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JAEGER-LECOULTRE · SERIES

Geophysic

ジオフィジック

国際地球観測年に生まれ、磁気・衝撃・水に抗した実用クロノメーター。控えめさを貫いた科学者の時計

01 — 概要 / SUMMARY

Geophysic(ジオフィジック)は、1958年にジャガー・ルクルトが発表したクロノメーターの系譜である。同年の国際地球観測年と創業125周年に合わせ、磁気・衝撃・水に抗する実用機として生まれた。初代Ref. E168は約1年で姿を消したが、半世紀を経て復活する。2014年の復刻Geophysic 1958、2015年にはデッドビート秒とジャイロラボ機構を備えるTrue Second、極地視点の世界地図を文字盤に置いたUniversal Timeへと展開した。派手さを退け、精度と信頼性に徹した観測器の思想を一貫させたシリーズである。

02 — STORY · 物語

Geophysic(ジオフィジック)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1958年、地球を観測する年に

1957年7月から1958年末まで、67か国が参加する国際地球観測年(IGY)が実施された。冷戦下にありながら東西の科学者が協力し、極地・海底・大気の観測が進められた時代である。プレートテクトニクスの検証や、人工衛星の打ち上げもこの期間に始まった。ジャガー・ルクルトはこの科学的事業に呼応し、創業125周年にあたる1958年、観測と探検の現場で使える精密機械を世に出した。それがGeophysicである。読みやすさ、精度、信頼性。この3点が設計の核に据えられた。

02

磁気を退ける実用機 — Ref. E168

初代のRef. E168は、直径35mmのスティールケースに手巻きのCal. 478BWSbrを収めていた。このキャリバーは、ジャガー・ルクルトが英国空軍のパイロットウォッチに用いた機械の流れを汲む。ハッキング(停止)秒や白鳥首微調整機構を備えるとされ、さらに軟鉄製のインナーケースが機械を磁界から守った。耐磁性は600ガウスまでとされる。文字盤からは余計な要素が削ぎ落とされ、計器としての実用に徹していた。

ジャガー・ルクルトは、北極の強い磁界下でも狂わない時計としてこの個体を位置づけ、原子力潜水艦USSノーチラス号やUSSスケート号の北極点潜航に携行されたと紹介している。ただし生産は約1年と短く、自動巻きの後継機に道を譲ったと伝わる。製造数は約1,000本にとどまるとされ、20世紀のクロノメーターのなかでも希少な存在となった。

03

半世紀を経た復刻 — Geophysic 1958

初代から半世紀以上を経た2014年、ジャガー・ルクルトはGeophysic 1958として名を復活させた。ケース径は38.5mmへと拡大し、100m防水を備え、内部には自動巻きのCal. 898/1(約43時間)を搭載する。初代の美観を忠実に写しつつ、機械は定番のマスター系と共通の量産機を用いた現代版だった。軟鉄インナーケースによる耐磁構造は初代から引き継がれ、初代が風防の裏に夜光点を描いていたのに対し、復刻ではチャプターリングにスーパールミノヴァの点を置いた。スティール800本、ピンクゴールド300本、ブティック限定のプラチナ58本の限定で、いずれも早々に完売したと伝えられる。

04

ジャイロラボという回答 — True SecondとUniversal Time

復刻の翌2015年、シリーズは技術的な核を得る。Geophysic True SecondとUniversal Timeである。両機は新設計の自動巻きCal. 770/772を共有し、テンプには「ジャイロラボ」と名付けられた非円形のテンプ輪を採用した。非円形のテンプは2007年のマスター・コンプレッサー・エクストリームLAB 1と2010年のLAB 2で示されたもので、それを量産機へ落とし込んだ形である。空気抵抗を抑えて、エネルギーと摩耗を減らす狙いがあった。

径39.6mm、厚さ11.7mmのTrue Secondは、秒針が1秒ごとに停止して進むデッドビート秒(トゥルー・セコンド)を備える。これは機械そのものを正確にするのではなく、時刻を正確に読み取り、他の計時器と合わせやすくするための機構である。Cal. 770は時針だけを1時間刻みで動かす機能も持ち、分と秒を保ったまま時差を合わせられる。Universal Timeは極地から見た世界地図と24時間表示を組み合わせたワールドタイム機で、Cal. 772はTrue Secondの機構にワールドタイムモジュールを重ねた構成だった。デッドビート秒自体は古典的な複雑機構であり、ジャガー・ルクルトがそれを現代的に再解釈した点に意味があった。

05

二度目の幕引きと、受け継がれた技術

評価は高かったものの、Geophysicコレクションは2019年前後にカタログから姿を消したとされる。初代が約1年で終わったのと同じく、現代版もまた短命に終わった系譜である。ただし技術は途絶えていない。ジャイロラボのテンプは、複雑機構を備えるレベルソ・イブリス・アルティスティカ・キャリバー179などにも用いられたとされる。名としては現行ラインから退いたが、その思想と技術は別のかたちで生き続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Geophysicの設計を貫くのは、計器としての純度である。読みやすさ、精度、信頼性という初代の優先順位は、装飾よりも機能を上に置く姿勢として一貫している。

最も象徴的なのは耐磁構造の扱いだ。軟鉄製のインナーケースで機械を磁界から守るという選択は、裏蓋を透明にして機械を見せる楽しみを手放すことを意味した。初代Ref. E168も2014年の復刻も、ソリッドな裏蓋を採用している。見せることより守ることを優先する。この割り切りがGeophysicをGeophysicたらしめている。

文字盤の構成も同じ思想に立つ。回転ベゼルも、過剰なインデックスもない。基点を明快に示す指標と、視認性を確保した針。同時代のダイバーズウォッチ——オメガ シーマスターやブランパン フィフティ ファゾムス——が頑丈な工具としての見た目をまとったのに対し、Geophysicは実験室の計器に近い静けさを選んだ。耐磁という機能ではロレックス ミルガウスやIWC インヂュニアが同時代の隣人だが、Geophysicはそれらよりさらに装飾を抑えている。針は太く夜光を備え、読み取りの速さを最優先する。回転ベゼルを持たず、当初は日付すら備えない。時刻を正確に示すことだけに集中した造形である。

2015年のTrue SecondとUniversal Timeは、この思想を別の角度から表現した。1秒ごとに停止するデッドビート秒は、精度を視覚化する仕掛けであり、計器という出自と響き合う。Universal Timeが文字盤に置いた極地視点の世界地図は、観測と探検という生い立ちを意匠へ翻訳したものといえる。派手にしないという抑制を保ちながら、シリーズは精度を主題として描き続けた。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1958
Cal. 478BWSbr
手巻。英空軍のパイロットウォッチ用機械の流れを汲む。
2014
Cal. 898/1
量産の自動巻、約43時間。軟鉄の内ケースで耐磁。
2015-2019頃
Cal. 770 / 772
ジャイロラボとデッドビート秒を搭載。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1958

初代Geophysic

E168
35mm・手巻、軍用機由来の耐磁クロノメーター。約1年で終了。
2014

Geophysic 1958

Q8008520 ほか
38.5mmに拡大した復刻。自動巻Cal.898/1を搭載。
2015-2019頃

True Second

Q8012520 (True Second)
ジャイロラボとデッドビート秒を備えた39.6mmの三針機。
2015-2019頃

Universal Time

Q8108420 (Universal Time)
極地視点の世界地図を持つ41.6mmのワールドタイム。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

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