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OMEGA · SERIES

Seamaster Bullhead

シーマスター・ブルヘッド

竜頭とプッシャーを12時に配した異形のクロノ。1969年の短命作が、44年を経て復活した。

01 — 概要 / SUMMARY

オメガ・シーマスター・ブルヘッドは、1969年に登場したクロノグラフである。竜頭とプッシャーをケース上部の12時側へ集めた独特の構造から、雄牛の頭を意味する「ブルヘッド」の通称で呼ばれる。手巻Cal. 930を90度回転させて成立したこの異形は、ドライバーズウォッチとして売られたが、商業的には短命に終わった。約44年後の2013年、自動コーアクシャルCal. 3113を積んだ限定復刻で甦り、2016年のリオ五輪記念版まで展開された。少数生産ゆえに、現在は蒐集家の関心を集める一本である。

02 — STORY · 物語

Seamaster Bullhead(シーマスター・ブルヘッド)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1960年代末、オメガの実験期

1960年代後半のオメガは、意匠の実験を重ねていた。非対称ケースのフライトマスター、薄型のクロノストップ。スピードマスターが月へ向かう一方で、別の系統では大胆な造形が試みられていた。

この時期のオメガは、ルマニア由来のクロノグラフ機構を共有するSSIHグループに属していた。Cal. 861を基にした手巻クロノは、同社の各モデルへ広く供給されていた。そこへ日付機構を加えた派生が、Cal. 930である。

ブルヘッドは、ラリーやドライブの用途を想定したスポーツ・クロノとして構想された。クロノストップ系の実用志向の延長線上に置かれた一本であった。

02

1969年、Ref. 146.011の登場

1969年、Ref. 146.011が世に出た。手巻Cal. 930を反時計回りに90度回転させ、巻き上げ竜頭とプッシャーをケース上部へ集めた構造である。突き出した竜頭の形から、まもなく「ブルヘッド」の通称が定着した。

文字盤は12時に30分積算計、6時に小秒を備えた二つ目の構成である。3時に日付窓を開け、ケース内側には6時の竜頭で操作する回転ベゼルを収めた。ケースは上部が厚く、12時側が手首から高く立ち上がる断面を持つ。ハンドルを握る手で扱いやすいという理屈から、ドライバーズウォッチとして売られた。

しかし販売は振るわなかった。生産は短期間にとどまり、製造数は600本前後と伝わる。異形ゆえの個性が、当時の市場には早すぎたのかもしれない。

03

忘却と再発見

ブルヘッドは1970年代の早い段階で姿を消した。長らく、オメガの歴史のなかでも傍流の存在として扱われてきた。

風向きが変わったのは、ヴィンテージ市場が成熟してからである。フライトマスターと並び、1960年代末のオメガの造形的な冒険を示す一本として、蒐集家の関心が集まっていった。少数生産であったことが、その希少性をいっそう際立たせた。

なお、同種の機構はルマニアやティソなど、SSIHの同族ブランドの名でも世に出ていた。配置そのものは、オメガ一社の専有物ではなかった。

04

2013年、復刻という判断

2013年のバーゼルワールドで、オメガはブルヘッドを限定復刻した。愛好家からの長年の要望に応えた格好である。

復刻は3種の文字盤で展開された。24時間表示と昼夜表示を備えた白文字盤(Ref. 225.12.43.50.04.001)、クル・ド・パリ装飾を反転させた黒文字盤「スポーツシック」(Ref. 225.12.43.50.01.001)、60分計のベゼルを持つ銀文字盤「ラリー」(Ref. 225.12.43.50.02.001)。いずれも各669本の限定である。

中身は一新された。自動巻のコーアクシャルCal. 3113は、コラムホイール式のクロノグラフ機構を備え、クロノメーター規格に適合する。毎時28,800振動 (4Hz) を刻み、パワーリザーブは約52時間とされる。F. ピゲ系のこの機械が、手巻Cal. 930に代わって異形の構造を駆動した。

05

リオ2016と現在地

2015年、オメガはリオ五輪を記念する版を加えた(Ref. 522.12.43.50.04.001)。白文字盤に五輪の色を配した内ベゼルを合わせ、生産数は316本に絞られた。これがブルヘッドの系譜の、いまのところ最後の章である。

ブルヘッドは、潜水でも宇宙でも軍用でもない。実用上の必然から生まれた構造ではなく、配置そのものを目的とした設計である。商業的な成功からは遠かったが、その異形ゆえに記憶され、二度作られた。オメガの作品群のなかで、これは静かに固有の位置を占めている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

ブルヘッドの設計を貫くのは、ムーブメントを90度回転させるという一点の決断である。手巻Cal. 930を反時計回りに傾けて収めることで、巻き上げ竜頭とクロノグラフのプッシャーがケース上部、すなわち12時側へ集まった。雄牛の角のように突き出すこの配置が、通称の由来となった。

意匠は縦の対称軸で組み立てられている。12時に巻き上げ竜頭、その下に30分積算計、6時に小秒。文字盤の中心線を挟んで、上下が呼応する。回転ベゼルはケース内に収め、6時側の第二の竜頭で操作する。外周にベゼルを露出させるダイバーズウォッチとは異なり、計測環を内側へ隠す構成である。日付は3時に置かれた。

クッション型のケースは上部が厚く、12時側が手首から高く立ち上がる。竜頭を上に向けたとき、ハンドルを握る手の親指が届きやすいという理屈で、ドライバーズウォッチとして売られた。ただし、操作性が通常配置を上回るかどうかには議論がある。配置そのものを目的とした造形、と見るのが実情に近い。

同種の「ブルヘッド」配置は、1970年代初頭のティソ シデラルや、セイコー、シチズンの時計にも見られる。同じ構成のクロノグラフはブヘラーやルマニアの名でも作られたと伝わり、上部に竜頭を置く発想はオメガ固有のものではない。差異は、内側ベゼルと縦対称の二つ目という、シーマスター・ブルヘッド固有の構成にある。

2013年の復刻は、この設計言語を忠実に引き継いだ。縦対称の二つ目積算、内側ベゼル、3時の日付、裏蓋の海馬。変わったのは素材と機構である。サファイアクリスタル、両面無反射加工、そして回す向きを問わずロゴが正立する竜頭の固定機構。原型の異形を保ちながら、現代の精度を与えた。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1969-1970
Cal. 930
Cal. 861系の手巻クロノに日付を備える。
2013-2016
Cal. 3113
自動コーアクシャル。コラムホイール式でF. Piguet系。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1969-1970

初代ブルヘッドの誕生

146.011
手巻Cal. 930を90度回転。竜頭を12時に置いた初代。
2013-2014

現代の復刻、3種の文字盤

225.12.43.50系
自動コーアクシャルCal. 3113を搭載。各669本限定で復活。
2015-2016

リオ2016記念の最終版

522.12.43.50.04.001
五輪の色を配した白文字盤、316本限定。系譜の結び。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

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