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OMEGA · SERIES

Seamaster PloProf

シーマスター プロプロフ

ヘリウムを締め出す一体成形ケースと、赤い押しボタンで施錠する回転ベゼル。飽和潜水の現場が生んだ異形のプロ用ダイバーズ。

01 — 概要 / SUMMARY

Seamaster PloProf(シーマスター プロプロフ)は、オメガが飽和潜水のプロのために開発したダイバーズウォッチの系譜である。1970年に Ref. 166.077「Seamaster 600」として発表された。ヘリウムを締め出す一体成形ケース、赤い押しボタンで解錠する施錠式ベゼル、左側に置いたリューズという異形の構成を持つ。フランスの潜水会社 COMEX の現場で試された実用機であり、姉妹機の Seamaster 1000 とともに当時のオメガの技術を映す。一度は生産を終えたが、2009年に1200m防水の現行 Ploprof 1200M として復活した。

02 — STORY · 物語

Seamaster PloProf(シーマスター プロプロフ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

深海に挑む — COMEX と飽和潜水の時代

1960年代後半、海洋開発は新しい段階に入った。北海をはじめとする海底油田の開発が進み、潜水士はより深く、より長く海中にとどまる必要に迫られた。鍵を握ったのが飽和潜水である。ヘリウムと酸素の混合ガスを呼吸し、加圧した居住区と海底を往復する技法だ。

この現場を主導したのがフランスの潜水会社 COMEX(Compagnie Maritime d'Expertises)である。極限環境で働く潜水士には、深部でも狂わず、視認性が高く、衝撃や圧力に耐える時計が要る。オメガはこの要請に応える専用機の開発に着手した。完成までには4年以上を要したと伝わる。

02

1971年、Ref. 166.077 が市場に出る

試作は1968年ごろに始まり、初期の個体には Cal. 1000 系が積まれた。オメガは「Seamaster 600」の発表を1970年としており、量産品の流通は1971年からとされる。量産機が積んだのは Cal. 1002、毎時28,800振動 (4Hz)、42時間動力の自動巻である。

特徴は一目で分かる。単一の鋼塊から削り出した一体成形ケース、左側面に置かれたねじ込み式リューズ、そして右側の赤い押しボタン。このボタンを押さない限りベゼルは回らない。ベゼルの誤作動を防ぐ施錠機構である。文字盤は太い剣型針と高コントラストの構成で、暗所での読み取りを最優先した。網目状の「シャーク」メッシュブレスも、この時計の記号となった。生産期間中に文字盤の印字は数度改められ、Mark 1 から Mark 3 へと推移したとされる。

03

姉妹機 Seamaster 1000「グラン」

PloProf の開発と並行して、オメガはもう一本の深海機を用意していた。1000m防水を称する Seamaster 1000、Ref. 166.093 である。後に「The Grand」と呼ばれるこの個体は、1972年に Cal. 1002 で少数が、1976年からは Cal. 1012 を積んで作られた。総生産は500本に満たないと伝わり、初期分の一部はモナコの海洋研究機関に納められたとされる。600 と 1000 は意匠を共有する兄弟であり、PloProf の物語は本来この二本で語られる。

04

ヘリウムを「逃がす」のではなく「入れない」

同時代、ロレックスやドゥクサは飽和潜水で時計内部に溜まるヘリウムをヘリウムエスケープバルブで逃がす道を選んだ。オメガの解は逆である。一体成形ケースの気密を極限まで高め、そもそもガスを入れないという思想を採った。この設計判断こそ PloProf を異形たらしめた核である。Seamaster 600 と 1000 は、いずれもヘリウム排出弁を持たない。原型機の生産は1970年代末に終わり、PloProf は一度歴史の表舞台を去った。

05

30年の沈黙と2009年の復活

PloProf が戻るのは2009年である。Seamaster Ploprof 1200M として、防水は1200mへ引き上げられた。心臓部はコーアクシャル脱進機を備える Cal. 8500、毎時25,200振動 (3.5Hz) の自動巻で、シースルーの裏蓋を得た。2015年からはチタン製ケースとセラミックベゼルをまとう世代へ移り、Cal. 8912 はマスター・クロノメーター規格に適合した。METAS の認定により、15,000ガウスの磁場下でも精度を保つ。原型機にはなかったヘリウム排出弁は、2009年の復活時から4時位置に備わっている。

06

原点へ — 2023年の O-MEGASTEEL

2023年、Seamaster 誕生75周年に合わせ、PloProf は再び姿を変えた。素材はチタンから O-MEGASTEEL へ。ラグからラグまでの縦寸法は48mmから45mmへ縮み、1970年代の原型に近い寸法へ戻った。ベゼルはサファイア製、裏蓋はシースルーをやめ、ポセイドンを刻んだ無垢の蓋に改められた。文字盤は「Summer Blue」、日付表示は持たない。防水1200mと施錠式ベゼル、左リューズという核を保ったまま、PloProf は半世紀を超えてなお同じ顔をしている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

PloProf の設計を貫くのは、機能が形を決めるという徹底した姿勢である。サブマリーナや Fifty Fathoms が抑制と均整で「ダイバーズの顔」を作ったのに対し、PloProf は実用上の要請をそのまま輪郭にした。結果として生まれたのが、左右非対称の無骨な塊である。

ケースは単一の鋼塊から削り出す一体成形を基本とした。裏蓋の合わせ目という弱点を持たず、気密で深部のガスを締め出す。整備は前面の風防側から行う。この発想は、ヘリウム排出弁で内圧を逃がす同時代の競合機と対照をなす。逃がすのではなく入れない。その判断がケース構造そのものを規定した。現行機が一度はシースルーの裏蓋を採りながら、2023年に無垢の蓋へ戻したのも、この出自への回帰と読める。

リューズを左側面に置いたのも機能ゆえである。手の甲側に来るリューズは着用時に肌へ当たりにくく、ねじ込み式のガードが衝撃と巻き込みから守る。右側の赤い押しボタンは、ベゼルの施錠を解く鍵だ。一般のダイバーズが逆回転防止ベゼルで安全を担保するのに対し、PloProf はベゼルを固定し、潜水士が意図して解錠する方式を採った。誤作動の余地を物理的に断つ思想である。

文字盤は視認性を最優先する。太い剣型針、色違いの大きな分針、高コントラストの指標。これらは暗い水中で残り時間を一瞬で読むための構成だ。網目状のメッシュブレスは厚いウェットスーツの上でも馴染む。色や装飾を足さず、読めること、壊れないこと、握れることだけを形にした。現行機が素材をチタンや O-MEGASTEEL へ替え、寸法を調整してもなお PloProf と分かるのは、この非対称の塊と赤いボタンという二つの記号が一度も動かされなかったからである。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1968-1970
Cal. 1000 / 1001 系
試作期の自動巻。COMEX 試験に投入。
1971-1979
Cal. 1002
量産自動巻、毎時28,800振動、瞬間日送り。
2009-2015
Cal. 8500
コーアクシャル、COSC、毎時25,200振動。
2015-現在
Cal. 8912
マスター・クロノメーター、無日付仕様。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1971-1979

初代 Seamaster 600

166.077
一体成形ケースに Cal. 1002。600m防水・左リューズの原型。
2009-2015

スチールで1200M復活

224.30.55.21.01.001
30年の沈黙を経て再始動。Cal. 8500、シースルー裏蓋を得る。
2015-2023

チタン+セラミック世代

227.90.55.21
グレード5チタンとセラミックベゼル。Cal. 8912 を搭載。
2023-現在

O-MEGASTEEL世代

227.32.55.21.03.001
縦45mmで原型寸法へ回帰。サファイアベゼルと無垢裏蓋。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 専門メディア Omega Seamaster Ploprof 1200M 専門メディア · La Cote des Montres · 2026.10.09 閲覧 La Cote des Montres · 2026.10.09
  2. 02 専門メディア Introducing the Omega Seamaster Ploprof 1200m now with Co-Axial Master Chronometer and in Titanium - live photos & price 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.10.09 閲覧 Monochrome Watches · 2026.10.09
  3. 03 専門メディア Omega Seamaster Ploprof 1200m Summer Blue 75th Anniversary | VIDEO 専門メディア · Time+Tide · 2026.10.09 閲覧 Time+Tide · 2026.10.09
  4. 04 専門メディア Seamaster Ploprof 1200M 専門メディア · WorldTempus · 2026.10.09 閲覧 WorldTempus · 2026.10.09
  5. 05 専門メディア Omega Seamaster Ploprof 1200M Co-Axial Master Chronometer Watch Hands-On 専門メディア · aBlogtoWatch · 2026.10.09 閲覧 aBlogtoWatch · 2026.10.09
  6. 06 オークション Lot 75 - Omega An historically important and very rare Omega Seamaster "1000" Prototype reference ST 166.093 in stainless steel - Exclusive Timepieces & Jewels オークション · Monaco Legend Auctions · 2026.10.09 閲覧 Monaco Legend Auctions · 2026.10.09
  7. 07 ブログ Omega - Seamaster Ploprof Ref. 166.0077 ブログ · Watch-Spare · 2026.10.09 閲覧 Watch-Spare · 2026.10.09
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

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