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OMEGA · SERIES

Museum Collection

ミュージアムコレクション

博物館に眠る半世紀前の名品を、コーアクシャルなど最新の機械で甦らせた、オメガの限定復刻アーカイブ

01 — 概要 / SUMMARY

Museum Collectionは、2000年にオメガが始めた限定復刻のシリーズである。ビールのオメガ博物館に収蔵される過去の名品を素材に、原型の意匠を忠実に再現しつつ、コーアクシャルをはじめ現代の機械を搭載する。2000年から2012年にかけて発表された番号付きの「Collector's Series」全10作を核とし、パイロット1938、マリーン1932、MD's Watch 1938など、現行ラインにない珍種を貴金属と限定生産で甦らせた。番号付きの完結後も、シーマスター1948やCK 859、五輪記念の器としてその名は受け継がれている。

02 — STORY · 物語

Museum Collection(ミュージアムコレクション)、これまでの軌跡

The story of this series
01

美術館を持つブランド

ビールのオメガ本社には、単一ブランドに捧げられた企業博物館として最古級とされる「オメガ博物館」がある。この博物館には、19世紀末からの懐中時計や、潜水・航空・宇宙の各分野で使われた実機が並ぶ。Museum Collectionは、その収蔵庫を素材に据えた企画である。

着想の前提には、技術の節目があった。ジョージ・ダニエルズが考案したコーアクシャル脱進機を、オメガは1999年のDe Ville Co-Axial(Cal.2500)で量産化していた。古い意匠を忠実に再現しつつ、機械だけは最新世代に置き換える。その実験場として、アーカイブの名品は格好の題材だった。選定の基準は明快で、原則として発表から50年以上を経たモデルに限られた。

02

開幕作 — パイロット1938

2000年、最初の1本としてNo.1「Pilot's Watch 1938」(Ref. 5700.50.07)が発表された。原型は1938年のパイロットウォッチCK 2042とされる。40mmのステンレスケース、内回転ベゼル、夜光アラビア数字、そしてカテドラル針。現在のスポーツウォッチでは珍しい意匠を、自動巻クロノメーターと50m防水で現代に移した。

このとき限定本数は4,938本とされた。後に続く各作では、限定数が原型の年号を写すコード表現が定着していく。番号付きの「Collector's Series」は、ここから始まった。

03

角型とゴールドの実験

続く数作は、現行ラインにない意匠への寄り道だった。2002年のNo.2「Cosmic 1951」は、角型レッドゴールドにトリプルカレンダーとムーンフェイズを載せた。フレデリック・ピゲ製のCal.2601を採用したとされる複雑時計で、収集家の評価は静かなものに留まったと伝わる。

2003年のNo.3「Officer's Watch 1945」(Ref. 5702.50.02)は流れを変えた。手巻コーアクシャルのCal.3200は、コラムホイール式クロノグラフであり、テレメーター・タキメーター・脈拍計を文字盤に収めた。以後、最新のコーアクシャルを宿した器という性格が前面に出る。2004年のNo.4「Petrograd 1915」、2005年のNo.5「Centenary 1948」、2006年のNo.6「Tonneau Renversé 1952」と、貴金属のドレス系が続いた。Centenaryは、創業100周年を祝った1948年のOT 2500を再び現代に呼び戻している。No.7以降は参照番号の体系も516.53系へと移った。

04

最少135本のマリーン

2008年のNo.7「Marine 1932」(Ref. 516.53.32.20.02.002)は、シリーズの中でも特異な位置にある。原型のCK 679は、オメガが「世界初の市販ダイバーズウォッチ」と称する1932年のモデルである。コルクで封じた特許二重ケースを備え、レマン湖の73m試験を通過し、1937年には135m耐圧が実証されたと伝わる。

防水腕時計そのものはロレックスのオイスター(1926年)が先んじており、回転ベゼル式ダイバーズの元祖論争はサブマリーナとフィフティ ファゾムスの間で語られる。マリーンは、それらとは別系統の潜水具という位置づけになる。再来した1本は内外二層のスライドケースを赤金と白金で構成し、専用設計の手巻コーアクシャルCal.2007を収めたとされる。限定本数はわずか135本。耐圧135mに掛けた数である。

05

クロノグラフ3部作と完結

終盤は、手巻クロノグラフが軸になった。2009年のNo.8「Racend Timer 1949」(Ref. 516.53.39.50.02.001)は、1940年代の競技計時器を写したローズゴールドのクロノで、Cal.3201はフレデリック・ピゲのエボーシュを基盤とする。2010年のNo.9「Milestone 1941」(Ref. 516.53.38.50.01.001)は軍用オフィサーズ系の意匠をホワイトゴールドにまとめ、Cal.3203を積んだ。

No.10「MD's Watch 1938」(Ref. 516.53.39.50.09.001)が、番号付きシリーズの最後となった。発表年は2012年とする資料が多いが、WatchBaseは2010年と記録している。1938年頃の医師用クロノを範に、ブレゲ針とブレゲ数字、脈拍計を備える。同じCal.3203ながら、針や書体の選択でレーセンド・タイマーとは異なる表情を見せた。番号付きの企画は、ここで10作をもって幕を閉じた。

