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NOMOS GLASHüTTE · SERIES

Autobahn

アウトバーン

ドイツの高速道路に名を借り、速度計を文字盤に写し取ったNOMOSの異色作。自社製ネオマティック日付機を載せたデザインウォッチである。

01 — 概要 / SUMMARY

NOMOSグラスヒュッテが2018年に発表したAutobahnは、端正なバウハウス調を旨とする同社の中で異彩を放つデザインウォッチである。デザイナーのヴェルナー・アイスリンガーと組み、往年のスポーツカーの速度計を文字盤に翻訳した。直径41mmのケースに、自社製ネオマティック日付キャリバーDUW 6101を収める。標準のneomatik 41 date(Ref. 1301 / 1303)に加え、175周年を記念する限定「ディレクターズ・カット」も展開された。ドイツのものづくりを主題にした一群である。

02 — STORY · 物語

Autobahn(アウトバーン)、これまでの軌跡

The story of this series
01

NOMOSが「速さ」を主題にした理由

NOMOSグラスヒュッテは、バウハウスの系譜を引く端正な三針時計で知られる。Tangente、Orion、Metro——いずれも平滑な文字盤と細い針による静的な構図を持つ。その一貫性は強みであると同時に、「どれも似て見える」という評にもつながっていた。

ブランドが求めたのは、自らの語彙を保ったまま性格を変える一本である。白羽の矢が立ったのは、ベルリンを拠点とするプロダクトデザイナー、ヴェルナー・アイスリンガーだった。家具やプロダクトで知られ、その椅子はニューヨーク近代美術館の収蔵品にもなっている。

アイスリンガーはパートナーのティナ・ブンヤプラシットと組み、「アーキタイプ(原型)を作る」ことを目標に掲げた。着想源は往年のスポーツカーであり、計器盤、速度計、そして「速さ」そのものだった。ドイツの高速道路アウトバーンの名は、その主題を一語で言い表していた。

02

2018年、速度計を文字盤に

Autobahnが公の場に現れたのは、2018年のバーゼルワールドである。登場したのは3色——白(Ref. 1301)、ミッドナイトブルー(Ref. 1302)、スポーツグレー(Ref. 1303)。いずれも直径41mm、ステンレスケース、100m防水であった。

最も目を引くのは文字盤だった。縁が深く湾曲し、8時から4時へと弧を描く。アイスリンガーはこれを「レーストラックの外周レーン、あるいは往年のレースカーのフェンダー」と語っている。その弧には大型のスーパールミノバが並び、夜間の視認性を担う。

6時位置の日付表示も独特である。昨日・今日・明日の3日分を横に並べた「3レーン」窓は、自動車のオドメーター(走行距離計)を思わせる。NOMOSの端正な文字盤を崩さずに大きな日付を成立させたのは、後述する新型キャリバーの構造ゆえだった。

スポーツグレーは、青みのある灰色地にネオンオレンジの針を合わせ、シリーズ中で最も鮮烈な配色を持つ。対して白とミッドナイトブルーは、NOMOSらしい落ち着きを保っていた。

03

ディレクターズ・カット ── アウトバーンに名を借りて

グラスヒュッテの時計づくり175周年(2020年)を記念し、2021年、NOMOSはAutobahnに3つの限定モデルを加えた。「ディレクターズ・カット」と名づけられたA3・A7・A9である。各175本という数字は、その周年に由来する。

A3は白地にオレンジ、A7は青地に黄、A9は黒地に灰。いずれも往年の自動車、その計器盤の色彩に着想を得たという。3つの名はドイツの主要な高速道路に由来し、アイスリンガー自身が好んで走った路線でもあった。

限定モデルには、それまでのストラップに代わってスチールブレスレットが初めて与えられた。4つの円形の抜き穴を持つ細身のブレスは、往年のレザーストラップを想起させる意匠である。映画の「ディレクターズ・カット」になぞらえ、デザイナーが本来描きたかった色彩を加えた一群、という位置づけだった。

04

現在地 ── 2モデルに集約された現行ライン

発表から7年を経て、Autobahnの標準ラインは2モデルに集約された。白(Ref. 1301)とスポーツグレー(Ref. 1303)である。当初の3色にあったミッドナイトブルー(Ref. 1302)は、現在の公式カタログには見当たらない。

ケース径41mm、自社製キャリバーDUW 6101という基本構成は、登場時から変わっていない。世代交代を重ねて姿を変えてきた他社のスポーツウォッチとは異なり、Autobahnは初代の設計言語をほぼそのまま保っている。

NOMOSの中でAutobahnは、最もミニマリズムから遠い一本でありながら、最も「NOMOSらしさ」を試した一本でもある。静的なバウハウスの語彙に、速さという動的な主題をどう接続するか——その問いへの一つの答えが、この湾曲した文字盤に刻まれている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Autobahnの設計を貫く主題は、「静的なNOMOSの語彙で、動きをどう表現するか」である。

NOMOSの定番——Tangenteに代表される——は、平滑な文字盤と直線的な針による静止した構図を持つ。Autobahnはこの前提を意図的に崩す。文字盤の縁を深く湾曲させ、ボウル状の立体に仕立てた。光は曲面を滑り、見る角度で表情を変える。平面だったNOMOSの文字盤が、ここで初めて深さを得た。薄いベゼルと緩やかなラグは、その曲面を素直に受け止める輪郭になっている。

視覚の中心は、8時から4時へ弧を描くスーパールミノバの帯である。速度計の目盛り、あるいは回転計の弧を抽象化した意匠であり、シリーズの識別子として働く。夜間にはこの弧が発光し、機能(視認性)と意匠(自動車の記憶)が一致する。

6時の日付表示も設計思想を体現している。3日分を横に並べる「3レーン」窓は、オドメーターの連想を呼ぶ。これが成立するのは、キャリバーDUW 6101が日付リングをムーブメント外周に配したためである。機構の選択が、文字盤の自由を生んだ。機能が形を決めるという順序は、ドイツのものづくりの作法に通じる。

一方で、Autobahnは「派手にしない」判断も保っている。文字は明瞭で、装飾は最小限。凹んだスモールセコンドは文字盤の曲線に呼応し、余計な要素を加えない。色数を抑え、ロゴの位置も動かさない。NOMOSの定番が持つ自制は、奔放に見えるこの一本の底にも生きている。

同じNOMOSのスポーツ系であるClub Sportが回転ベゼルと実用ツールの方向を採るのに対し、Autobahnはあくまでデザインウォッチの文脈にある。速さを、計測の道具ではなく視覚の主題として扱う——そこにこのシリーズの輪郭がある。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2018-現在
DUW 6101
自社初の日付つきネオマティック。厚さ3.6mmの自動巻。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2018

初代アウトバーン、3色で登場

1301 1302 1303
バーゼル2018で発表。白・夜青・灰の3色、41mm・100m防水。
2021

ディレクターズ・カット

1301.S1–S3
A3/A7/A9を各175本。鮮烈な配色と初のスチールブレスを採用。
現在

現行ラインの2モデル体制

1301 1303
標準は白とスポーツグレーの2本に集約。夜青は標準外へ。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 DUW 6101 - NOMOS Glashütte 公式 · NOMOS Glashütte · 2026.08.15 閲覧 NOMOS Glashütte · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Nomos DUW 6101 Calibre 専門メディア · WatchTime India · 2026.08.15 閲覧 WatchTime India · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive