NOMOSが「速さ」を主題にした理由
NOMOSグラスヒュッテは、バウハウスの系譜を引く端正な三針時計で知られる。Tangente、Orion、Metro——いずれも平滑な文字盤と細い針による静的な構図を持つ。その一貫性は強みであると同時に、「どれも似て見える」という評にもつながっていた。
ブランドが求めたのは、自らの語彙を保ったまま性格を変える一本である。白羽の矢が立ったのは、ベルリンを拠点とするプロダクトデザイナー、ヴェルナー・アイスリンガーだった。家具やプロダクトで知られ、その椅子はニューヨーク近代美術館の収蔵品にもなっている。
アイスリンガーはパートナーのティナ・ブンヤプラシットと組み、「アーキタイプ(原型)を作る」ことを目標に掲げた。着想源は往年のスポーツカーであり、計器盤、速度計、そして「速さ」そのものだった。ドイツの高速道路アウトバーンの名は、その主題を一語で言い表していた。