06

コレクションの行方

番号付きシリーズの終了後も、Museum Collectionの名は残った。2008年にはJFKが就任式で着けたとされるスリムラインOT3980の復刻(261本)が、2018年にはT.E.ロレンスに連なる1913年の初期クロノを復元した「Lawrence of Arabia」(18本)が登場した。

また、シーマスターの源流である1948年型は、2012年のロンドン五輪版を経て、2018年に70周年記念として2型が再生産された。2022年にはセクターダイヤルのCK 859が現代のマスター・クロノメーターで甦っている。近年は五輪や周年のための器として、Museum Collectionの名義が用いられることが多い。番号付きの10作で完結した後も、博物館を源泉とする企画は形を変えて続いている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Museum Collectionの設計思想は、二つの相反する要求を同居させる点にある。意匠は過去に忠実に、機械は現代の最新に。この原則が、シリーズ全体を貫いている。

意匠の側では、原型の輪郭をできる限り保つことが優先された。1938年のパイロットウォッチのカテドラル針、1945年のオフィサーズの脈拍計付き文字盤、1952年のトノー・ランヴェルセの湾曲した角型ケース。いずれも、現代のオメガが量産するスポーツラインには存在しない造形である。ケース径は装用性のために原型より拡大される場合もあるが、書体やインデックス、針の形状は原型の記録を写すことが基本とされた。マリーン1932では、原型23mm幅のケースを33mm幅へと拡大しつつ、内外二層のスライド構造という最大の特徴は残している。

機械の側では、コーアクシャル脱進機が軸になった。No.3以降のクロノグラフには、フレデリック・ピゲのエボーシュを基盤とするコーアクシャル・コラムホイールの専用キャリバー(Cal.3200 / 3201 / 3203)が用いられた。これらは現行カタログのスポーツモデルとは別系統であり、博物館の器のために仕立てられた機械という性格が強い。

意匠を統合する要素として、貴金属ケースと限定生産、そしてケースバックの刻印がある。多くの作で限定本数が原型の年号を写し、Officer'sは1,945本、Centenaryは1,948本、Tonneau Renverséは1,952本、MD's Watchは1,938本とされた。マリーンの135本は、耐圧135mに掛けた数である。本数そのものが原型への注釈となる仕掛けである。

シーマスターやスピードマスターが生産を続ける現役の系譜だとすれば、Museum Collectionは廃番となった珍種を選んで甦らせる企画だった。角型ダイバー、トノーのドレス、医師用クロノ。実用の現場から退いた意匠を、最新の機械で動かし直すこと。そこにこのシリーズ固有の輪郭がある。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2000-2002
自動巻クロノメーター / Cal.2601
汎用自動巻と調達複雑機構の時期。
2003
Cal.3200
コーアクシャル・コラムホイール・クロノを初投入。
2004-2006
Cal.2200 / 2202 系
自動巻のコーアクシャル移行期。
2008
Cal.2007
マリーン専用設計の手巻コーアクシャル。
2009-2012
Cal.3201 / 3203
F.ピゲ基盤の手巻コーアクシャル・クロノ。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2000

No.1 パイロット1938

5700.50.07
CK 2042を原型とするコレクション開幕作。
2002-2003

No.2-3 角型ドレス期

5701.80.03 5702.50.02
コスミックとオフィサーズ。複雑機構を導入。
2004-2006

No.4-6 ゴールド3作

5703.30.01 5704.60.02 5705.30.01
ペトログラード・センテナリー・トノーの貴金属期。
2008

No.7 マリーン1932

516.53.32.20.02.002
最少135本。潜水時計の原点を赤金で再現。
2009-2012

No.8-10 クロノ3作

516.53.38.50.01.001 ほか
レーセンド・マイルストーン・MDで完結。
2012-

オリンピックと遺産期

522.23.39.20.02.001 ほか
シーマスター1948やCK 859へDNAが継承。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 専門メディア Omega 511.12.38.20.02.001 : Seamaster 1948 Small Seconds 専門メディア · WatchBase · 2026.10.22 閲覧 WatchBase · 2026.10.22
  2. 02 専門メディア Omega 511.12.39.21.99.002 : Museum Collection CK 859 専門メディア · WatchBase · 2026.10.22 閲覧 WatchBase · 2026.10.22
  3. 03 専門メディア Omega 516.53.38.50.01.001 : Museum Collection N° 9 Milestone 1941 専門メディア · WatchBase · 2026.10.22 閲覧 WatchBase · 2026.10.22
  4. 04 専門メディア Omega 516.53.39.50.09.001 : Museum Collection N° 10 The MD's Watch 1938 専門メディア · WatchBase · 2026.10.22 閲覧 WatchBase · 2026.10.22
  5. 05 専門メディア Omega Museum Collection watches 専門メディア · WatchBase · 2026.10.22 閲覧 WatchBase · 2026.10.22
  6. 06 専門メディア Omega Seamaster 1948 Omega Co-Axial Master Chronometer Small Seconds 38 mm 専門メディア · Watchonista · 2026.10.22 閲覧 Watchonista · 2026.10.22
  7. 07 ブログ Omega Reissue Models: A Timeline of Retro Omega Watches ブログ · Luxury Bazaar · 2026.10.22 閲覧 Luxury Bazaar · 2026.10.22
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive