねられた。Mark シリーズはその後、Mark II の意匠に戻った Mark IV (1973)、Lemania 5100 ベースのキャリバー1045を積んだ Mark 4.5 (1974/75)、Mark V (1984) と続いていく。

03

Reduced — 量産化と「もう一回り小ぶりな Speedy」

1988年、オメガは 39mm の Speedmaster Reduced Ref. 3510.50 を発表する。ETA 2890-2 に Dubois-Dépraz 2020 クロノグラフモジュールを組み合わせたキャリバー1140を搭載し、Moonwatch より一回り小さく、自動巻きで日常使いに適したサイズだった。Reduced はキャリバー1141、1143、3220 と段階的に更新され、2010年まで生産が続いた。Moonwatch とほぼ同じ3-6-9配置を備えた 39mm の自動巻きクロノグラフは、シリーズの量産規模を大きく広げる役割を担った。

04

21世紀の再構築 — Broad Arrow から '57 へ

1997年、オメガは CK2915 を意識した Ref. 3594.50 を Missions のケースセットとともに発表する。2000年代には、幅広矢印針を名に冠した自動巻きの Broad Arrow(キャリバー3303、のちに Co-Axial 脱進機を備えた3313)も展開されたとされる。

2013年、オメガは Speedmaster '57 を発表する。CK2915 のストレートラグを継承した41.5mm の Co-Axial 自動巻きクロノグラフである。キャリバー9300を搭載し、3時位置に60分・12時間積算計を統合した2カウンターレイアウトを採る。2015年にはブロードアロー針の仕様が加わった。

2022年、'57 は新型キャリバー9906の採用により手巻きへ回帰し、ケース厚は16.17mm から12.99mm へと薄型化、直径も40.5mm へ改められた。Master Chronometer 認定を取得している。

05

Racing、Chronoscope、Super Racing — 三方向への展開

Speedmaster Racing は、レーシングスタイルのミニッツトラックを特徴とする自動巻き Co-Axial クロノグラフの系列である。

2021年、Speedmaster Chronoscope が登場する。43mm のケースに、タキメーター・テレメーター・パルソメーターの3スケールを「スネイル(蝸牛)」状に配したダイヤルが特徴で、1940年代のオメガのクロノグラフに着想を得たとされる。手巻きのキャリバー9908を搭載する。

2023年1月、Speedmaster Super Racing が発表される。搭載されたキャリバー9920は、Spirate System を初めて採用したムーブメントである。シリコンヒゲゼンマイに設けた仕組みで緩急を細かく追い込めるようにし、0/+2秒/日の精度で認定される。ケース径は44.25mm。

06

Dark Side of the Moon と X-33 — 素材と用途の拡張

2013年、Speedmaster Dark Side of the Moon が登場する。ケースをセラミックで仕上げたこのモデルは、Speedmaster に素材の実験を持ち込んだ例とされ、その後も文字盤色や仕上げの異なる派生が展開された。

宇宙の延長線にも独自の系譜がある。1998年に発表された Speedmaster Professional X-33 は、アナログとデジタルを併用表示する多機能クォーツのツールウォッチとされる。後継の Skywalker X-33 や X-33 Marstimer まで、Speedmaster のもう一つの極——機械式から離れた専門ツール——を担い続けている。

Moonwatch が変わらない姿で受け継がれる一方、Non-Moonwatch の Speedmaster は素材、ムーブメント技術、用途特化を反映する場であり続けてきた。一本の不変があるからこそ、もう一方では実験が許される——それが Speedmaster というブランドの構造である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Speedmaster Non-Moonwatch を貫く設計思想は、「変えてよいもの」と「変えてはならないもの」の明確な分離にある。Moonwatch は1969年以降、42mm の非対称ケース、手巻きキャリバー、3-6-9 配置の三カウンターレイアウトをほぼ凍結してきた。これに対し Non-Moonwatch は、Speedmaster というブランドが時代ごとの技術と意匠の実験を許す領域として機能してきた。

不変の要素は、わずか三点に絞られる——タキメータースケールを備えたベゼル、クロノグラフ機能、そして文字盤上の "Speedmaster" の刻字。1957年の CK2915 が確立した「ベゼル上のタキメーター」という発明は、Mark II のようにスケールを風防の下へ移した例を除けば、多くの Non-Moonwatch に継承されている。これがシリーズの最小公約数として機能する。

可変の要素はほぼすべてに及ぶ。ケース形状は Mark II のトノー、Mark III と Speedmaster 125 の大ぶりなケース、'57 のストレートラグ、X-33 の機能優先設計、Dark Side of the Moon のセラミックへと変奏されてきた。ムーブメントは手巻き、自動巻き、音叉、クォーツ、Spirate System を備えた Master Chronometer まで、機械式時計の全領域を横断する。

ダイヤルレイアウトは各モデルの性格を端的に語る。'57 系と Chronoscope は2カウンター(3時に積算計、9時にスモールセコンド)、Super Racing も2カウンター構成を採り、X-33 はアナログとデジタルを併用する。Moonwatch の伝統的な3-6-9配置は Reduced と初期 Broad Arrow に引き継がれたが、現代の主力ラインでは2カウンター構成が主流となった。これは99xx系ムーブメントの構造的特性に由来する設計上の帰結でもある。

針型は意匠言語の主要な分岐点である。Moonwatch のバトン型に対し、Broad Arrow と '57 はオリジナル CK2915 の幅広矢印型を継承する。2013年の初期 '57 はアルファ型、Chronoscope はリーフ型と、各ラインが固有のアイデンティティを針に託している。

同時代の競合と対比すると輪郭は鮮明になる。ロレックスの Daytona は2000年代以降、ケース寸法と意匠の振れ幅を絞り込むことでブランドの一貫性を保ってきた。Speedmaster Non-Moonwatch のアプローチは対照的で、月の時計という不変の核を保持することで、その他のラインに素材・サイズ・ムーブメント・用途を自由に振り分ける余地を確保している。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1971-1984
Cal. 1040 / 1045
Lemaniaベース、Speedmaster初の自動巻機。
1970年代
Cal. 1255
Speedsonicの音叉式クロノグラフ。
1988-2010
Cal. 1140 / 1141 / 1143 / 3220
ETA 2890/2892系ベース+DD 2020モジュール構成。
1998-現在
Cal. 1666 / 5619
X-33系多機能クォーツ、ミッションタイマー機能搭載。
2011-現在
Cal. 9300 / 9900 / 9906 / 9920
自社開発のコラムホイール式コーアクシャル、後継機でMETAS化。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1971-1984

Mark系で自動化

Mark III IV V
Cal.1040系投入、Speedmaster初の自動巻クロノ群。
1970年代

電子化の試み

Speedsonic
音叉式のSpeedsonicなど、電子式を試みた時期。
1988-2010

Reduced/Automatic

Reduced (Ref. 3510)
Cal.1140系、ETA+デュボワ・デプラ・モジュール、39mm小径化。
1998-現在

ミッションタイマー

X-33 Skywalker X-33
宇宙飛行士・パイロット向け多機能クォーツ、アナデジ統合表示。
2013-現在

自社製クロノ化

'57 Racing Super Racing
Cal.9300系を投入、後継9900/9906/9920でMETAS化。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

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